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「生活のたのしみ展」が終わったものだから、
「ほぼ日」のほとんど全員が「振替休日」でした。
ぼくも、ぽっかーんと空いた日というのは慣れないので、
どうしたものかと迷うかと思ったら、
自然に本を読みはじめていました。
あれこれの読みかけをすべて脇に置いて、
若い作家の小説を手に取りました。
『ゲーテはすべてを言った』(鈴木結生)です。
帯に「芥川賞候補作!」とありましたが、受賞しています。
タイトルがたまらないじゃないですか、
ゲーテといったら偉人のなかの偉人です。
いまたしかめるために検索したら「ドイツの詩人、劇作家、
小説家、自然科学者、博学者(色彩論、形態学、生物学、
地質学、汎神論)、政治家、法律とありますが、
とにかくWikipediaを読むだけでも時間がかかります。
小説は、主人公が「ゲーテ研究者」です。
もちろん、ゲーテ研究者を描くわけですから、
膨大なゲーテ研究にかかわる記述が際限もなく出てきます。
そう思うと、衒学的で感じわるいかなぁなんてね、
ちょっと思ってしまいかけたのですが、そうじゃなかった。
専門的な知識や引用やらが止めどなく続きますが、
それが「ひけらかされている」感じじゃないのです。
大図書館に紛れ込んだような知識や引用がずっと続きます。
書くのに原典や表記(スペルなども)を確認するだけでも、
大変な労力がかかるんじゃないかと心配したりしますが、
作者がそれを苦にしているように思えない。
文章を書くことをたのしんでいるように感じられるから、
慣れないことばや概念が出てきても気にならないんです。
もちろん、めんどくさいことを語ったりしてるんですよ。
でも、登場人物たちの描かれ方は、やわらかいんです。
「なにが描かれていくのか?」、理解を後回しにもながら
夢中になって読んでいるこの感じとは、
高校生のときに布団に入ってからも読み続けていた
夢野久作『ドグラ・マグラ』に似ているかもしれません。
血湧き肉躍るなんてことはないですよ。
だけど、なんとなくユーモラスで、ミステリーじみていて、
途中でやめずに7合目くらいまで読み進めています。
ぼく自身は、書くことの好きじゃない人間なのですが、
書くことをたのしんでいる人を見るのは、とても好きです。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
水木しげるさんが戦地に持っていったのもゲーテでしたよね。