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| 福田さん‥‥。 |
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| 山下さん‥‥。 |
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| ‥‥名前を呼び合うというのは、 あらためて、いいものですね、福田さん。 |
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| 山下さん。 |
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| ぼくらはいま、 気仙沼市の象徴ともいわれる、 安波山(あんばさん)の上の方に立っています。 |
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| ちょっと道に迷いましたが着きました。 |
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| 道路がすこし凍ってましたが、 たどり着きました。 で、 うわさ通りの‥‥ |
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| 寒さです。 |
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| (ガタガタガタガタガタガタ) |
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| (ガクガクガタブルガクガク) |
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| 北風は強く冷たく、 雪もちらちら舞ってはいますが‥‥。 |
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| ‥‥はい。 |
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| それを忘れてしまうくらい‥‥ |
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| ‥‥ええ‥‥。 |
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| すばらしい眺めです。 |
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| ほんとに‥‥。 |
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| ね‥‥‥。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| ‥‥‥‥‥ふしぎなものですね、福田さん。 |
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| なにがですか? |
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| こうしてふたりで、ここに立っていることが。 |
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| そうですね‥‥ でもほら、山下さん、 昔もふたりで、ほら、 いろんな土地に出かけて、ね、 コーヒーを淹れて飲んだじゃないですか。 |
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| ああー、そうでした、やってました。 『ここで飲んでもいいですか?』ですね。 |
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| そう、 『ここで飲んでもいいですか?』 あれはたのしかったぁ。 ※『ここで飲んでもいいですか?』は、6年ほど前に、 RE:sという雑誌で連載していた福田さんと山下のコーナーです。 いろいろな場所でコーヒーを淹れて飲む、それだけの記事でした。 |
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| ぼくね、福田さん、 あのコーナーのリードの文章を、 いまでもそらんじて言うことができるんです。 |
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| ほんまですか、覚えてるんですか。 |
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| いきます‥‥。 ウインナコーヒーのホイップクリームのように、 景色とか、その場で感じる空気みたいなものを コーヒーにトッピングしてみたいと思いました。 いろんなところで飲んできます。 男ふたりで。 豆とドリッパーとマグカップを抱えて。 |
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| おおー(ぺちゃぺちゃぺちゃ←拍手の音)。 |
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| きょうのこれは、ひさしぶりの、 「ここで飲んでもいいですか?」ですかね。 |
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| 「気仙沼で飲んでもいいですか?」です。 |
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| よし、じゃあ、準備をしましょう。 |
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| しましょう。 どんどんからだも冷えてきたし。 |
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| はやくしないと福田さんの皿が凍る。 どこで淹れましょう(ガタガタガタ)。 |
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| そこの階段はどうでしょう(ガクガクガクガク)。 |
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| あ、いいですね、 ではそこへ移動しましょう(ガタガタガタ)。 |
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| ううーー(ガクガクブルブルガクガク)。 |
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| まずは豆を挽かないと‥‥。 |
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| やっちさんのお店で買ったマンデリンを、 このパッケージに入れておきました。 |
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| やりますね、福田さん。 |
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| これをミルに移して、と‥‥。 |
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| こぼさないでくださいよー。 |
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| はい‥‥。 よいしょ、よいしょ‥‥。 |
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| ‥‥‥‥福田さん。 |
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| はい?(豆をミルに慎重に移している) |
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| ‥‥ぼくいま、なんかすごく幸せなきもちです。 |
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| なんですか急に(豆を移しながら笑っている)。 |
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| なんでだろう(笑)。 |
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| なんででしょう。 でも、たのしいですね(豆を入れ)。 |
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| うん。 寒いけど。 |
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| 寒いけど(笑)。 ‥‥よし、じゃあ、挽きます。 |
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| あ、福田さん、 せっかくなので立ち上がって挽きましょうよ。 気仙沼を背景に。 |
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| そうですね、よっこいしょ(立つ)。 |
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| 立つと、ちょっと‥‥ハンドルを回しにくいです。 (ガリゴリガリゴリ) |
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| それとそう、これを、この旗をせっかくだから。 |
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| え? それをどないするんです? |
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| ミルのハンドルにくっつけてください。 |
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| ‥‥かなり、回しにくくなりますよ? |
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| でもだって‥‥これはせっかく、 せっかくうちの山川みっちゃんがデザインして、 ぐっさんがつくってくれた旗だから‥‥。 |
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| わかりました。 |
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| やった。 TRIP TO DRIP! |
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| よ‥‥これはまた‥‥なんとも‥‥ (ガリ、ゴリ、ガリゴリッ) |
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| ここまで回すと、どうしても旗がひっかかって、 これ以上回せなくなくなるから‥‥ |
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| いったんハンドルから手をはなして‥‥ |
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| こっちから、ハンドルをつかみ‥‥ |
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| そいでから回せば‥‥お、うまくいった。 (ガリゴリガリゴリ) |
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| あ、落ちてもうた。 |
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| ああ。 |
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| すんません、努力したんですが。 |
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| わかった、じゃあ、 こっちのドリッパーに旗をつけましょう。 ‥‥こうして(つける)。 ね? |
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| はい。 (ガリゴリガリゴリ) いいと思います。 (ガリゴリガリゴリ) 風が強いので、それだけ気をつければ。 (ガリゴリガリゴリ、カラカラカラカラカラ‥‥) |
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| お、挽けましたね、豆が。 |
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| 挽けました。 |
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| ドリッパーに移しましょう。 |
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| 北風に豆が飛ばされないように。 |
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| 北風に豆が飛ばされないように。 |
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| ‥‥よし、移しました。 |
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| 魔法瓶のお湯を、ポットに。 |
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| ‥‥セット完了。 では福田さん、 気仙沼の空気を全身で感じながら、 淹れてください。 |
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| わかりました。 (ポットを構える)‥‥‥うーん。 |
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| どうしました? |
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| ごめんなさい、 この旗があると、ちょっと淹れにくくて‥‥。 |
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| ‥‥わかりました。 残念ですが、旗をはずします。 (はずす)‥‥どうぞ。 |
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| ‥‥では、淹れます。 |
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| ‥‥‥(福田さんがいつになく集中している)。 |
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| ‥‥‥‥(集中して淹れている)。 |
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| 福田さん、ナイスドリップ! |
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| ありがとうございます。 |
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| 気仙沼の空気がコーヒーの中に 溶け込んでいるように見えます。 |
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| ‥‥寒くて手が震えるんですけど、 でも、ふしぎとこころは静かです。 |
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| ええ、見ていてわかります。 そそがれるお湯に、ブレがありません。 |
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| ありがとうございます。 |
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| コーヒーは淹れはじめにいちばん集中が必要です。 |
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| そうです。 |
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| ここまで淹れれば、もう安定期。 ということで、もう一回旗をつけます。 |
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| ‥‥山下さんは旗が好きですね。 |
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| だって、なかまがせっかくつくってくれたから。 ‥‥ああ、ほんとに風が強いですね。 旗を手でおさえてないと‥‥。 |
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| 手をはなすとこうなります。 |
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| 山下さんが旗で遊んでいるうちに‥‥ はい、できました。 |
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| できた‥‥。 |
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| できました。 |
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| 気仙沼を一望できる場所で淹れた、 「気仙沼コーヒー」。 |
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| そうです。 |
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| もっと、気仙沼をトッピングしましょう。 気仙沼の、空気を、光を。 |
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| きれいやなぁ‥‥。 |
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| じゃあ福田さん、 久しぶりに、あのセリフをいっしょに。 |
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| あのセリフを。 |
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| はい。 ‥‥‥‥気仙沼に、おたずねしまーす。 せえのぉ‥‥ |
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| ここで飲んでもいいですかーーーー。 |
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| ‥‥たぶん、OKのお返事をいただけたかと。 |
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| そうだと思います。 |
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| じゃあ、いただきましょう‥‥あ。 |
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| ん? |
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| マグカップを忘れた。 |
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| でた、恒例の忘れ物(笑)。 |
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| じゃあもう、 このまま、サーバーから飲みます。 |
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| ‥‥どうです? |
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| ‥‥うん、あのね、 アイスコーヒーになってる(笑)。 |
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| ふぉふぉふぉふぉ。 |
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| でもおいしい、おいしいよ。 こんなにおいしいものはないよ。 さあ、福田さんも。 |
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| ありがとうございます。 ‥‥山下さんが口をつけたのはここですか? |
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| そうです。 間接キッスにならないよう気をつけてください。 ぼくは取っ手を右手で持って飲みました。 なので福田さんは取っ手を左手で持って飲めば、 自動的に大丈夫です。 |
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| それでは、いただきます‥‥。 |
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| ‥‥どう? |
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| アイスコーヒー(笑)。 |
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| ね(笑)。 |
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| でも、おいしいです。 |
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| ね! |
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| こんなにおいしいコーヒーは、 なかったかもしれない。 |
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| 気仙沼の水と空気と太陽と、 ここで出会ったひとたちのことと、 そんで、なんというか、 きょうのぼくたちのきもちと、 そういうのがぜんぶこのコーヒーに トッピングされてるんですよね。 |
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| かっこいいことを言いましたね。 |
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| はい、もう、 きょうはこの景色の前で、素直に。 |
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| いいと思います。 |
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| ‥‥‥‥(笑顔)。 |
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| ‥‥‥‥(笑顔)。 |
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| ‥‥‥‥座りましょうか。 |
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| 座りましょう。 |
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| ‥‥寒いですねぇ。 |
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| 寒いです。 |
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| ‥‥飲みますか。 |
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| あ、すみません。 |
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| 左手で取っ手を持ってくださいね。 |
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| はい。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| ‥‥だいぶ陽もかたむいてきました。 |
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| 着いたときより、寒いです。 |
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| ‥‥ぼちぼち帰らないと、ですね。 |
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| ‥‥そうですね、ぼちぼち。 |
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| ‥‥ひとつ福田さんに、 聞いておきたいことがありました。 |
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| 何ですか? |
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| 「気仙沼」という名前を聞いたとき、 やっぱり福田さんは、 ピクンと反応したのでしょうか? |
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| ピクンと? まぁ‥‥うれしかったですけど。 |
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| やっぱり、うれしい! |
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| 妙な質問ですね。 |
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| 「沼」だから、気仙「沼」だから。 やっぱりカッパは沼がうれしい! |
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| ‥‥‥‥。 |
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| カッパと沼。 |
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| ここまできて、この雰囲気で、 わざわざカッパの話に‥‥。 |
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| それはぼくの使命です。 |
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| ‥‥‥でも、そうですね、 「気仙の沼」に来ることができて、うれしいです。 |
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| ‥‥すみません、ありがとうございます。 いつもふざけてごめんなさい。 |
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| いえいえ、慣れました(笑)。 |
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| ‥‥寒いですねぇ。 |
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| ‥‥寒い。 |
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| ‥‥もうすこしだけいて、帰りましょう。 |
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| そうですね、もうすこし。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| ‥‥‥‥。 |
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| (もうすこしだけここにいて、 ふたりは東京に帰りました。 ブレンド完成のおしらせが届く、 あしたの更新につづきます) |
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