世の中には二種類の人間がいる。
帽子をしょっちゅうかぶる人と、
帽子をあんまりかぶらない人である。
あきらかに前者である書き手が、
後者の読み手へと理想のキャップを
紹介していく長く酔狂な物語。
しかし、その論はとても現実的で、
意外な展開で読み手を翻弄し、
現実的なデータに帰結するという。
さあ、はじまり、はじまり。
ショートケーキにイチゴがなければ、
どれだけスポンジとクリームがおいしくても
ちょっとさびしいように、
私たちがつくったキャップにも、
なにかひとつ魅力的なアクセントがほしい。
いったいそれを誰に頼めばいいだろう?
「最高のイチゴ」をもたらしてくれるのは
誰だろう?
私たちは、まず、
この人が描いてくれたら最高だなあという人に、
正面からお願いしてみることにした。
当たって砕けろとはこのことである。
いや、砕けないでほしいけど。
ぜひ、とお願いしたのは、
画家のヒグチユウコさんである。
いまや世界中で作品が愛され、
絵画作品はもちろん、
絵本や映画のオリジナルポスター、
コンビニのスイーツのコラボレーションまで、
さまざまな分野で独自の世界を展開し、
GUCCIとのコラボレーションも話題になった、
唯一無二の美しい絵を生み出す人。
そんなヒグチさんからOKが出たとき、
そりゃもうチームは盛り上がった。
そして、ある日、ついに届いたのです。
すばらしくかわいいやつが!ここは、あれこれいわず、紹介しましょう。
こんなコが届いたんですよ。
うわあ。
いやぁ、いいなぁ。
たまらないな。
このコ、うちのコなんですよ、いいでしょう?
愛嬌があって、ユニークで、かわいい。
まだとくに名前はつけていないんだけれど、
このコたち、片方が「L」のかたちをしていて、
もう一方が「C」のかたちをしています。
これは、ファーストキャップを出すブランドを
「直線と曲線」という名前にしたから。
‥‥あ、はじめて言いましたけど、
「直線と曲線」がブランド名なんです。
どうぞよろしくお願いします。
で、直線は「Line」、曲線は「Curve」でしょ?
それで「L&C」という英文字を、
ヒグチユウコさんが描くときの
モチーフにしてもらったんです。
このたいへん魅力的な「L&C」を、
ファーストキャップのうしろに、
刺繍であしらうと‥‥こんな感じです。
前から見ても、横から見ても、
無地でシンプルでミニマムなのに、
うしろから見ると、
「なんかかわいいコがついてる!」そういうギャップって、いいですよね。
ちなみに、ヒグチユウコさんの絵は
とても繊細だったため、
刺繍で再現するのに技術が必要でした。
おそらく、仕上がるものにも個体差があって、
ひとつひとつ微妙に違うコになってると思います。
そこも個性と受け止めてかわいがってほしいです。
もう、これで、いいんじゃないか。
完璧なキャップなんて存在しないけれど、
かなり、思い描いていたものに近づけた。
そんなにふうに製作チームが
静かに手応えを感じていたときのこと。
チームのひとりが発した何気ないことばが、
さらなる「イチゴ」を増やすことになった。
なにかのミーティングのときに、
こんな意見が出たんですよ。
「キャップって、外出中に脱いだとき、
どこにどう持っていればいいか
わからないんだよね。
みんなどうしてるの? 手に持ってる?」
言われてみると、脱いだときに、
キャップをどうしているかは人によってそれぞれで、
そこになにか解決策があったほうがいいように思えました。
とくに、キャップに慣れてない人ほど、
ちょくちょく脱いだりするし、
脱いだキャップを持て余していたりする。
そこで、こういうものをつくりました。
「キャップホルダー」です。
当初、このキャップホルダーは
別売りにしようと思っていたのですが、
記念すべきファーストキャップのデビューなので、
今回は、キャップの購入特典として、
ひとつのキャップにキャップホルダーを1個、
もれなくつけることにしました。
(キャップホルダーのみの個別購入も可能です)
さあ、これでいよいよ、完成です。これまでたっぷり語ってきたように、
けっこういいものができたと、自負しています。
きっと、ふだんキャップをかぶらない人にも、
愛用してもらえるものができたんじゃないかな。
これをみなさまにお届けできる日が、
とてもたのしみです! それでは!
‥‥というところで、終わりにしちゃうと、
おさまりがいいということは
わかってはいるのですが。
発売の前に、知りたくなったのです。
つくったキャップが、課題をクリアーしているか。
いってみれば、答え合わせしたくなった。
ふだんキャップをあまりかぶらない人たち、
自分はキャップが似合わないと思っている人たちが、
実際にこのキャップを前にして、
どういう反応をするのか?
その、素直な反応を見てみたい。
それも、ひとりじゃなく、大勢に。
私たちの身近には、
いいものは「いい!」と素直に言い、
いまいちのものには
サッとテンションを下げる、
とても正直な人たちがいます。
そう、ほぼ日の乗組員たちです。次回、「キャップは誰にでも似合う物語」最終回。
約40人の乗組員たちに、
キャップをかぶってもらいましたよー。
(次回、最終回です)
2025-05-13-TUE