糸井重里
・はじめからヤヴァいことを言ってみます。
これを読んでいる皆さま、ぼくは、
ここであなたにほんとうのことをすべて言ってません。
あえて嘘をついているということは、ありません。
たぶん、ほとんど嘘はついてないとは思います。
でも、すべて正直に書いたりもしていないのです。
だって、どれほど信用しているといっても、
こちらから読んでいる人のことは見えないわけで、
ぼくのことを悪く思っている人もいれば、
陥れてやろうと考えている人がいてもおかしくはないし、
不用意にぼくが言ったことで傷つく人もいるかもしれない。
毎日なんとか書いているのは、ある程度、
ここらへんまでのことなら言っても大丈夫かなと、
見当をつけたことだけを文字にしているからです。
政治家の方々が、デリケートな問題について語るとき、
「大丈夫の範囲」を真剣に考えているのと同じです。
ふつうの人も、それなりに「大丈夫の範囲」があります。
しかし、ひとりで頭のなかだけで考えていることは、
ある意味、考え放題の言い放題です、黙っているけど。
そして、ごく親しい人2人とか3人とかで話すことは、
それなりに言っても大丈夫なことは多いでしょう。
100人には言えないけど、3人には言えることはあります。
さらに、この2人には言えるけど、
この2人には言えないということもあると思います。
すべて、「関係と距離」の問題です。
その「関係と距離」をまちがったり、
無理やりに変えさせられると、ものごとは壊れます。
プライバシーの侵害だとかも、この問題から起こります。
インターネットが発達しすぎた時代には、
近い関係や近い距離の話も、巨大な壁新聞のような
公衆のメディアに乗りやすくなっています。
それについては、だれでもが注意せざるを得ないのです。
ただ、ひとりの頭で考えることだけは、じゃまされません。
変なことを、好きなこと、どんどん思ったほうがいいです。
そうしないと、人間がAIの模造品みたいになっちゃうから。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「毒舌」という芸風も「関係と距離」の管理で成立してます。