バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
2003年、フランスに単身で渡り、 現在はパリを拠点にヘアメイク&フォトエッセイストとして 活躍しているとのまりこさんが、 愛犬のバブーくん(アイルランド出身)を相棒に、 パリ暮らしのちょっとびっくりな出来事や、 へぇ〜っと感心する習慣などなど(*)をお届けします。 *もちろんすべてのフランス人やフランス全土に共通しないこともあります。 週に1回、でも気まぐれにもっと更新するかも? すてきな写真とともに、おたのしみください。 Amusez-vous bien!

 
とのまりこさんと バブーくんのプロフィール
 




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日本の『お受験』の
ような文化は、
フランスには存在しない?!

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日本の『お受験』の
ような文化は、
フランスには存在しない?!

バブー

みなさんボンジュ~ル。
9月に新年度がはじまったばかりの
フランスだけど、
今週末からは『秋のバカンス』。
学校などは2週間お休みになるよ。

とのまりこ

フランスに住む日本人たち。
学校に通う子供たちがいる家族の場合、
この『秋のバカンス』を使って
一時帰国する人もたくさんいます
(例えばバカンス前後、学校を数日だけ休ませて、
合計3週間日本に帰るなど)。

とはいえ、この時期の日本は
お受験シーズン真っ盛り。

つい先日も、この秋日本に帰る友達たちと
一時帰国の話で盛り上がっていたところ、
「帰るのは楽しみだけど、せっかく帰っても、
子ども同士が会う時間がないって
言われちゃったわ」という話になりました(泣)。

バブー

そう、日本だと、秋のこの季節は、
幼稚園や小学校の
『お受験』シーズンでもあるよね
(特に都市部での話だと思うけれど)。

フランスにいるとすっかり忘れてしまう
この『お受験』。
というのが、フランスでは基本的に、
日本のような『お受験』は存在しないんだ。


フランスの幼稚園や小学校。日本のような
学校別の対策が必要となる
『お受験』の文化はありません。

とのまりこ

日本の『お受験』事情のことは、
フランスに住んでいて、
よく質問される話題のひとつです。

東京で生まれ育った私も、ご多分に洩れず、
幼稚園受験も小学校受験も体験してきましたが、
フランスの入学の仕組みはまったく別。
受験のための塾も、特別なお勉強も、
攻略本もありません。
「『お受験』で忙しいから今は会えない」
なんてことは起こりえないのです。

バブー

フランスでも、公立の場合は、
学区によって行くところが決まるという
日本と同じ仕組みだよ。

だけど私立の幼稚園や小学校の場合、
願書を出して、合格すれば
入学できるところは日本と同じだけど、
入るための仕組みが全然違うんだ。

日本のような『お受験』はないけれど、
私立の場合、翌年9月からの新年度に向けて、
約1年前の今頃から募集や面接がはじまります。

どこが違うかというと、
フランスの入学ではね、特別なテストはなし。
『モチベーションレター』と言われる、
この学校に入りたい理由や、
子どもについて親が書いたお手紙。
そして、幼稚園の初年度をのぞき、
前年度の『学校の成績表』を提出するよ。
これらの書類が通れば、校長との面接へ。
そして入学の可否が決まるんだ。

(※ごく一部、インターナショナル校などでは
語学などのテストを行うところもあるけれど、
今回は国の教育制度の一部として認められている
『sous contrat avec l’Etat』(スー・コントラ)
『国家との契約の下にある』学校のお話です)


3歳になる年の9月に入園するのが、フランスの幼稚園。
だからその約1年前、おむつも取れていない
半分赤ちゃんみたいな子どもを連れて面接へ。
とはいえ、日本の『お受験』のような
決まりきった面接練習は必要なく、ありのままの姿で臨みます(笑)。
お父様、お母様の紺色のお受験服(?!)
といったものもありません。

とのまりこ

ちなみに、「前年度の成績表を持参」って
ちょっと不思議な話にも聞こえますが、
フランスの幼稚園や小学校では、
途中の学年で辞めて別の学校に行くケースも多く、
毎年どの学年にも、新しい子どもが入れる枠が
数人くらい生まれることが多いのです。

学校を辞めるのは、引っ越しなどの理由だけでなく、
「授業についていけてないため肩をたたかれる」
といった場合もあり!
けっこう厳しい一面もあります。

ですから、そういった学力の部分の判断材料に
前年度の成績表が使われる、というわけです。

バブー

そして日本にはあまりない、
フランス特有のびっくりシステムが、
『兄妹枠』という入学の仕方だよ。

家族の誰かがその学校に入っていたら、
その兄妹は、優先して枠を確保できるんだ。
これは法律で決められたことではなく、
学校の裁量に任されているので
必ずというわけじゃないけれど、
フランスあるあるの慣習のひとつだよ。

とのまりこ

息子の学校でも、今の時期、
『来年度もうちの学校に残るかどうか』の
アンケートが送られてきますが、
そのとき同時に
『入りたい兄妹がいるかどうか』の
アンケートも送られてきます。

実際に、息子が入学面接を受けた
いくつかの幼稚園の中には、
「我が校では、来年度の年少さんの枠が
ほとんど兄妹枠で埋まっていて、
今のところ新規の枠が5人分しかありません。
かなり確率的に難しいと思っていてください」
なんて言われて、
やっぱり入れなかった学校もありました。

兄妹が誰か一人でも入り込んでくれたら、
あとはひと安心。
一人っ子ではどうやっても太刀打ちできないのも、
日本の『お受験』とは違う、
フランスならではの入学制度の世界です。


すでに通っている兄妹がいれば、
優先して入れるのがフランスの学校あるある。
さらに、兄妹がいなくても、
友人・知人が通っていると強力な後押しになる
コネ社会でもあるのが、フランスの入学の仕組み。

バブー

でもね、特定の学校に入るための
勉強や攻略法が存在して、
対策のための塾通いが必要だったりする
日本の『お受験』と違って、
前年度の学校の成績表を持って出願できる
フランスのシステムは、
とってもいいなあと思っているよ。

そのおかげで、子どもたちが
特別な受験勉強や塾に時間をとられることなく
遊びにスポーツに音楽に、
やりたいことをいっぱいできて、
子どもらしい時間を過ごしやすいのかなって。


中学や高校のこともまたいつか書きたいと思いますが、
基本的に日本のような
『それぞれの学校に入るための特別な対策&試験』
受験システムはありません。
学校の勉強を頑張って、その成績表をもとに受験。
だからかな?
子どもたちがのびのびして見える気もします。

とはいえフランスにも、日本とは違う形での
熾烈な学歴社会・格差社会の中での
競争という一面があって、
それはそれで本が1冊書けそうなほど、奥が深い!

親の野望と作戦によって
『公立派』『私立派』と分かれたりetc.
いろいろなことがある、複雑な、難しい世界。

そのあたりについても、またこのコラムで
ちょっとずつ紹介できたらいいなと思っているよ。

それではみなさん、今週も素敵な1週間を!


実は日本以上に学歴社会かもしれないフランス。
『公立派』と『私立派』に分かれますが、
パリでは教育の質・安全・環境などの背景が関係して、
年々私立人気が高まっています。


フランスの私立の学校の多くはカトリック。
学校によっては願書に
『洗礼を受けているか・受けていないか』
という項目があるところもあれば、
息子の学校のようにカトリックではあり、
宗教の時間もミサもあるが、
「生徒はどんな宗教の人でもウェルカムです」
というスタンスの学校も。

 

 

 

 

*とのまりこさんの本*


「シンプルシックで心地よい暮らし
パリの小さなアパルトマンで楽しむおうち時間」
出版社 : 世界文化社
発売日 : 2021/5/29

 

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)

フランス雑貨のお店オープンしました。
バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

「Boîte」(ぼわっと)
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illustration:Jérôme Cointre