バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
2003年、フランスに単身で渡り、 現在はパリを拠点にヘアメイク&フォトエッセイストとして 活躍しているとのまりこさんが、 愛犬のバブーくん(アイルランド出身)を相棒に、 パリ暮らしのちょっとびっくりな出来事や、 へぇ〜っと感心する習慣などなど(*)をお届けします。 *もちろんすべてのフランス人やフランス全土に共通しないこともあります。 週に1回、でも気まぐれにもっと更新するかも? すてきな写真とともに、おたのしみください。 Amusez-vous bien!

 
とのまりこさんと バブーくんのプロフィール
 




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芸術学校
「コンセルバトワール」は、
みんなに門戸が開かれた場所!

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芸術学校
「コンセルバトワール」は、
みんなに門戸が開かれた場所!

バブー

みなさんは、フランスの
「コンセルバトワール」という学校の名前を
聞いたことはありますか??

今日はフランスの、
音楽や舞踏や演劇など
芸術分野に関する学校についてだよ!


音楽・舞踊・演劇の勉強ができる学校、
フランスの「コンセルバトワール」。
みなさんは、耳にしたことがありますか?!

とのまりこ

聞いたことがなければ
なんじゃそりゃ?なワードですが、
日本では耳にしたことがある方も
まあまあ多いはず。

そして、もし聞いたことがあるとしたら、
それは『のだめカンタービレ』
(以下『のだめ』)が理由という方も
多いのではないでしょうか。

『のだめ』は音楽を軸にした人気の漫画。
日本ではアニメ化、ドラマ化、映画化で
話題となったので、見たことある方も多いはず!
「コンセルバトワールといえばパリの音楽学校」
って思っている方も多いかもしれません。


年度末(フランスの年度末は6月)に近いとある日、
『誰にでも扉が開かれる日』という一般公開の日が、
各コンセルバトワールにあります。

バブー

あの『のだめ』に登場した
主人公たちが通っていたコンセルバトワールは、
プロを育てる、
パリ最高峰の国立高等教育機関。
日本で言えば「藝大」にあたるような場所。

でもね、実はコンセルバトワールって
フランスではいろいろな階層であって、
プロを目指すわけではない子どもたちも
気軽に通える習い事の場所として、
とっても有名なところなんだよ!

とのまりこ

「Conservatoire」(コンセルバトワール)自体は、
音楽・ダンス・演劇などの芸術を学ぶための
公的な学校のことを指します。

『のだめ』に登場した頂点の学校に限らず、
実はパリだけでも17個もの
区立のコンセルバトワールがあるんです。
(ちなみにパリは20区ありますが、
小さな区はいくつかが1つにまとまっている
ところもあるので、全部で17個となってます)

パリ市が運営しているもので、
教師たちは市に採用された公務員。
子どもから大人まで、
音楽、舞踊、演劇を学べる学校ですが、
各区のコンセルバトワールは、
「子どもたちが学ぶ場」としての役割が
とりわけ大きく、
習い事の場のひとつとして認識されています。



たとえば「音楽コース」は、いろいろな楽器に触れ合える
短期間のアトリエ(ワークショップ)を経て
自分の演奏したい楽器を決めるシステム
(直接その楽器でオーディションを受けるコースもあり)。
見たことも触れたこともなかった楽器を
習いはじめる子どもたちもいっぱい。


音楽の基礎を学ぶコースでは
「ソルフェージュ」(=楽典)とともに
「コーラス」が必須なのも面白いところ。
日本の音楽の授業における「合唱」のような機会が少ないので、
「合唱」しながらリズムや音楽全般を学びます。

バブー

市町村と分野によって
はじめられる年齢は変わるけれど、
ダンスだったら日本でいう幼稚園の年長さんから、
音楽だったら日本でいう小学2年生くらいから
申し込むことができるよ。

とにかく誰に対しても門戸が開かれ
誰でもやってみる機会をもらえる場所が、
コンセルバトワール。

公立だから、とにかく授業料も安い。
授業料は、世帯収入と扶養の子供数で決まる
「料金階層」(日本でいう世帯収入)
によって変わるんだけど、
たとえばパリだと「料金階層」が
<1>から<10>の10段階に分かれているよ。

とのまりこ

コンセルバトワールの授業料は、
いちばんの低所得者である
世帯<1>の年間86ユーロ(約14620円)にはじまり、
世帯<2>が131ユーロ(約22270円)、
世帯<3>が200ユーロ(約34000円)、
世帯<4>が268ユーロ(約45560円)と続き、
いちばん上の
世帯<10>が1320ユーロ(約224400円)。
これが年間の授業料。

しかも週に1回通う場合だけではなく、
週2〜3回通う人も、すべてこのお値段です。

一方、街中の私立の習い事教室をのぞいてみると、
楽器の個人授業を受ける場合、
週1回に30〜60分の授業料が、
年間850〜1450ユーロ(約144500〜246500円)。
くらべると、いかに安いかがわかります。



費用も安く、体系的に学ぶことができるコンセルバトワールは人気も高く、
入るためには抽選で席を勝ち取る必要が(以前は先着順でした)。

バブー

楽器もレンタルすることができるよ。

その費用も「料金階層」に合わせて決まっていて、
たとえば最も収入の低い世帯<1>だと、
年間12ユーロ(約2040円)!
いかに門戸が広く開かれてるかがわかるよね。

ただし‥‥。
誰でも気軽に入れるからこそ、
「とりあえず入っておこう」という人もいっぱい。
入るための競争は熾烈。

ここ数年はネット経由で申し込みをする
「抽選システム」となったので、
運を待つのみの感じになりましたが、
先着順だった数年前までは、
夜中から書類を持って並んだり、
プレミアチケット争奪戦のように
受付開始とともに繋がるまで電話し続けたりと、
大変な争いだったんだよ。

そしてね、どんな階層のどんな所得の人も
気軽に申し込めてしまうという制度上、
気軽に申し込みすぎて、
まじめな気持ちでない人も入ってくるという
問題点も抱えているみたいだよ。

しかし、問題点はあるとはいえ、
誰もが気軽に第一歩を踏み出してみられる
羨ましい環境のフランスのシステム。
ボクたちも興味津々なので、
また中の様子をのぞいていこうと思っているよ!

 


これは一般公開の日のコンセルバトワール。
自分自身が学ぶ楽器演奏だけではなく、
アンサンブルやオーケストラなどでの集団発表の機会があるのも大きな特徴。

今日は大まかに
フランスの「コンセルバトワール」の
システムについてでした♪

みなさん今週も素敵な1週間を!

 

 

*とのまりこさんの本*


「シンプルシックで心地よい暮らし
パリの小さなアパルトマンで楽しむおうち時間」
出版社 : 世界文化社
発売日 : 2021/5/29

 

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)

フランス雑貨のお店オープンしました。
バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

「Boîte」(ぼわっと)
東京都杉並区西荻北4丁目5−24
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2025-09-23-TUE

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illustration:Jérôme Cointre