上大岡トメさんのプロフィールはこちら 池谷裕二さんのプロフィールはこちら
もくじ
001 脳に対する、からだの反乱。
2009-03-30-MON
002 責任と欲望の出会う場所。
2009-03-31-TUE
003 他人の不幸は喜びである。
2009-04-01-WED
004 やさしさの生存戦略。
2009-04-02-THU
005 一般の人のための学問。
2009-04-03-FRI
006 少ない人の間で生きる。
2009-04-06-MON
007 脳をからだに分散させる。
2009-04-07-TUE
008 最終結果だけがわかるシステム。
2009-04-08-WED
009 ええい、好きになっちゃえ!
今日の更新

009 ええい、好きになっちゃえ!

糸井 そういう、言葉にならないことって
忘れられがちです。
価値としてカウントされないんですよ。
上大岡 見えないからですよね。
池谷 そうなんです。
例えば企画会議で、
「こういうものはいいと思います」
「なんでですか?」
「だっていいと思うんだもん」
これはおそらく
通用しないんじゃないでしょうか。
上大岡 「なんとなくいいと思うんですけど。
 うまくいきそうな気がするんです」
って言っちゃいますけどね。
池谷 あはは(笑)。
こういう会議のときって、
きちんと理由が言えて、
「こっちがこうなってこうなります。
 だからこのほうが売り上げが見込めるし、
 こういうのが、今後、流行します」
と、ちゃんと論理的に理由をくっつけた人が
いわゆる、頭がいいとされる
タイプですよね。
これって、脳を見ると、
ものすごく、理にかなっていない(笑)。
むしろ、言葉で説明できることは、
理にかなってないような気がするんです。
糸井 うちの会社では、そこのところはけっこう
意識的にやっている部分があります。
理にかなった説明があったときは、逆に
「どうしてそうじゃないんだろう」
「そうするとどうダメになるか、わかった」
という説明をしようとします。
池谷 なるほど。それは重要ですね。
糸井 自分がものを買うときだって、
考え抜いてなんか買わないですから。
もっと言えば、いちばん大事な、
恋愛だってそうですよね。
筋書きで判断する人、いないですから。
池谷 ないですね(笑)。
糸井 大きな暗黒大陸みたいなものを、
心に残しておけるかどうかが
分かれ目な気がします(笑)。
そうだ、『のうだま』の次の次くらいの本で、
おふたりで、性のことぜひやってくださいよ。

ずっと前から思ってるんですが、
性については、いつか誰かに
ちゃんとやってほしいんです。
みんな幻想で、何かちがったものを前提にして
やっている気がするんですよ。
つまり、大事にしすぎているか、
さげすみすぎているか、どっちかなんですよね。
世の中の水準が高いところに
ありすぎるような気もするんですよ。
上大岡 でもわりと、若者は、
逆にもっと淡白な印象があるんですが。
糸井 それは、機会を失ったルーザーに
なりたくないからじゃないかなぁ。
上大岡 逆に、構えているんですか。
池谷 そう。ルーザーになりたくない欲求って、
いま、ものすごく強いですね。
毎日、大学で学生と接していて、
年々それを強く感じるようになっています。
例えば、最近の傾向として感じるのは、
やたらとみんながお互いに
ほめあうんですよ。
カッコいいとか、カワイイとかね。
なんでもすぐほめるんです。

よーく考えると、その欲求って、
要するに「負けたくないから」
というところから来ているんだと思います。
上大岡 ほめることで負けない、
というのがありますよね。
考えてみると変だけど。
池谷 自分が痛い思いをしたくないから、
先にほめておくんですね。
そしたら相手も、きっと、ほめてくれる。
いまでは、その光景が
当たり前になってきちゃったけど、
はじめはショックでした。
糸井 負けることで、
唯一可能性があるのが恋愛だったんですけどね。
「あの子でなければ嫌だ」という理由が
あるはずだから。
あとはもう、金で買えるものは
バイトすれば買えたりするので、
ルーザーにならないですむんだけど、
恋愛だけはだめだったはずなんです。
池谷 そういう意味では、恋愛観もずいぶんと
変わってきているのかもしれませんね。
学部全体の傾向として、
研究室内でつき合う学生って
少なくなったんじゃないかと思います。
彼氏や彼女がいる人は多いんですが、
恋愛は外でするんですよ。
それもたぶん
内部で傷つきたくないというのが
あるんでしょうね。
お互いに知らない人とつき合っていれば
負けたりはしないですからね。
上大岡 取った取られた、がないから。
なんかそういうことを
負けるっていう感覚が‥‥
そんなのいいじゃん!
池谷 近くにいる人を好きになっちゃったら
もう好きになっちゃうわけだし、っていうのが
わりとない雰囲気ですよ。
上大岡 そこまで考えちゃうんだなぁ。
糸井 それはやっぱり、
説明できるものさしで、
ジャッジしているからですよね。
これから、もっとそうなりますよ、きっと。
池谷 やはり、そうですかね‥‥。
上大岡 それは、転ぶのが嫌だから
自転車に乗らない、という考えや
先に死んじゃうのが嫌だから、
犬を飼わない、というのと
同じようなことですよね。
糸井 しかも、どっちがよりよいものを
手に入れられるか、というマニュアルは、
どんどん発達していくわけですから、
「飼うときは愛想のいい犬を」
「歩行者天国で子どもに人気の犬を」
ということが常識になるわけです。
だけど、ほんとうに自分が飼いたい犬、
好きな人、っていうのは、違うわけです。
上大岡 ほんとうに、
わかりづらくなっていきますね。
怖いな。
糸井 でも、なんだかいまの景気やら社会やらが、
逆にいいチャンスになればいいなと思います。
しまった、こけた。
泥ついちゃった。
ええい、やけになって、好きになっちゃえ!
そういうのがあるといいなぁ。
‥‥最後は
とりとめもなくなってしまいましたが(笑)、
今日はこのあたりにしましょうか。
上大岡 長い時間、ありがとうございました。
池谷 ありがとうございました。
(おしまい)
2009-04-09-THU
前へ    

『のうだま やる気の秘密』
上大岡トメ&池谷裕二 著(幻冬舎)1260円

上大岡トメさん、池谷裕二さんの共著。
池谷さんの最新の脳研究をもとに、
脳を「だま」しながら
夢を叶えるための4つのスイッチについて
トメさんがたのしい漫画と文で綴ります。
「飽きっぽい」と言われつづけ
「性格は一生なおらないの?」と
本の冒頭で白目をむく主人公(トメさん)が
案内してくれるので、
本を読むのは三日坊主、という方でも
気軽に手に取ることのできる一冊ではないかと思います。

Amazonで購入する