| ひびの | あとは今回、 デザインをしながら思ったのは、
 ニットをとことんいじめてやろう、
 みたいなことですね。
 
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            | 糸井 | お、はげしいですね、 いじめたんですか、ニットを。
 
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            | ひびの | ちょっと意地悪に。 「ここまでできるか」
 と追いつめるようなことを。
 
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            | ゆーないと | そ、そのことについても、 申し上げておきたいことが‥‥。
 
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            | 糸井 | ん? 
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            | ゆーないと | ハラマキをつくっている途中で、 わたし、
 こづえさんに謝りに行きました。
 
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            | 糸井 | また‥‥何をしでかしたんですか。 
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            | ひびの | (笑) 
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            | ゆーないと | せっかくすばらしい原画をいただいたのに、 「これはとてもハラマキで再現できない」
 という話になったんです。
 
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            | 糸井 | ああー。 
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            | ゆーないと | とくに、「ある一日」の この繊細な表現を再現するのはかなり無理。
 ということになりまして、
 こづえさんのところに
 「すみません、できません、どうしましょう」
 というご相談にうかがったら‥‥。
 
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            | 糸井 | うん、うん。 
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            | ゆーないと | こづえさんは、 「できないのは最初からわかってるわよ」
 って。
 
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            | 糸井 | おー、いいねぇ(笑)。 
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            | ゆーないと | 完全に再現できないなりに、 ちょっとつぶれたりとかしながらも、
 いい方に転べばそれで全然オッケーだと。
 「とりあえずやってみてよ」って。
 そこで、もう、あたしは、
 ああー! っと思って。
 ぽろぽろぽろぽろっと、目から。
 
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            | 糸井 | うろこが。 
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            | ゆーないと | うろこが。 ぽろぽろぽろーーーっと。
 
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            | ひびの | でも、工場にとってはその、 「とりあえずやってみてよ」が
 ものすごくたいへんなんですよね‥‥。
 ほんと、わがままを言いました。
 
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            | ゆーないと | いや、でもやっぱり、 いただいた原画を見て、
 「これがハラマキになったらすてきだ」
 とわかっていたので、
 あきらめなくない! っていう気持ちが
 関わるみんなにすっごくあったんです。
 だから「とりあえずやれる」ことは
 すごくうれしかったです。
 
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            | 糸井 | つまり、ひびのさんは、 最初から想像しているんですよね、
 どのくらいつぶれるかを。
 
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            | ひびの | ええ、そうですね。 
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            | 糸井 | しかしまぁ、 新潟の工場の人たちも、
 よく引き受けてくれました。
 言ってみれば、
 工場は大工さんに当たるわけじゃないですか。
 ぼくらが設計事務所で。
 
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            | ゆーないと | そうですね。 
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            | 糸井 | この細かい原画をドット絵にしてください っていうのは、
 かなり厳しい注文ですよね。
 
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            | ゆーないと | 厳しかったです。 
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            | 糸井 | どんなふうに注文したんですか。 
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            | ゆーないと | 「あのぉ、ちょっと一回、 だまされたと思ってやってみてください」とか。
 
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            | 糸井 | ‥‥ほんとに、その言い方で言ったの? 
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            | ゆーないと | まぁ、そんなふうに。 
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            | 一同 | (笑) 
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            | 糸井 | 新潟の工場は、すごい。 「白倉ニット」さんはすばらしいですね。
 その注文に、応えてくださった。
 
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            | ゆーないと | ドット絵に変換する作業は 桑原さんという若い女性が
 担当してくださっているんですが、
 このかたが明るくていい人で、
 「あ、わかりました、じゃあやってみます!」
 と言ってくださったんです。
 
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            | 一同 | すばらしい。(拍手) 
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            | ゆーないと | 実は、今回のシリーズを発注する前に、 私たちハラマキチームは、
 「白倉ニット」のみなさんと
 打ち合わせをしていたんですね。
 そのときに、桑原さんから、
 「これからはなるべく
 ドット画にしやすいデザインをお願いします」
 って言われてたんです。
 
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            | 糸井 | なるほど。 
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            | ゆーないと | 私たちは、 「わかりました、できるだけそうします!」
 というお返事をしました。
 
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            | 糸井 | うん。 
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            | ゆーないと | で、その数週間後に注文したのが、 この「ある一日」です。
 
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            | 糸井 | ああ‥‥(笑)。 いや、笑いごとじゃない。
 申し訳ないとしか言えないですね。
 
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            | ひびの | 打ち合わせの意味をなくしてしまいました。 
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            | ゆーないと | 桑原さんには、ほんとに感謝しています。 
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            | ひびの | 桑原さん、ありがとうございました。 
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            | ゆーないと | でも、「ある一日」はたいへんだったけど、 「チェックチェク」とかは、
 たのしんでやってくれたと思います。
 
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            | ひびの | そうだといいんですが‥‥。 
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            | 糸井 | いや、でもさ、 ならべて見ると、
 やりやすいように見えるけどさ、
 実はそうでもないんじゃないの?
 つまり、
 かすれとかを表現するためには
 この細かさが必要だから、
 けっきょく、同じくらいややこしいでしょう。
 
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            | ゆーないと | ああ‥‥。 
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            | ひびの | きっとそうですよね。 
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            | 糸井 | この「ドクロパンダ」だって、 実はたいへんだと思うんですよ。
 
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            | ゆーないと | 手描きですからね。 
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            | 糸井 | うん。 ‥‥でも、その甲斐あって、
 どれもけっきょく、味が出ましたね。
 
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            | ひびの | 出ました。 
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            | 糸井 | 新潟の桑原さんは、 若い女性だから、
 「オッケー、やってみますよ」
 ってドーンと受けてくれるんですか?
 
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            | ゆーないと | そうですね‥‥ わりと考え込んで困るタイプなんですけど、
 「うーん‥‥難しいですねー。
 でも、わかりました、やってみまーす!」
 
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            | 一同 | すばらしい。(拍手) 
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            | ひびの | あの‥‥でも、 その桑原さんとは、
 私と直接、話をしていなくて、
 よかったと思います。
 
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            | 糸井 | ああー、そうか、 ひびのさんはいつも工場と
 直接やりとりをしてるから。
 
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            | ひびの | 多いですね、わりと。 
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            | 糸井 | 今回も直接やりとりをしていたら、 強いことを言っていたんじゃないかと。
 
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            | ひびの | 言っていたでしょう。 いつも言っちゃってますから、平気で。
 
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            | 糸井 | 何て言うんですか? 
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            | ひびの | たとえば、まあ‥‥ 「え? 何でできないの?」
 
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            | 糸井 | なるほど。 
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            | ひびの | 「理屈から考えて、できるよね?」 とか。
 
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            | 一同 | ひゃー(笑)。 
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            | ゆーないと | うーん。 
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            | 糸井 | 厳しくてもね、 いいものができてみんながよろこべば、
 つくる人たちもうれしいんですよね。
 
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            | ひびの | そこは信じたいですね。 
 (つづきます)
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