| ひびの |
ものをつくるときにはいつもそうなんですけど、
ほんとに、
自分の原画の通りになる必要はないんですよ。
意外性があったほうが、おもしろいので。
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| ゆーないと |
そのおはなしが、
今回とても勉強になりました。
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| 糸井 |
刺激になった。
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| ゆーないと |
なった。
なりました。
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| ひびの |
今回は、ほぼ日さんに、すごくいい感じで、
つないでくださったというか。
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| ゆーないと |
そ、そうでしたか。
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| 糸井 |
よかったじゃない、ほめられて。
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| ゆーないと |
よかったぁ‥‥。
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| 糸井 |
あいだにこういう曖昧な人をはさんだのが
コミュニケーションをよくしたんでしょうね、
このケースでは。
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| ひびの |
（笑）そうかもしれません。
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| 糸井 |
つまり、
「だまされたと思ってやってみてください」
っていうのと、
「理屈から考えて、できるよね？」
のちがいなわけです。
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| ひびの |
（笑）
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| 糸井 |
これ、意志はどちらも同じですものね。
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| ひびの |
そうです。
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| 糸井 |
なんて言うんだろう‥‥
「ただ再現する」ことなんかは
作り手は望んでいないわけですから。
製品にするっていうのは、
それ自体が「画材」みたいなものですよね。
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| ひびの |
そう、ほんとにそうですね。
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| ゆーないと |
ああー（すごく勉強になっているため息）。
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| ひびの |
それに、基本的にわたし、
自分の絵が好きじゃないんです。
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| ゆーないと |
え、そうなんですか。
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| 糸井 |
それはおもしろいですね。
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| ひびの |
だから、絵としてそのまま人に見せることは、
ずっと拒否し続けてます。
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| 糸井 |
言われてみれば、そうですね。
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| ひびの |
製品というのは、完成に近づくほど
もとの絵から離れていくものですよね。
ハンカチなんかはけっこうそのままですけど、
それでもやっぱり布なので透けていたりで、
原画からは離れているんです。
私の場合は、
そうやって「離れていくこと」がたのしくて、
ものづくりをしている感じがありますね。
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| 糸井 |
うん。
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| ひびの |
自分の絵をあんまり大切に扱ってほしくない、
みたいなところがあるんです。
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| 糸井 |
じゃあ、まさしく今回の、
ドット絵に直されるっていうのは、
うれしいんでしょうね。
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| ひびの |
ええ（笑）。
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| 糸井 |
そうかぁ、ひびのさんは、
「離れていくこと」がたのしくてものづくりを。
なるほどねぇ‥‥。
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| ひびの |
糸井さんは？
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| 糸井 |
ああ、ぼくですか。
ぼくは‥‥さっき、ひびのさんが、
「自分で描いた方が楽しい」
とおっしゃいましたけど、
ぼくもそれに近いんです。
最近は、現場仕事がたのしくてしょうがない。
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| ひびの |
現場仕事。
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| 糸井 |
ここ何日かのあいだに、
「おれが書くわ」っていう仕事が
いくつか続いたんですよ。
コピーライターとして企業からの仕事は
もう受けてないんですけど‥‥
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| ひびの |
ええ。
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| 糸井 |
知り合いから頼まれたんです。
「やってもらえる？」って言われたら、
「やりたい！」って思った。
もうね、頼まれた途端から、
うれしくて、うれしくて、
すぐにアイデアを考えはじめてる。
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| ひびの |
へぇー。
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| 糸井 |
仕事っていうより、
友だちと野球で遊んでるような感覚なんです。
それがまた、
遊びの草野球なのに、
やたらとスイングがいいんですよ。
へたするとプロでやってるときより
スイングがいい。
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| ひびの |
それは、なぜなんですか？
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| 糸井 |
なぜだろう‥‥。
答えたいですね‥‥なぜだろう。
‥‥うん、そうだ。
誰もジャッジができないんです。
つまり、
いいだの悪いだのって
誰かが言うものじゃない。
自分が決めるしかない。
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| ひびの |
はい、はい。
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| 糸井 |
自分が「いんじゃなーい？」と問いかけると、
もうひとりの自分が
書いた途端に「オッケーだよ」って言うんですよ。
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| ひびの |
でも、知り合いとか友情とかが絡むと、
逆にやりにくくはないですか？
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| 糸井 |
ということも思ったんですけど、
ぜんぜん心配なかった。
もう、「でっきる、できる！」みたいな感じで
どんどん思いつくし、
自分がつくるものが、ぴちぴちしてるんですよ。
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| ひびの |
へええー。
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| 糸井 |
いやぁ、だから、
職人仕事は取り戻してくれるなぁーって。
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| ひびの |
なるほど。
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| 糸井 |
いったん細かい絵を描きはじめちゃったら、
自分自身に従って
ぜんぶ描き切らずにはいられないのと同じで。
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| ひびの |
ええ。
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| 糸井 |
コンセプトだの何だのっていうのを
言っている自分じゃない自分が、
もう１回、グイッと起ち上がってくるんです。
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| ひびの |
ああ、すごくよくわかりました。
まるごとの自分がやっている、
そのときの快感っていうことですね。
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| 糸井 |
そうですね、そうです。
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| ひびの |
うん。
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| 糸井 |
はじまりは、
矢野顕子さんとの作詞だったんです。
あっこちゃんが
「こんなのできたんだけど」
ってつくりかけのを送ってきちゃったんですよ。
『気仙沼においでよ』っていう歌を。
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| ひびの |
ああ。
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| 糸井 |
曲があって、詞も半分できてました。
それが、
「あと何とかしてくれる？」
って投げられてきて。
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| ひびの |
いいですね（笑）。 |
| 糸井 |
「やらせてほしい」
という気持ちに素直になれたんです。
で、つくりはじめたら、
なんかもう、
現場仕事がどんどんたのしくなっちゃって。
そこに和田誠さんがやってきて‥‥。
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| ひびの |
え？
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| 糸井 |
いっしょにポスターをつくることになったんです。
和田さんが来てくれたことも
なんかうれしくてしょうがないんですよ。
そのうちに今度は、
永ちゃん（矢沢永吉さん）の40周年で、
「糸井さん、頼めますかね」
みたいなのがあって。
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| ひびの |
へぇー。
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| 糸井 |
あっこちゃんにしても、
和田さんにしても、永ちゃんにしても、
よく知っている人が
どういうことをよろこぶかは、
自分の感覚が知ってるじゃないですか。
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| ひびの |
ああ、そうですね。
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| 糸井 |
理屈じゃなくて、手が動いちゃう感じ。
だから、
ひびのさんの原画を見たときに、
「そう、こういうことがしたかったんだ」
って強く感じたんですよ。
これはまさしく、
理屈じゃない手が描いたものですよね。 |
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（つづきます） |
