Le salon de Marie マリーな部屋

「パンがないのだったら、ケーキを食べればいいのに。」と、
マリー・アントワネットは言ったのだそうだ。
どうせ、そういう話はよくできたウソなのだろうが、
ケーキがパンのかわりになると思っているマリーの気持ちが、
もひとつよくわからない。
ぼくは、ケーキを食べて腹をふくらませることなんて、したくない。
マリーはどうかしている。

しかし、とんでもなくお菓子が好きな人間というのは、
ほんとうにいる。ぼくは、そういう人を、ひとり知っている。
しかも、マリーという名である。日本人だ。
彼女は言った。
「わたしは、パンも食べるし、ケーキも食べる」
なんのこっちゃ?

そのマリーは、お菓子のことを語るときと、
お菓子を食べているときだけ
ほんとうに真剣な表情をみせる。怖い。
悪いひとじゃないのだろうが、怖いのはほんとうだ。

そんなマリーが、
「いま、ぜったいにたべるべきお菓子はこれだ!」と
ほんとうに真剣に語るのが、ここ。
「マリーの部屋」なのだ。
わたなべ まり プロフィール
illusttarion koharu

帝国ホテルのブルーベリーパイを
谷川俊太郎さんに。

渋谷PARCOのほぼ日曜日で
「谷川俊太郎さん、ありがとう。」が、
開かれてます。


5月末から、7月のなかばだったかな。
もしかしたら、もう
足をはこんでくださった方もいらっしゃるかも。


今日は、谷川さんの月命日。
去年の11月13日に
星のかなたに逝ってしまってから
もう7ヶ月、経つのですよね。
時間は、いつも、いつでも、均等にながれるから
残酷にも命を連れ去ってしまうように感じることもあるし、
つらさや悲しみを
やさしく癒してくれるように感じることも。。。


ひと月前、5月12日には
お別れ会が、帝国ホテルでひらかれました。
司会台のちかくに控えていたので
どっしりと歴史を感じるホテルの空間に
しつらえられた祭壇を
間近でずっと眺めることができました。


なだらかな斜面いちめん、
苔むす緑におおわれていて
菖蒲や、ひらきかけた百合、色づきはじめたあじさいが
そこここに可憐に咲いていました。
その中心にいらっしゃる大きな写真の谷川さんは
うつくしい緑の湿地から
会場の方々をちょっと観察しているようにも、見えました。


お別れは
やっぱり、ない方がいい。。。です。
けれど、こんなふうに
谷川さんが招いてくださった帝国ホテル。
どんなときでも、甘いものだけは欠かさないこの部屋なので
帝国ホテルといえば、はずせないこの逸品を
ご紹介しようかと。



伝統のブルーベリーパイです。

住所でいえば
千代田区内幸町1−1−1という帝国ホテルは
1890年(明治23年)、
それより7年前に建設されていた鹿鳴館のお隣りにオープンした
日本有数の洋式ホテル。
いうまでもなく、その佇まいは、
日本がたどってきた歴史そのものを映しだしています。


ケーキやお惣菜、パンなどをあつかうホテルショップ
「ガルガンチュワ」が開店した1971年以来、
ずっと作りつづけている代表作が、このブルーベリーパイだとか。
おなじく、戦後にアメリカ軍が残したレシピから
つくられたアップルパイとともに
どれほどたくさんの方々に長く愛されつづけていることか、
ちょっとやそっとの想像では追いつかないくらいです。



王道中の王道、といいましょうか。
確実に、おいしいのです。


ひとつひとつ丁寧に
伝統に忠実につくられていることが
ナイフを入れたときのサクッという音からも
伝わってくるような感覚です。
甘すぎないのだけれど
煮すぎず、果実のおいしさを絶妙に閉じこめている
フィリングが、パイ生地とみごとに合っています。


少しアレンジしてみたいときは
アイスクリームを添えるのも、おすすめとか。
そのままでおいしく設計されたパイですが、
トースターで温めると
バターとシナモンの香りがいっそう際だって
ゆっくり溶けていくアイスクリームとからめると
また、格別です。




いつもクリスマスには
毎年変わらない小さめのフルーツケーキをお送りすると
その年ごとに、ご本を送り返してくださっていた谷川さん。


今年は、半年早いですけれど
初夏のブルーベリーパイを御前にお送りしてみようかと
思います。
集ってくださったみなさまとご家族の
谷川さんへの想いにあふれた
とってもあたたかな会でしたよ、谷川さん!
またいつか、どこかで。


わたなべ まり


パイ?じゃなくて
エコバックのブルーベリー争奪戦がはじまりそうな
ジュニア(左)とジャイ(右)。。。
後ろには、いち抜けて去ろうとしてるシャビが。




boutique où je l'ai acheté 今回、買ったお店

帝国ホテル 東京のホテルショップ
「GARGANTUA(ガルガンチュワ)」の
ブルーベリーパイとアップルパイは、
1971年の開店以来ずっと高い人気のアイテム。
ブルーベリーパイのレシピは、
このお店ができるずっと前、戦後に進駐軍からの
「本国と同じパイを再現してほしい」という
リクエストから生まれたものなのだそうです。
(いまも、フィリングの材料や配合は
開店当初のものを受け継ぎ、
使っているのはワイルドブルーベリーの
シロップ漬けだそうです。)


同じくアップルパイも、
進駐軍ののこしたレシピがもとに。
使うリンゴの紅玉は、
なんと1年に使う約5000キロ分を
旬の時期に長野で一度に仕入れているんですって。


ちなみに生地を帝国ホテルのベーカリー部門が、
フィリングは、アップルパイがベーカリー部門、
ブルーベリーパイはペストリー部門が担当しています。
どちらも2種類のパイ生地と
たっぷりのバターを使い、
食感のよさを追求しています。


ブルーベリーパイの人気の高さから、
つくられたグッズもあります。
そのひとつが今回、
マリーが最後に写真で紹介している
ブルーベリーパイのかたちに収納できる
エコバッグです。


なお、ガルガンチュワという店名は
16世紀フランスを代表する物語作家である
フランソワ・ラブレーの
『ガルガンチュワ物語』の登場人物に由来。
中世の巨人族伝説に題材を取った
騎士道物語のパロディであるこの作品には、
美食家で大食漢のガルガンチュワという
王様が出てくるんです。



ガルガンチュワ

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