| 糸井 | スムージーの話でぼくが言いたかったのは、 皮も何もかも入れるような
 自由さと親しさなんです。
 ものをつくる人を自由にして、
 それを受け取る人も自由にする。
 「身につけるものですからお客様、
 やはり落ち着いたデザインですよね」
 みたいなことじゃなくて。
 
 | 
          
            |  | 
          
            | ひびの | そうですよね。 
 | 
          
            | 糸井 | うん。 
 | 
          
            | ひびの | 人の意見を聞いてくと、だんだん、 「あ、これ、やっちゃいけない」
 「あれもやっちゃいけない」
 が多くなっていっちゃうんですよね。
 
 | 
          
            | 糸井 | そうそうそう。 で、どこにでもあるものにたどり着く。
 
 | 
          
            | ひびの | とはいうものの、ですよ。 自由にやりすぎると、
 なかなかこれが、迷惑をかけるんですよね(笑)。
 
 | 
          
            | 糸井 | ゆーないとさんは、どうでしたか。 今回、たいへんだなと思った?
 こづえさんに頼むんじゃなかったと思った?
 
 | 
          
            | ゆーないと | まさかまさか(笑)。 
 | 
          
            | ひびの | 以前、扇子をつくったときから、ね。 私はすごい納期が‥‥。
 
 | 
          
            |  | 
          
            | ゆーないと | そんなそんな。 
 | 
          
            | ひびの | ほんとにすいません。 一応、納期を気にする人なんですけど。
 
 | 
          
            | ゆーないと | ご一緒できて、すごいよかったです。 こづえさんは常に、
 「自分が使いたい」
 という気持ちで考えてくださるんです。
 たとえば私たちが思いもよらなかった、
 毛糸のパンツの股上を短くするとか、
 そういうことを最初に提案してくださって。
 「あ、そこは考えたことなかった」
 というのが何度もありました。
 (※けいとのぱんつは、股上の長さは以前と変わりません。
 ゴムのリブ部分が短くなり、その他の部分は長くなりました。)
 
 | 
          
            | 糸井 | すばらしいですね。 
 | 
          
            | ゆーないと | 「自分で使う目線」を もっと強く持つことについて、
 ほんとにすごい勉強になりました。
 
 | 
          
            | ひびの | いつもの当たり前の中に、 なにか違うことを探してみると、
 けっこうおもしろさが見つかりますよね。
 
 | 
          
            | ゆーないと | はい。 
 | 
          
            | 糸井 | な? やっぱりこづえさんにお願いしてよかっただろ?
 
 | 
          
            |  | 
          
            | ゆーないと | はい。 ‥‥あの、それでこづえさん。
 
 | 
          
            | ひびの | はい。 
 | 
          
            | ゆーないと | 最初に、ハラマキは好きになれない というお話がありましたが、
 そのあたりのことを
 もうすこしうかがっても‥‥。
 
 | 
          
            | ひびの | あ、でも、さっき糸井さんが、 「うちのハラマキは上にあがらないですよ」
 とおっしゃってたので、そのひと言で、
 とりあえず今までのね、
 ハラマキに対するわだかまりをなくそうと。
 
 | 
          
            | ゆーないと | 上にあがるというのは、 おなかの真ん中で、棒みたいに、
 たぐまってしまうということですよね。
 
 | 
          
            | ひびの | そう、そうなんです。 
 | 
          
            | ゆーないと | 寝てる間に。 
 | 
          
            | ひびの | そう、それが嫌で。 
 | 
          
            |  | 
          
            | 糸井 | ぼくが最初に使ってたハラマキはそうでした。 その最初のハラマキは、
 イラストレーターの
 石岡玲子さんにいただいたんですよ。
 
 | 
          
            | ひびの | あ、そうだったんですか。 
 | 
          
            | 糸井 | 石岡さんが、 「シルクのハラマキはすごくいいから」
 とおっしゃって、ぼくにくれたんです。
 使ってみると確かにいいんですよ。
 ただ、やっぱりデレデレになるんです。
 上にあがってしまう。
 
 | 
          
            | ひびの | はい。 
 | 
          
            | 糸井 | それに、ぜったい人には、 「ほら見て、ハラマキ」とできない。
 
 | 
          
            | ひびの | そうですよね。 
 | 
          
            | 糸井 | そこで、上にあがらないで なおかつ人に見せられるハラマキを
 うちでつくろうと思ったら、
 新潟の工場との出会いもあって、
 できちゃったんですよ。
 これが(シャツの下のハラマキをチラリ)。
 
 | 
          
            | ひびの | あ、巻いてらっしゃる。 
 | 
          
            |  | 
          
            | 糸井 | 毎日です。 これをつくったら毎日巻いてますね。
 ほら、この人も。
 
 | 
          
            | ゆーないと | 巻いてます。 (シャツの裾から見せて)
 
 | 
          
            | ひびの | あー。 
 | 
          
            | ゆーないと | 地肌につけて、裾からちょっと見せる。 
 | 
          
            | 糸井 | 見せハラマキ。 
 | 
          
            | ゆーないと | ‥‥ということが できるようになったんです、ハラマキで。
 
 | 
          
            | 糸井 | ただ、かわいくしたつもりでも、 笑う人は笑うんですよ。
 そりゃあ、ハラマキですから。
 
 | 
          
            | ひびの | はい。 
 | 
          
            | 糸井 | それについては、もう気にしない、と。 人から「何それ」って言われても気にしない。
 だいたい、
 いちばん最初のほぼ日ハラマキは、
 秋山具義と、横尾忠則ですからね。
 はじまりからもう、
 「どうなってもいいや」
 っていう意志がありました。
 横尾さんにハラマキを頼んで、
 「商品らしさ」なんかあったもんじゃない。
 
 | 
          
            |  | 
          
            | ゆーないと | (資料を見て)これですね。 
 | 
          
            | 糸井 | これなんかさ、 「ハラマキはお腹に巻く柔らかいものだから、
 堅いものにしたくて」
 ということで、レンガの柄ですよ。
 | 
          
            |  「レンガ」2001年 真心ハラマキより
 | 
          
            | ひびの | レンガ。 
 | 
          
            | 糸井 | やっぱり、うっすらと悪意がね、 
 | 
          
            | ひびの | 悪意、ありますねえ。 
 | 
          
            | 糸井 | こっちの横尾さんのだって、ほら。 「臓物の上に巻くから、胃腸にしてみた」
 もう、なにがなんだか。
 
 | 
          
            | 「横尾2」2002年 真心ハラマキサマー改めライトより | 
          
            | ひびの | たしかに自由(笑)。 
 | 
          
            | ゆーないと | 今回、こづえさんにも 自由にやっていただいて、
 とにかく工場の、「白倉ニット」の人たちが
 いつも以上によろこんでくれたんです。
 もうね、達成感。
 
 | 
          
            |  | 
          
            | 糸井 | うん。 これを巻いてる人に、街で会いたいね。
 
 | 
          
            | ひびの | そうですね。 
 | 
          
            | 糸井 | 「これでモテました」とか。 
 | 
          
            | ゆーないと | そうなったらうれしい! 
 | 
          
            | 糸井 | でも、ハラマキだからなぁ(笑)。 
 | 
          
            | ひびの | ハラマキ。 ‥‥ハラマキっていう呼び方が、いいですよね。
 
 | 
          
            | 糸井 | もっとかっこいい名前にしたほうがって、 最初はよく言われたんですよ。
 カタカナで、なんとかロール、みたいな。
 でも、やっぱりハラマキなんです。
 「この名前そのものを恥ずかしくなくする」
 というふうに思って、変えなかったんです。
 
 | 
          
            | ひびの | はい。 ぜったいに変えない方がいいですよ。
 ハラマキは、ハラマキです。
 
 | 
          
            |  | 
          
            | 糸井 | ええ。 ハラマキは、ハラマキです。
 
 | 
          
            | ゆーないと | うんうん。 ハラマキは、ハラマキです。
 
 (つづきます)
 |