| 糸井 | ひびのさん、 今回はハラマキのデザインで
 いろいろお世話になりました。
 
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            | ひびの | こちらこそ。 なんだか、すみませんでした、
 わがままばかり言ってしまって。
 
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            | 糸井 | ええ? そうなんですか? そんなにひどいわがままを?(笑)
 
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            | ひびの | ええ、ちょっと(笑)、 ものづくりの上でのわがままを。
 
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            | 糸井 | いやぁ、おもしろかったんですよ。 ひびのさんがおっしゃる、
 そのわがままの部分が。
 チームみんなで、刺激を受けちゃって。
 きょうはそのあたりの話も。
 ね?
 
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            | ゆーないと | はい。 
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            | 一同 | よろしくお願いします。 
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            | ゆーないと | 製品サンプルがきょう、あがってきました。 
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            | 一同 | わー(拍手)。 
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            | ゆーないと | もう、すばらしいです。 
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            | ひびの | ちゃんと柄も出てますね。 
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            | 糸井 | すごいな、この迫力は。 
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            | ゆーないと | ちなみに、こちらも迫力の原画です。 
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            | 糸井 | そうそう、これ。 この原画を最初に見て
 すごい! って思ったんだけど、
 真っ先に言ったのが、
 「これ、ハラマキで再現できるの?」って。
 
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            | ゆーないと | そうでした。 すごく細かく描かれた原画だったので、
 感動しながらも
 みんなでそれを心配したんです。
 
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            | ひびの | 工場では苦労をされた‥‥のですよね。 
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            | ゆーないと | 工場の「白倉ニット」さんは かなりがんばってくださいました。
 
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            | 糸井 | すごいな、白倉さんの技術は。 もはやプリントみたいじゃないですか。
 2色の糸を編んで表現するわけだから、
 この原画を
 まずはドット画にするわけですよね。
 
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            | ゆーないと | そうです。 この「ある一日」の、
 点描のような緻密さなどは、もう‥‥。
 
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            | 糸井 | 考えるだけでもたいへんだ。 
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            | ひびの | いや、でも、あの‥‥ 最初の打ち合わせでいただいたのが、
 「美術館」というテーマだったので。
 
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            | ゆーないと | そうでした。 
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            | ひびの | それはどう表現すればいいんだろうと考えて わりと迷いながら思いついたのが、
 「違ったタイプのいろんな作品が
 美術館に展示されている」
 というイメージだったんです。
 
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            | ゆーないと | なるほど‥‥。 その美術館のなかに、
 「点描の絵」があったわけですね。
 
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            | ひびの | そう。 
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            | ゆーないと | 「ある一日」は、 ほんとうに手描きでテンテンテンって、
 描かれていますよね?
 
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            | ひびの | ええ、そうです。 
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            | ゆーないと | 細かく描くのは、 たいへんなことではないんですか?
 
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            | ひびの | いや、そんなに‥‥。 
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            | 糸井 | へっちゃら? 
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            | ひびの | ‥‥でも、ここまで描き込んだものは、 過去にないかもしれないです。
 考えてみれば。
 
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            | 糸井 | ああー。 つまり、「こうしたい」と思いついたあとで、
 気がついたら自分自身がその命令に従って、
 細かい仕事をやり遂げてしまった、という。
 
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            | ひびの | はい(笑)。 
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            | 糸井 | やるしかないですもんね、だって。 
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            | ひびの | ええ、ええ。 
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            | 糸井 | アシスタントのいない劇画漫画家のように。 
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            | ひびの | (笑) 
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            | 糸井 | リアルな背景までぜんぶ自分で描く、みたいな。 
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            | ひびの | ですね。 こればかりは、人に頼むと違っちゃうんで。
 
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            | 糸井 | そうですよね。 
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            | ひびの | やっぱり自分で描かないと‥‥。 あと、自分で描いた方がたのしい。
 
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            | 糸井 | うん。 なんて言うんだろう‥‥
 ぼくはこの原画を最初に見たときに、
 「あー、こづえさんという人は、
 自分でやるのがほんとに好きなんだなぁ」
 と思いました。
 
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            | ひびの | そうですね。 分業できるといいんですけどね。
 
 ただ、その意味では今回はじめて、
 この「アニマル迷彩」を
 うちのスタッフにやらせてみたんです。
 
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            | 糸井 | ほぉ。 
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            | ひびの | テイストを守りたいので、 なかなかそういうことをできなかったんですけど、
 そろそろ大丈夫かなって。
 このハラマキでやってみました。
 
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            | ゆーないと | そうだったんですね、初耳です。 
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            | ひびの | 話し合って、方向性を決めて、 図案を描きはじめたんですけど、
 複雑な柄だから、ふたりで頭が混乱して、
 「どこがどうなってるんだ?」みたいな。
 
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            | 糸井 | この柄はそうなると思う。 だって迷彩じゃないですか(笑)。
 
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            | ひびの | そうなんですよ(笑)、 で、ふたりで混乱しながらも
 「これで大丈夫だよね」となったので、
 デザインをお渡ししたら
 「白倉ニット」のかたから‥‥。
 
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            | 糸井 | うん。 
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            | ひびの | 「なんか‥‥線が足りません」って。 
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            | 一同 | (笑) 
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            | ゆーないと | あとで、あわてて線を足したんですよね。 
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            | ひびの | そう。 
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            | 糸井 | もう一回、言いますけどね、 はじめてスタッフの人といっしょにやる柄が
 「迷彩」っていうのは混乱します(笑)。
 
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            | ひびの | はい(笑)。 
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            | 糸井 | でも、途中経過はどうあれ、 これも魅力的ですよ。
 すべて含めて、こづえさんの作品だと思います。
 いっしょにやってる人は似てきますから。
 
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            | ひびの | そうですね、 仕上がりは問題ないんです。
 ただ‥‥
 自分ひとりで描いていたら、
 「線が足りません」は、なかったと思って。
 人が描いたものを見ると、
 理解するのにすごく時間がかかるんです。
 
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            | 糸井 | ああ‥‥。 ということは、
 「分業するんじゃなかった」みたいなお気持ちに?
 
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            |  | 
          
            | ひびの | そうなんですよ。 
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            | 一同 | (笑) 
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            | 糸井 | いや、文章の場合もそうです。 いろいろ人と話し合って、
 ためになることもたくさんいただくんだけど、
 最後は自分で書くしかないんです。
 
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            | ひびの | そうなんですね。 
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            | 糸井 | 最後の帳じり合わせは自分にしかできない。 矛盾とかも考えながら、
 微妙なところをグイッとふんばって、
 ぜんぶを細かく調整して合わせられるのは、
 これ、自分でやるしかないんですよね。
 
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            | ひびの | そう、そうなんです。 
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            | 糸井 | おもしろいなぁ‥‥。 のっけから、おもしろいです。
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            |  | 
          
            |  | (つづきます) |