バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
2003年、フランスに単身で渡り、 現在はパリを拠点にヘアメイク&フォトエッセイストとして 活躍しているとのまりこさんが、 愛犬のバブーくん(アイルランド出身)を相棒に、 パリ暮らしのちょっとびっくりな出来事や、 へぇ〜っと感心する習慣などなど(*)をお届けします。 *もちろんすべてのフランス人やフランス全土に共通しないこともあります。 週に1回、でも気まぐれにもっと更新するかも? すてきな写真とともに、おたのしみください。 Amusez-vous bien!

 
とのまりこさんと バブーくんのプロフィール
 




7 2 9

夏のパリの家は
「石のサウナ」?!

7 2 9

夏のパリの家は
「石のサウナ」?!

バブー

みなさん、ボンジュ~ル。
このコラムを書いている6月下旬の今、
パリは、いやフランスは、
いや、ヨーロッパ全土が
とんでもないことになっているよ。

きっと日本でもこのニュースを見た方が
いっぱいいると思うのだけど、
6月21日(日曜日)の正午を境に、
イル=ド=フランス(パリ周辺)の全8県に
「カニキュル(Canicule)」
=「猛烈な熱波」の最高レベル
「赤色警報(Vigilance rouge)」が
発令されたんだ。

パリだけではなく、
フランス全土でも30以上の県が
同時に赤色警報になるという
「2003年の大惨事以来、最も深刻」と
言われる事態になっているよ。
(まりこちゃんが渡仏した年2003年は、
なんとフランス全土で15000人以上の方が
熱波で亡くなっているんだよ!)

 

アイス屋さんを見つけたら
買わずにはいられない酷暑のパリ。
ただあまりの酷暑でお店側もつらく、
臨時休業にしたり開店時間を変えるお店もちらほら。

 

とのまりこ
日本の暑くてジメジメした夏を知っているので、
「日本に比べたら‥‥日本に比べたら‥‥」
なんて言い聞かせながら過ごしていますが、
今回のはちょっとそれを超えるすごさ。
「体に危険を感じる暑さ」でした。

窓を開けても、扇風機を回しても、
家の中を回るのは熱風だけ。
「(扇風機ではなく)
室外機の風が当たる部屋にあえている」
という例えや、
「間違ってオーブンの中に入り込んでしまった」
そんな表現がピッタリな感じです。

夜になっても、全然気温が下がらない。
寝れない夜が続きました。
これにはパリならではの理由があるんです。

 

これは我が家から見える建物のひとつ。
朝からほとんどの家が雨戸を閉め切って、
とにかく太陽を遮断しようとしています。

 

バブー
パリの古いアパルトマン
(オスマン様式の石造りの素敵な建物だよ)は、
もともと「冬の寒さに耐える」ために
分厚い石の壁で作られているんだ。

だからね、夏の強烈な太陽が、
その石の壁を一日中じりじりと温め続けて、
夜になると今度は
その壁が蓄えた熱を部屋の中に
じわじわ放出し始めるんだ。

しかも夏のパリは、夜の10時を過ぎても
まだ空が明るいくらい、日が長い。

つまり、太陽が長時間石を温め続け、
夜は石がその熱を部屋に返してくる
——『24時間ナチュラルサウナ』の完成!
というわけなんだよ‥‥。

 

パリはこういう屋根裏部屋のアパートが
とにかく普段からいちばん暑いと言われていますが、
夜中までオーブンの中のようになってしまうので、
各区では夜間も公園を開放して
外で夜中すごせるようになど、
それぞれ工夫して市民にお知らせがきています。

 

とのまりこ
「じゃあエアコンをつければいい」
と思いますよね?
実は、パリの古いアパルトマンに
エアコンをつけるのは、
かなりむずかしいんです。

パリには景観を守るための法律があって、
建物の外壁に室外機を設置することが
原則禁止されています。
石造りの美しい街並みを守るために。

組織パリ市内の家庭のエアコン普及率は、
わずか数パーセントと言われています。
フランス全体では24%程度の普及率で
「エアコンがある家が増えた」
というニュースも出ていますが、
それは南仏や新しい建物を含めた話。
パリの一般家庭の普及率だけを見たら、
ある家は珍しい、
わずかな数というわけなのです。

最上階、日を遮るものがなく、
日没の最後の最後まで日が当たり続ける
我が家も、もちろんクーラーはありません!

バブー
あまりの酷暑で、全国の多くの学校で
休校もしくは
「できるだけ家で見られる方はお家で。
登校しないでください。欠席扱いにはしません」
という措置が取られているよ。
ボクの兄弟プチモンスターの小学校では、
まるまる1週間
「来なくていいよ。むしろ来ないで」対応。
中学校は1週間前倒しで夏休みに突入したよ。

スポーツ関係のイベントや習い事、
学校の年末行事なども次々と中止に。

そして命に関わる危険を感じて、
人々が扇風機やクーラーに殺到していて、
街の電器屋さん(FnacやDartyなど)では
売り切れ続出、入荷すれば人が押し寄せる
というニュースばかりだよ。

とのまりこ
そんな中、とにかく少しでも暑さを凌ごうと、
パリのサンマルタン運河では
若者たちが飛び込んで泳ぎ、ビーチ状態に。

もともとはもちろん「遊泳禁止」。
ただ、あまりの暑さに若者たちが次々と
ゲリラ的に飛び込んでは泳ぎ、
警察が出動しても抑えられない事態に。

そしてパリ市が出した答えは、
「禁止するのは不可能だから、
だったら許可しちゃってできるだけ安全に」。
一部のエリアを
「公式の監視付き無料遊泳ゾーン」に指定して、
フランスらしい
「諦めと柔軟性の合わせ技」な対策が
とられています。

 

遊泳禁止(というかそもそも泳ぐキレイさも皆無!)の
サンマルタン運河も、幾度の警察介入も止められぬ
ビーチ状態でパリ市はお手上げ。
一部の場所は逆に許可されることに。

毎日水質検査もされているということですが、
いやいや、絶対に1mmも綺麗とは思えない川。
(だって普段から若者たちがピクニックしたり
飲んで騒いだりするエリア。
ゴミも放尿もやりたい放題の場所だから
想像すらしたくない水質‥‥)
だけど暑さを凌げるのは「水」だけだと、
 毎日若者たちで賑わっていました。

 

普段からお天気になると、岸沿いに若者中心に
ギッシリ賑わうサンマルタン運河沿い。
酷暑期間中は、ほぼ全員水着のビーチ状態に。

 

バブー
日本の夏も暑くて湿度も高くて大変だけど、
どこに行っても冷房が効いていて、
コンビニも駅もデパートも駅ビルも
カフェもレストランも電車も図書館も、
「涼める場所」だらけでしょ?
本当に苦しい暑さの中でも、
どこかに逃げ込みさえすれば、
す~っと体から暑さが消えていく
気持ち良い体験ができるよね。

でもパリは、地下鉄もバスも、
クーラーが搭載されているのはまだまだ一部。
クーラーつきが来るか来ないか
ロシアンルーレット状態‥‥。
クーラーがなければ、地上よりも暑い
灼熱のサウナに変身で、
今日はバスの運転手さんが車内の暑さで
体調を崩し激突して大事故を起こしていたよ‥‥。
「石の街の夏」は、
美しい石造りの建物の代償として、
毎年こんなにも過酷なんだ。

 

クーラーなしで熱がこもって
オーブン状態の家の中よりはまだましと、
大人たちは「涼」を求めて日陰で過ごす人も多数。

 

パリ市が根負けして許可を出したエリア以外も
そんなことはお構いなしに若者だらけ。
橋から飛び降りるのが若者たちの遊びになってます。
ちなみに川はとてもとても汚いです‥‥涙。

かつてはクーラーがなくても過ごせていた
パリは年々変わりつつあり、
クーラーが当たり前の世界になるかもね。
パリの街並みの外観を損ねるのが問題なら、
景観を損ねないような石造りの家と
同化する統一されたデザインの室外機が
提案されないとだよね。

圧倒的な存在感と性能を持つ
日本のブランドのクーラー。
今後ヨーロッパでの導入が増え続けるであろう今
超ビックチャンスが訪れているような気がするよ。
パリの美しい景観にも受け入れられる
室外機の提案と一緒にぜひ!

 

以前このコラムでも書いたパリのクーラー問題。
近年増え続ける暑さに根負けして
クーラー導入する商店なども増えてますが、
室外機設置できないので、
このゾウの鼻のようなホースで暑い空気を外に。
隙間が空いたままなので効果も薄め。
2枚目のお店にいたっては、扉もない開け放しの
店内につけていて、意味はあるのかしら状態。

このコラムが更新される今週は
だいぶ気温は落ち着いているはずだけど、
再び7月上旬から熱波がやってくると
予報されているみたいで、
今年のヨーロッパの夏はどうなるのか?!
それでは今週もよい1週間を。

 

夜10時まで太陽が温め続けるクーラーなしの
パリのアパートは夜中もサウナ状態。
扇風機を回しても熱風がまわるだけなので、
外の方がまだましとベランダにマットを敷いて
耐えることに(部屋の中より何倍もマシでした!)。

 

ボクも家の中のできる限り冷たい場所を求めて。
トイレのタイルの上とかに避難して「涼」を求めてるよ。

 

*とのまりこさんの本*


「シンプルシックで心地よい暮らし
パリの小さなアパルトマンで楽しむおうち時間」
出版社 : 世界文化社
発売日 : 2021/5/29

 

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)

フランス雑貨のお店オープンしました。
バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

「Boîte」(ぼわっと)
東京都杉並区西荻北4丁目5−24
【地図】 【駅からの道順はこちら】

2026-06-30-TUE

まえへ
トップへ
illustration:Jérôme Cointre