糸井重里
・「ふつうにおいしい」というほめ方がある。
おもに若い世代の人たちがつかっている言い方だ。
この場合、「おいしい」が主題になっているのである。
まずは肯定的な意味で「おいしい」と言っているのだ。
しかし、その前につく「ふつうに」は、なんなんだ?
「めっちゃおいしい」というのではなく、
期待していた以上に「おいしい」というようなことらしい。
だから、おそらくエチケット的には、
目上の人から高価なステーキをご馳走になったときなどは
「ふつうにおいしい」とは発言しないと思われる。
そういう場合は、すでに「かなり期待している」ので、
さらにそれを上回ったら「ふつうに」とは言えなくなる。
おそらくカジュアルな「めっちゃ」でもなく、
「なんですか、これ?!」であるとか、
「いままで食ったなかで最高」であるとか、
「今日死ぬかもしれない」だとか、
日常のなかに納まりきれない価値を表現するのだろう。
「ふつうにおいしい」は、肯定しているけれど、
じぶんの日常の価値体系のなかにあるということだ。
コンビニで買ったスイーツであるとか、
高くはないエスニック料理であるとか、
少し変わったお土産のお菓子なんかに言うのだろう。
「ふつうに」という表現は、
年長者には「やや見下してないか?」と思われそうだが、
そういうことでもないということは覚えておきたい。
「考えようによっては、おいしい」ではなくて、
「おれの知ってる世界で認められる、おいしい」なので、
いわば、選挙で言えば「一票は投じている」のである。
しかし、ま、「ふつうに」表現も、「流行」ではあるので、
そのうちだれも言わなくなるだろうと予言しておく。
ぼくには、「ふつうに」の反対側にあるような
「めっちゃ」の多用のほうが、気になる。
いわゆる価値の過剰(インフレ)表現なのだが、
とにもかくにも、大勢の人たちがむやみに使っている。
「めちゃくちゃ」の簡易形なんだと思うのだが、
老若男女、「めっちゃ」をつかいすぎていると思う。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
なんか数日無理をしてて、ややくたびれましたが、平気です。
-
- 場所
- Googleマップで地図を見る
- 開催日
-
- 場所
- Googleマップで地図を見る
- 開催日
-
- 場所
- Googleマップで地図を見る
- 開催日