


尾瀬に行ったことがありますか?
群馬県、福島県、新潟県、栃木県にまたがる尾瀬。
2000m級の山々に囲まれた湿原地域には、
世界的にみても貴重な自然環境と生態系が残り、
国立公園に指定されています。
なんといってもその魅力は、圧倒的な風景!
かんたんに行ける場所ではありませんから、
「知っているけど行ったことはない」
という方が多いのではないでしょうか。

尾瀬に興味がありますか?
尾瀬に行ってみませんか?
そして──ここが独特なところですが──
尾瀬で、はたらいてみませんか?
尾瀬と、ほぼ日は、しっかり関わっていきます。
たぶんこれは、何年も続く取り組みです。
「知ることと、行くことと、はたらくこと」は、
意外に近い場所にあることを私たちは知ってます。
「尾瀬とほぼ日」、はじまります。
「なぜ尾瀬?」を知りたい人は
こちらもお読みください。




尾瀬を代表する伝統的な山小屋、
「長蔵小屋」さんとの出会いが、
ほぼ日と尾瀬の関わりのはじまりでした。
国立公園に指定された尾瀬は、
自然環境が厚く保護されていて、
新しい宿泊施設などを自由に建設することができません。
尾瀬を訪れる人は、古くからそこにある
山小屋(宿泊施設)を利用することになります。
長蔵小屋さんは、明治23年に尾瀬につくられ、
現在まで130年、四代に渡って受け継がれている山小屋で、
尾瀬を訪れる多くの人に愛されています。
そんな長蔵小屋さんを、近年、悩ませているのが、
コロナ禍から続く、働き手の不足でした。
世界中を襲った新型コロナウィルスは、
多くの人を家に閉じ込め、
旅行業界、観光業界は大きな打撃を受けました。
しかし、その影響はしだいに薄まり、
人々はまた旅に出るようになりました。
尾瀬にも、以前と同じように、人が戻り始めました。
しかし、一旦閉めた施設や、離れた働き手は、
簡単には復帰することができませんでした。
そもそも、尾瀬だけでなく、辺境にある多くの観光地は、
高齢化、過疎化によって、慢性的な人不足にあります。
とりわけ国立公園として保護されている尾瀬には、
近代的な交通網も整っておらず、
新しいビルが立ち並ぶということもありません。
最近はオーバーツーリズムということばが広く知られるように、
特定の観光地に旅行客が集中する傾向がありますが、
遠く、そこ行くだけで丸一日歩くことになる尾瀬は、
生半可なブームなどとは無縁の地なのです。
と、書くと、尾瀬は、
寂れた場所のように思えるでしょうか?
でもね。でもね、みなさん。
尾瀬を訪れた私たちは、びっくりしたのです。
その風景に。その場所のちからに。
写真では、とても伝わりきらないのですが、
ちょっと、現地へ入ったときの
ほぼ日乗組員の写真とメモを紹介しますね。
晴れの日もあれば、雨も、曇りもありますが‥‥。
ああ、ぜひ、尾瀬を見てもらいたい。
また、ほぼ日の尾瀬チームには、
ほぼ日に入るまえから頻繁に尾瀬を訪れている、
やすながいます。
現在も山や自然にまつわるさまざまな活動を
ライフワークのように続けています。
尾瀬の魅力をよく知る彼女に、
過去に撮影した写真とともに
尾瀬の魅力をじっくり語ってもらいました。
こちらもぜひご覧ください。
尾瀬という場所を、
私たちは、たくさんの人に見てほしい。
きちんと知って、しっかり準備して、来てほしい。
あの、圧倒的な風景を、体験してほしい。
そんなふうに思っています。
そして、もうひとつの大切な目的は、
尾瀬で、長蔵小屋で、はたらく人を募ることです。
長蔵小屋のご主人は、四代目の平野太郎さん。
奥様の洋美さんといっしょに、
別館や売店など複数の建物で構成される
尾瀬の長蔵小屋を切り盛りされています。
130年続いてきた伝統的な山小屋の運営を、
一度はあきらめかけた平野さん。
私たちは、尾瀬で、東京で、
平野さんと何度も話をしました。
尾瀬が、長蔵小屋が、どうなればいいのか。
ほぼ日にできることは、なんなのか。
そしてたどりついた私たちの結論が、
尾瀬を知ってもらうこと、
尾瀬に来てもらうこと、
そして、尾瀬ではたらいてもらうことを、
ひとつのメッセージとして伝えようということでした。
平野さんは、長蔵小屋ではたらくことについて、
こんなふうに語っています。

-
太郎さん
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働くことと暮らすことが一体のような、
皆で”同じ釜の飯を食らう”生活です。
自然の大きさ、四季の変化を感じられる場所で、
街のようにネット環境や
インフラは整っていませんが、
そのストレスは小さなものと
思えるようになります。いまはシーズン始めにむけて準備を進めていますが、
今年は大雪の影響の停電で
除雪作業が十分できませんでした。
毎年毎年、立ち上げまでは、
ほんとうにお客様を迎え入れることが
できるのかなと思います。
でも、仕事自体に複雑なことはなく、
問題を一つひとつほどいていく。
やる気さえあれば誰でもできる、
シンプルなことを積み重ねていく、そんな仕事です。 -
洋美さん
-
毎日ちょっとした事件があって、大笑いして。
できることは限られますが、
大きな流れのなかでできることを
精一杯したら、たいがいは
うまくいくよねという感じです。
通りすがりの登山者とあそこに花が咲いてますよと
言いあったり、初対面の方と何気ない会話をしたり。
そんななかで人との垣根が低くなって、
お客さまに尾瀬をたのしんでもらいたい、
いい仕事をしていきたい、と思える。
ちょっとしたことが相手に伝わって、
その反応が返ってくる。そんな循環があるから、
続けていけます。小屋でいっしょに働いているのは、
ホームページの「求人のご案内」に載せている、
2代目、長英さんが「山と溪谷」に寄稿した言葉や、
長蔵小屋のこれまでの歴史に共感して
集まってきてくださった方たちです。
でも、普段の業務のなかで、
理念を声高に語り合うようなことはないんです。
みなさん自然にそれをやってくださっています。 -
太郎さん
-
主体は小屋ではなく、尾瀬の自然だと思っています。
なにより、自然の恵みを享受してほしい。
そのための媒体が、長蔵小屋です。
長蔵さんも2代目の長英も、
さまざまな短歌や言葉をのこしていますが、
具体的なことは多く語っていません。すばらしい自然環境で暮らせる喜びを感じながら、
各自が、自分なりに考えて、
自分なりに受け止めてほしい。
生活なり労働なりを自分の糧にして、成長してほしい。
そして学び合おう。自分もひとつの自然である。そんなことを我々も思っています。
尾瀬にたくさんの観光客が押し寄せる
オーバーユースの時代を経て、
いまはずいぶんおだやかになりました。
働いているスタッフは、長く居てくださるひとも
新しく来るひとも、フラットな人柄の方が
ほとんどです。
小屋の設備は、お客様が300人、
従業員が30人いたころの設計になっているので、
1/3ぐらいになったいま、比較的余裕があります。
水は豊富にある環境で、
排水は浄化槽で処理していますし、電気も使えます。 -
洋美さん
-
とはいえ、シンプルな生活なので、
都会でものがあふれた場所で生活しているひとには、
ぜひ体験してもらいたいです。
これで生きていける、と思えたときの自由さは
すばらしいものです(笑)。
仕事は体力が特別必要というわけではないですが、
館内を動いて食事や掃除をするなかで、
体が健康になった、シニアの方は薬を減らせた、
なんて話も聞きます。ここ数年は、売店や休憩所にまで
手がまわりませんでしたが、
人が増えたら叶えたいアイデアはいっぱいあります!
これまでも、業務のなかのなにげない会話から、
商品が生まれてきました。
尾瀬のマップ、オリジナルのバンダナ、
手ぬぐいなどにも従業員の作品があります。
館内の張り紙ひとつとっても、
情報をただ載せるだけで十分なのに、
凝って作るのもおもしろいです。
従業員には、きっちりお仕事はしながらも、
自分で遊びを見つけて、
楽しんでほしいなと思っています。
尾瀬ではたらく──。
すごく興味がある、と思ってくださった方。
いつか挑戦してみたい、と感じた方。
いますぐ応募したい、とテンションが上がった方。
とにかく一度行ってみたい、とわくわくした方。
まだあんまりピンと来てない方。
きっと、いろんな反応があるかと思います。
でも、おそらく、いままで
あまり考えてなかった「尾瀬」という場所に、
あるいは「尾瀬とほぼ日」が
あたらしい取り組みをはじめるということに、
興味をもってくださった方も
多いのではないでしょうか。
私たちは、そんなみなさんに、
尾瀬に関する情報を、
定期的にお届けしたいなと思っています。
今後、ひょっとしたら、希望者を募って、
ほぼ日の尾瀬ツアーを組むかもしれません。
長蔵小屋に合宿のように泊まり、
短期的にお手伝いするプランを立てるかもしれません。
長蔵小屋で売る新しいおみやげの
アイディアを募集するかもしれません。
今日、この紹介記事を読んで、
尾瀬にすこしでも興味を持ってくださったみなさん。
ぜひ、私たちが新しく立ち上げるグループに
メールアドレスをご登録ください。
グループの名前は、こんなふうにしました。

これからの尾瀬での活動や計画は、
ほぼ日でもお伝えしていくと思いますが、
ひょっとしたら、更新に
気づかないこともあるかもしれません。
この「ほぼ日 尾瀬の会」に登録していただくのが、
いちばん確実かと思います。
はたらくこと、遊びにいくこと、
いつか行ってみたいと思うこと。
そういうバリエーションをぜんぶ含む
「ほぼ日 尾瀬の会」をはじめます。

つぎのページで、
尾瀬のことや長蔵小屋のことなどを、
より詳しくお伝えいたします。
イラスト・題字 | オカタオカ
目の前に広がる大きな景色を前に、素直に思いました。
日常から離れると言っても、
ここまでの非日常はなかなか味わえないです。
驚いたのは、東京に戻ってから数日後。
疲れがどっと出るのかと思いきや、
尾瀬の景色を思い出し、
むしろ行く前より元気になりました。