バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
2003年、フランスに単身で渡り、 現在はパリを拠点にヘアメイク&フォトエッセイストとして 活躍しているとのまりこさんが、 愛犬のバブーくん(アイルランド出身)を相棒に、 パリ暮らしのちょっとびっくりな出来事や、 へぇ〜っと感心する習慣などなど(*)をお届けします。 *もちろんすべてのフランス人やフランス全土に共通しないこともあります。 週に1回、でも気まぐれにもっと更新するかも? すてきな写真とともに、おたのしみください。 Amusez-vous bien!

 
とのまりこさんと バブーくんのプロフィール
 


   

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フランスの薬局では、
薬が滑り落ちてくる?!

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フランスの薬局では、
薬が滑り落ちてくる?!

バブー

みなさん、ボンジュ~ル。
先週は、フランスの薬局の奥にある
秘密の小部屋での遠隔診療について
だったけれど
(おかげさまでプチモンスターの
巨大な口内炎はこの小部屋のおかげで
みるみる回復して良くなったよ!)
今日も続きの薬局のお話。

今日は薬局の奥の小部屋ではなくて、
頭上の秘密のチューブについてだよ

 

先週に引き続きフランスの薬局
「ファーマシー」のお話。
緑の十字マークがフランスの薬局の目印です。

 

とのまりこ
フランスの薬局、
気をつけて見ていると、カウンターの脇や
頭上に透明なアクリルのチューブや
小さな滑り台のようなものが
ついていることがあるんです。

医者からもらった処方箋を渡し、
薬剤師さんがキーボードを
カチカチと叩く音がしたと思ったら…
上のほうから
「シューッ、コロン!」
という音とともに
薬の箱が滑り落ちてきて
トレイにストンと着地する。
こんな不思議な風景があるあるです。

 

こちら我が家から1番近くの、パリの小さな小さな薬局。
お姉さんが眺めている天井の透明チューブを通って、
薬が落ちてきます。

 

バブー
そう!上の階や奥の保管庫から
薬が自動で滑り落ちてくるんだよ!
これ、「Robot de pharmacie」
(ロボッ・ドゥ・ファーマシー)、
または「Automate de pharmacie」
(オートマットゥ・ドゥ・ファーマシー)
と呼ばれる薬局用の自動調剤ロボットなんだ。

 

とのまりこ
薬剤師さんが処方箋を入力すると、
上の階や奥の保管庫にある
自動ロボットにデータが飛びます。
そしてロボットのアームが
該当する薬の箱をピックアップして、
専用の「トボガン」=「滑り台」から
透明なパイプに投入。
重力と空気圧を使ってわずか数秒で
カウンターまで届く、
という仕組みなのです。

 

こちらは螺旋(らせん)滑り台で落ちて来るタイプ。
滑り台の下に電話の子機などと一緒に、
雑多に溜まっている薬たち(汗)。

 

バブー
フランス語で「Toboggan(トボガン)」とは
子どもたち大好きな「滑り台」のこと!
まさにその名の通り、薬の滑り台だね。
古めかしい薬局の中にある
ちょっと古びたチューブや滑り台を、
すごい勢いで降りてくる薬たち。
なんだか近未来的なシチュエーションなのに、
(薬局の)舞台自体は古めかしいから
そのミスマッチな感じが
実際見るととっても不思議なんだよ。

 

とのまりこ
だから私はいつまでたっても、
機械じゃなくて、実はチューブの向こうに
人がいるんじゃないかとしか思えなくて。
私はこのチューブや滑り台を見るたびに
「千と千尋の神隠し」のカマ爺を思い出し、
このチューブの向こうに
カマ爺がいるんじゃないかと妄想しています(笑)。

この自動薬送りチューブ、
パリなどの都市部の薬局ではよく見かけるのに、
フランスの地方の小さな村に行くと
あまり見かけないのです。
「地方のほうが広いのだから、
ロボットスペースもあるんじゃない?」
と思いますが、実はこれ逆。

 

バブー
このロボットが一番必要で、
一番普及しているのが
「スペースがない」
パリなどの都市部の薬局なんだよ!

フランスの都市部にある
古い建物って、1階の間口は狭くて
天井だけが高いという造りが多い。
薬局の店舗スペースがとにかく狭い。
商う薬の種類は数千種類にもなる。
「1階には全部置けない!
じゃあ2階や地下に在庫を置いて、
ロボットで滑らせて降ろそう」
というのが、
都市部でこのシステムが発達した理由なんだよ。

つまりこのロボット、
「スペースがなさすぎるから必要」
という発明なんだよね。

 

とのまりこ
パリに限らず、モンペリエやリヨンみたいな
都市部の薬局でも見かけることがあるよ。
一方で、地方の小さな町や村の薬局は
敷地が広くて平屋の造りが多いから、
奥の棚に歩いて取りに行けばいい。
だからわざわざロボットを導入しなくても
なんとかなっちゃうんだ。
今回滞在している地方の街の薬局
4軒回ってみたけれど、パリでよく見る
「薬滑り台」はありませんでした。

 

敷地的な心配のない薬局では、2階から落ちて来る
チューブシステムではなく、カウンターの裏の
薬保管部屋から持ってこられるところがほとんど。

 

バブー
しかもこのロボット、お値段も
7万ユーロ~12万ユーロ(!)
(日本円にすると1300万から2300万円)
という大きな投資。

薬局がローンを組んで7年で返済
というような形が一般的なのだそう。
お客さんが多くて
回転率の高い都市部の薬局だからこそ、
元が取れる計算になるんだね。

そしてもうひとつ、
この「薬滑り台・チューブ」が生んだ
嬉しい変化もあるんだって。
昔は処方箋を受け取ると、
薬剤師さんが奥の棚や2階へ
わざわざ薬を取りに走っていたけれど、
滑り台やチューブが運ぶようになって、
薬剤師さんはカウンターから一歩も動かずに
ずっと患者さんと向き合えるように。

見た目は昔ながらのレトロなたたずまいの
フランスの薬局だけど、
一歩中に入ると、頭上から薬がシューッと
滑り落ちてきたり、
先週のように遠隔診療システムがあったり、
「伝統とハイテクのギャップ」が
あって面白いよね!

フランスの薬局に行く機会があったら
ぜひ頭上に注目してみてね。
それでは今週もよい1週間を!

 

フランスの薬局のチューブシステム。
とっても面白いから薬局に行く機会があったら、
ぜひ探してみてね!
夏休み真っ最中のフランス。ボクは南仏の海辺を満喫中。

 

 

*とのまりこさんの本*


「シンプルシックで心地よい暮らし
パリの小さなアパルトマンで楽しむおうち時間」
出版社 : 世界文化社
発売日 : 2021/5/29

 

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)

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