バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。


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「パリはいま、
 『いつも通りに生活することが
  テロに負けないこと』。」

 
     

バブー

パリで同時多発テロ事件が起きてから
1週間ちょっと。
この「パリこれ!」読者の方々の中にも
パリにいるボクたちのことを心配して
お便りやツイッターで
メッセージを送ってくれた人がたくさんいたよ。

先週の記事の冒頭に、幸いにもボクたちや
このコラムに登場する友人家族たちが
みな無事だったお知らせはしたけれど、
みなさん本当にありがとうございました。


▲事件を受けて閉鎖されていたエッフェル塔は、営業再開後トリコロールに点灯された


▲襲撃を受けたカンボジアレストランの前で

とのまりこ

毎週、原稿を書きあげるのがギリギリで、
実は先週火曜日の更新分も
テロが起こった後の週末に書いていた私。

きっと、このコラムを
読んでくださっている方も
気になっているかなあ、
テロに関することを
書いた方がいいのかなあ‥‥
と考えてはいたものの、
あまりにも身近すぎるところで、
一般市民が巻き込まれるという
今までのテロや暴動とは
ちょっと違うことが起こり、
また直後ということもあり、
正直、書くとしても何を書いたらいいのか
全く整理もつかず
テロのことが書けませんでした。


▲夜は道路までグラスを持った客が溢れ出すほど
 いつも賑わっていた人気のカフェバー

だからといって、いつものように
フランス暮らしをしていての
面白おかしいこと
なんて書く気にはなれず‥‥。

特に私たち日本人にとっての面白い、
信じられない理解できない文化のこととかって、
ちょっぴり悪口になってしまいがちだから。

いつもはもちろん、“愛を込めて”
「信じられないよ〜おフランス人」なんてことを
書いているけれど、さすがに先週は、
テロの次の日、
そんなことは何も頭に浮かびませんでした。

そこで唯一書けるとしたら
「こんなとこがビックリだけど
 好きだよフランス人」
というフランス人のいい部分かな、
なんて思い、
先週のコラムテーマを選ぶに至ったのでした。

だから、
「『パリこれ!』も普通にいつも通りだし、
 パリ大丈夫だったんだね!
 安心しました。」
なんて知人から連絡をもらったりもしたけれど。
じつはちょっと違う。
幸いにも無事だったから、「大丈夫」だけど
ある意味「大丈夫」じゃないから
「普通」を装っているというのが
本当の気持ちのような気がします。


▲レピュブリック(共和国)広場には祈りを捧げる多くの人が
 毎日集まっている

バブー
テロが起こったのは金曜日の夜9時前後。
1週間が終わって、パリっ子たちが
いちばん盛り上がっている曜日、時間帯。

フランスでは
夕ご飯が始まるのはだいたい20時ごろ。
ビストロやレストランも夜の営業は
20時からっていうのがほとんどで、
21時半前後は
お店がいちばん賑わう時間帯なんだ。

襲撃された場所のひとつ、
カンボジアレストランは
地元っ子に大人気で
まりこちゃんも大好きなお店。
そこからたった190m先には
友人がシェフをつとめている人気ビストロ。
そしてその目の前は友人一家が住むアパルトマン。
すぐ横にはパリのオススメ散歩スポットとして
記事を書くことも多い、
大好きな「サンマルタン運河」。
ほんとに身近なところで起こった恐怖なんだ。


▲店の入り口の扉や壁にも銃弾の跡が

とのまりこ
事件のあった翌日の土曜日。
そして空だけ眺めていたら
今起きていることが信じられないくらい
美しい秋晴れだった日曜日。

外に出ればカフェもスーパーも
いつも通り営業していて
一見いつも通りのパリ。

でも。
アパートのロビーですれ違う
ご近所さんのおばあちゃん。
「郵便物が届いているよ!」
と教えてくれる管理人さん。
顔なじみのご近所スーパーの
店員のムッシュー。

「ボンジュール」と
いつも通りの挨拶を交わしあう
いつも通りの距離の間に、
「何も言わなくてもわかっているよ。」
という、何か見えないものが流れているのを
感じたり。

毎日のように通う
ワイン屋さんのムッシューとの
おきまりの握手をしての挨拶が
いつもよりお互いに
ギューッと力強いような気がしたり。

いつもと変わらぬように過ごす日常の中に
みんなが口に出して表現しなくてもわかりあう
「何か」を感じています。

たぶんパリに住む人みんなが
「いつも通りに生活することが
 テロに負けないこと」
と意識しつつある一方で、
本当は心の奥に感じている恐怖を取り払うことは
難しいだろうなということも、
日々あちこちで起こる
「fausse alerte」(=誤認警報)による
パニックで実感するのも現実です。


▲多くの犠牲者を出したカフェやビストロの前には
 たくさんの花束や手紙やろうそくの灯が。
 祈りに訪れる人がテロから1週間ちょっとたった今でも後を絶たない

バブー
テロの翌日、
ボクたちと同じ区に住む日本人の家にも、
「家から絶対に出るな。」
「通りに面した部屋は雨戸を閉めて電気を消して
 奥の部屋に引きこもっているように。」
とポリスが回ってきたんだそう。

その周辺住民全てに注意勧告をして回っていて、
まわりのメトロや道路は封鎖。
同じ区の人は気をつけて。外に出ないで。
っていう情報が、
同じ日本人コミュニティの中で
まわってきたから
ボクの夜のお散歩も急遽中止。
家でじっとニュースを見つめていたんだ。

これは結果的には
エッフェル塔近くのホテルで
爆弾騒ぎがあったものの、
間違いだったという結末。


▲ガラス窓に残る銃弾の後には花

とのまりこ
逃げたテロリストが
私たちの住む区に逃げてきた?!
と一時騒然としましたが、
間違いであってホッとしました。
でもその夜は、ポリスが我が家にやってきて
「避難しろ」と
ドンドン家のドアを叩いているけれど
そのポリスが偽物なのではないかと恐怖で
ドアを開けられない‥‥という夢を見ました。

他にも大きな音を銃弾と勘違いした市民が
大パニックを起こして逃げ惑ったとか。
走って大声をあげている人を
テロリストと勘違いして
パニックが起こったとか。
この1週間だけでも
あちこちでこういうことが。

もしかして何かが起こるからと
ず〜っと家に閉じこもっているわけにも
いかないし、少しずつでも「いつものパリ」、
日常に戻って行かなくてはいけないと
生活しながら
「fausse alerte」(=誤認警報)で
心がザワザワしたりパニックを起こしたり。

でもそれこそが
テロリスト達が望んでいることだろうから
その心のざわつきを見せてはいけないんだ
「普通に生活することこそが」という葛藤‥‥。

あれやこれやと、
まとまらない文章になってしまいましたが。
このまとまりのない感じが
今の私の心そのものかもしれません。


▲亡くなった犠牲者へのメッセージをつけている女性

バブー
とはいえ、笑っていても泣いていても
やってくる明日。
今日もボクはこの美しいパリの街を
元気にお散歩しているよ!

テロのあと、トリコロールカラーに
ライトアップされたエッフェル塔。
警戒にあたるポリスが記念写真を撮っている感じ。
これこそいつもの出た〜、「ザ・おフランス」!

これからも楽しくてびっくりで
時にまりこちゃんが腹をたてる
「え〜フランスってそんななの〜?!」
の愛すべきフランスの姿を
たくさんお届けするから楽しみにしていてね!


▲トリコロールに点灯されたエッフェル塔には、
 「FLUCTUAT NEC MERGITUR」の文字が。
 ラテン語で、「たゆたえども沈まず」という意味だそう


▲ポリスもつい撮影したくなる?

 


※この連載を再編集し、
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 住所:東京都渋谷区渋谷2-21-1
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東京都杉並区西荻北4丁目5−24
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2015-11-24-TUE


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