当たり前のものを、いちから考え直し、
ベーシックなものを再考察・再構築しようという
「ほぼ日」内のプロジェクト「直線と曲線」がおくる
「ファーストキャップ」に続く第二弾は
「ファーストポロ」。
そう、ポロシャツです。
キャップは、かぶったことがない人や、
似合わないと思っている人にこそ、
というテーマがありましたが、ポロシャツもおなじ。
おしゃれ着にしたいのに、
なんだかスポーツウェアっぽくなっちゃうなあ、
それに、身体の線が出るから‥‥、
と思っている人にこそ着てほしい。
「直線と曲線」のメンバーには、
ポロシャツにうるさいのがそろっておりましたが、
その声を拾いあげて、機能的、かつおしゃれに、
そして「きちんと」した印象で
着られるポロシャツを、2型、つくりました。
夏に着るものですからね、機能面も考えましたよ。
(だから、インナーもつくっちゃいました!)
文=武井義明(ほぼ日)
じつは「直線と曲線」のアイテム第一号となった
「ファーストキャップ」は、
完全オリジナルのキャップをつくるべく、
ぼくらと工場をつないで、
生地やかたち、仕様や刺繍のことまで
間に入って面倒をみてくださった
スーパーバイザー的な人物がいました。
飯島奈美さんのエプロンでもおなじみのデザイナー、
児玉洋樹さんです。
児玉さんは夏、打ち合わせに来社するとき、
Tシャツかポロシャツ姿に短パンにニットキャップです。
それも、めちゃくちゃお洒落。
(ファッションデザイナーですからあたりまえ?)
ニットキャップは暑かろう、と思うんですが、
夏用のものがちゃんとあるらしい。
その児玉さんが着ているポロシャツは、
オーバーサイズで涼しげで、肩線が落ちていて、
袖つけが広く長めで肘がちょっと隠れるくらい、
「くたびれた」感じがまったくないおしゃれなタイプで、
きけばそれはご自身でデザインをしたものということ。
児玉さんは、レディースウェアから
メンズウェアまで幅広く手がけているのです。
「それをいただいたらどうか」と、
一瞬、ラクなほうに行きかけた私たちですが、
着てみてわかりました。
「今どきのデザイン」ということはよーくわかるのですが、
ぼくらがほしいものとは、ちょっとちがったのです。
あまりにもトレンド感が満載すぎた。
「じゃあ、その『ぼくらがほしいもの』を
徹底的に考えて、ゼロ出発でつくりませんか。
もちろん協力しますよ!」
と、児玉さんは力強く言いました。
話しているなかで見えてきたのは、この4項目。
① ベーシックな形、ベーシックな色。
② おしゃれ、と思われるようなデザイン。
③ 気になる体型をじょうずに隠したい。
④ 夏の暑さ対策を!
①は、そう、「直線と曲線」のコンセプトでもあります。
②は「おしゃれなつもりが、体育の先生に見えちゃう?」
という着方を解消したい。
③は、「身体の線を拾わない」ということですね。
体型がふくよかになってきた中年期以後
(これは男女とも)の声を拾いました。
男性はとくに「胸やおなかが、情けない感じになってきた」
ということや「胸のポッチが目立つのはちょっと‥‥」
ということも言っておりました。
女性からは、かわいらしく、ふわっと、
されどふっくらとは見えないようなデザインが最高、
ということです。
④は、酷暑が続くこの国で、
汗、におい、べとつきを軽減して、
快適に着られる素材を探したいということです。
わがままかもしれないんですが
「これをぜんぶ実現しよう」というのが
この企画のスタートになりました。
しかし、ひとつの型でサイズ違い、というのでは、
きっとこれを解決するのは難しい。
「ファーストキャップ」で
3つのパターンをつくったように、
ポロシャツも、複数のパターンをOKとしよう、
ということになりました。
これでおそらく
① ベーシックな形、ベーシックな色。
② おしゃれ、と思われるようなデザイン。
は解決の方向へ進むはずです。
あわせて、ポロシャツにインナーは必要か?
という話になりました。
男性のポロシャツは、基本的に肌着なしで
1枚で着られるものではあるのですが、
③ 気になる体型をじょうずに隠したい。
④ 夏の暑さ対策を!
を解決するには、肌着の助けが要る、となりました。
夏場にかいた汗が乾いて
黒っぽい生地に塩がふき出るのは
なんとしてでも避けたいところです。
「どんな肌着がいいだろうか」となって、
ぼく

は
「白いシャツをめぐる旅。」で扱った
ma.to.waのシルクの肌着が最高、と提案をしました。
しかしシルクは汗による脆化(繊維がだめになる)が
おきやすく、またこの素材が特種な
ウォッシャブルシルクということもあって、
生地づくりから縫製まで時間がかかり、
価格がとても高くなることから、
「直線と曲線」のコンセプトからは
外れるということで、諦めることに。
(ちなみにma.to.waの肌着は、いまもレディースのみ
「ほぼ日」の
「つきのみせ」で展開していますので
興味のあるかたはごらんください。)

と

は、
スポーツ系メーカーの
機能性素材のインナーを愛用していて、
とても便利だと話しました。
汗を吸い、すぐ乾くので、
外に着ているシャツがさらっとして、
身体のにおいが気になることもないのだそうです。
これなら洗濯耐久性が高いし、価格もおさえられそうです。
そんな素材を探そうか‥‥というところで、
ぐんと身を乗り出したのが児玉さんでした。
なにしろ「素材オタク」を自認する、
機能性素材に詳しいひとです。
ご自身がやっているレディースブランドでも、
肌離れのよさや吸湿速乾や抗菌防臭機能など、
機能性重視の姿勢が受け入れられています。
現代の素材ってすごいんだよということを
よく知っている方なのですね。
そんな児玉さんが、
ぼくらの話をじっくり聞いて言いました。
「だったら──、理想の素材、つくっちゃいませんか?」
えっ? そんなことができるの?
「そんなに難しいことじゃないんです。
生地見本というものがあるので、
まずは基本の素材の糸の種類、
織りによる肌触りや軽さを決めます。
そこにどんな機能を追加したいか教えてもらえれば、
できあがった生地に加工をすればいいんです。
みなさんがほしい機能というのは、
・吸湿(汗を吸う)
・速乾
・抗菌
・防臭
ですよね。それなら難しくありませんよ!」
そして後日、児玉さんが厳選した
ポロシャツとインナーのサンプル生地から、
みんなで「これぞ!」というものを選ぶ作業をしました。
「触ってみて、これがいいと思うかどうか」
が選択のポイント。
結果、できあがったのは、こんな素材でした。
[ポロシャツの生地はポリエステルの鹿の子で]
一般的には綿でつくられる「鹿の子」(かのこ)。
ポロシャツといえばこの織り方、とも言える生地を、
ポリエステルの糸で再現し、
吸湿速乾・抗菌防臭加工をほどこしました。
名付けて「ハイレゾ鹿の子」。
ポリエステルを選んだ理由は、
速乾性にすぐれるという機能の高さゆえ。
真夏の炎天下で3時間ほどポロシャツを着たら、
汗をかいて、汗染みができ、その日1日乾かない‥‥
なんていうこともありません。
ちなみにポリエステル100%は
圧倒的に型くずれが少ないのもいいところです。
[インナーの生地はメッシュとリブの2種類で]
できるだけ軽やかにしたい人と、
体型をしっかりカバーしたい人とで、
理想とする生地は違うだろうと考え、
ふたつの生地をつくりました。
ひとつは、
光沢感があり滑らかで、重ねたポロとのすべりがよく、
薄手のポリエステル製メッシュ。
これはポロシャツの下にインナーを着ていることが
外からはわからないくらいの感覚です。
ここに吸湿速乾・抗菌防臭加工をほどこすことで、
いわゆるスポーツ系のインナーの素材に近い印象に。
名前を「SUPER LC MESH」。
暑がりを自認するひとに向いています。
もうひとつはやや厚みのあるポリエステル製リブ。
アウターにも使えそうな印象のしっかりした素材で、
リブ編みの個性として補整力が強いので、
身体の凹凸を感じさせず、気になる体型をカバーします。
こちらにも吸湿速乾・抗菌防臭加工をほどこし、
「SUPER LC RIB」という名前をつけました。
こちらは体型補整を考えたい人向けの素材です。
(つづきます)
2025-07-16-WED