キャップは誰にでも似合う物語 キャップは誰にでも似合う物語
世の中には二種類の人間がいる。
帽子をしょっちゅうかぶる人と、
帽子をあんまりかぶらない人である。

あきらかに前者である書き手が、
後者の読み手へと理想のキャップを
紹介していく長く酔狂な物語。

しかし、その論はとても現実的で、
意外な展開で読み手を翻弄し、
現実的なデータに帰結するという。

さあ、はじまり、はじまり。
第10章 乗組員たち
ほぼ日の乗組員というのは、
消費者としてとても正直である。




ひとりひとりのその正直さは、
会社の生命線であるともいえるから、
常日頃から、いいものは「いい!」と言い、
いまひとつのものからは、サッと遠ざかる。



そこにはある種の厳しさがあると言っていい。
ぴんと張り詰めたその個人的な厳しさを、
私たちは互いに尊重する。



ふわっとしたイメージで、ほぼ日という会社は、
「仲がよさそうでいいですねぇ」などと言われる。
たしかに、仲は悪くない。
けれども、ここは厳しい場所だとぼくは思っている。
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たとえば想像してほしい。



あなたが連休を利用してとある温泉宿に行った。
気分よく過ごして帰り際になにか職場におみやげでもと思い、
ちょっとしたネタになりそうな
ダジャレまじりの名前がついた
ユニークなお菓子をひと箱買った。



で、連休明け、それを
「◯◯温泉のおみやげです」みたいなメモ書きとともに、
3階のキッチン前のカウンターに置いておく。
あなたのほかにも連休を旅先で過ごした乗組員たちがいて、
それぞれにいろんなおみやげを同じ場所に置いている。
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たくさんのおみやげがずらりと並んだカウンター。
のんびりとした平和な風景だ。
しかし。
数時間も経てばあなたは戦慄を覚えるだろう。
そのシビアさに。そのリアリティに。その正直さに。



並んだおみやげのお菓子の箱は、
おいしいものから減っていく。
老舗の名作お菓子が、なくなっていく。
由緒あるお店の新作のお菓子が、なくなっていく。
余計なものの入ってない素朴なお菓子が、なくなっていく。
いつもおいしいものを買ってくる
あの人からのおみやげのお菓子が、なくなっていく。



じゃあ、わたしの選んだおもしろお菓子は?
──ずっと減らずにそこにある。
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ひゃぁああ。どうです、厳しいでしょう?



そういう、厳しい消費者の集団、ほぼ日乗組員たち。
彼らに「ファーストキャップ」をかぶってもらうことにした。
みなに呼びかけた内容はシンプルだ。



「あたらしいキャップをつくりました。
種類は2色。かたちは3タイプ。
この6つのキャップのなかから、
自分に似合うものを選んでください」



消費者としては厳しいが、
「協力してください」と言うと、
ちゃんと協力してくれるのが
うちの乗組員のいいところである。
ここで、ファーストキャップの
ラインナップをおさらいしておこう。
色は、「キャメル」
「チャコールグレー」の2色。
それぞれの色に、かたちが3種類あります。
おでこのところに硬い布がつかわれている
「STANDARD PLUS
(スタンダードプラス)」

全体に柔らかく頭のかたちに沿う
「TIGHT(タイト)」
そのタイトモデルをすこし深めにした、
「TIGHT DEEP(タイトディープ)」
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これら6つのキャップをカメラの前に並べて待っていると、
好奇心旺盛な乗組員たちが、つぎつぎにやってきた。
帽子大好き、キャップも好き、という人もいるが、
半分くらいの乗組員はこんなふうに言う。



「キャップ、似合わないんだよねぇ」
「無理なんですよ、キャップ」
「たぶん、どれも似合わないと思う」
「いや、一個も持ってないです」



さあ、そういう人たちがどういう反応を示したのか。
実際、こうでした。結果をご覧ください。
総勢約40名の反応を15分にまとめたものです。
いやあ、おもしろかった‥‥!
キャップが受け入れられたのはもちろん、
みんながキャップを試しながら
たのしそうだったのがよかったよ。



あ、動画のフルバージョンもあるので、
自分のキャップ選びの参考にしたい方はぜひどうぞ。
とても長いのですが、飛ばしながらでもおもしろいですよ。
そんなわけで、集まってくれた乗組員全員が、
じぶんの「ファーストキャップ」を選んだ。
そして、実際、とてもうれしいことに、
キャップは、ひとりひとりに
よく似合っていた。




もうひとつ報告させてほしい。
気になっていたのは、
それぞれの乗組員が選んだキャップが、
どういう割合になるだろう、ということだった。



だって、たとえば、2色のうちの
どちらかに極端に偏ったりしたら、
その選択肢を用意した意味がなくなってしまう。
3種類のタイプが必要だと思ってつくったけど、
みんなの選択がどれか1種類に集中したら、
バリエーションいらないんじゃない?
てなことになってしまう。
約40人が選んだ結果を、お伝えします。
こんな感じでした。
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つまり、ファーストキャップは、
どうやら、つくった意味があった。
大団円のようなグラフを見ながら、
ぼくは、たしかな手応えと安堵を感じた。



きっと、このぶんなら、
あのヤバいほど暑い夏がやってくるころ、
ほぼ日の職場にはファーストキャップを
かぶってくる人がたくさんいるはずだ。



それはなんだか、とてもうれしいことだなあ。
そして、消費者の代表である、
乗組員たちがしっかり選んだということは、
日本中にこのファーストキャップが
広がっていくということだと思う。



わあ、キャップ好きとして、帽子好きとして、
それはめちゃめちゃうれしいことだ。



序章、なんて大げさにはじめてからここまで、
ものすごく長くなってすみません。



こういうふうに、
ほぼ日は、ものをつくっています。
ファーストキャップ、5月16日発売です。
( お し ま い )
2025-05-14-WED