| 糸井 | 
								
先生が、いまの味の素の研究所に 
									
お入りになったのは 
									
どういうきっかけだったんですか? 
									 
									
もともとアミノ酸の研究を 
									
されていたわけじゃなかったのに‥‥。 
									 
									  | 
							
							
								| 高橋 | 
								東京大学の牧場があるんですよ。 
									
茨城県の岩間というところに。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								牧場、ですか。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								馬とか牛、羊、ヤギ‥‥いろんな動物がいるんです。 
									 
									
で、そういった家畜に 
									
エサとしてアミノ酸を与えたらどうかって、 
									
味の素の人が、やって来たんですね、ある日。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								それはつまり、売り込みですね。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								ええ、でもアミノ酸なんて値段が高いし、 
									
コスト的に難しい。 
									 
									
そこで、「唯一、食べるのは競走馬ですね」って、 
									
お答えしたんです。 
									 
									
優秀な種馬は、僕らなんかよりも 
									
ぜんぜん高いもの食べてますからね、間違いなく。 
									 
									  | 
							
							
								| 糸井 | 
								ええ、ええ。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								馬というのはおもしろい動物でね、 
									
バクテリアがつくってくれたアミノ酸を 
									
排泄物として、捨てちゃうんですよ。 
									 
									
常に欠乏的状態にさらされているから、 
									
必須アミノ酸のミクスチャーを競走馬に食べさせれば 
									
きっといいだろうって、言ったわけです。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								ええ、ええ。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								そしたら、そしたらその人、話に乗ってくれて。 
									
本当にそういうエサを作ってくれたんです。 
									
そこで、東大牧場の馬に食べさせてみた。 
									 
									
‥‥そいつ、大井競馬で5勝しちゃったんですよ。 
									 
									
アミノスタローンってやつなんですけど。 
									 
									  | 
							
							
								| 糸井 | 
								名前にも「アミノ」が(笑)。 
									 
									
でも、すごい効果が出たもんですね‥‥アミノ酸。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								ほかにも、勝てないって有名だった 
									
ある牧場の馬に食べさせてみたんです。 
									 
									
そしたらそこの馬も、やたらに勝っちゃって。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								勝たないはずの牧場の馬が(笑)。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								その馬だってね、500万円でも売れなかったという、 
									
それはもう、貧乏くさい馬でね‥‥。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								貧乏くさい馬ってなんですか(笑)。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								なんというか‥‥まぁ、 
									
大切にされてなかったんですよ、みんなに。 
									 
									
たとえば、 
									
サンデーサイレンスのこどもだとかって言ったら 
									
蝶よ花よってね、まわりから。 
									 
									
でも、500万円でも売れないっていう馬は 
									
口をパクパク、チョコチョコ動いて‥‥。 
									 
									  | 
							
							
								| 糸井 | 
								腰の低い馬みたいな(笑)。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								でも、そいつが、やたら勝ったんです。 
									 
									
それでまあ、細かいことは省きますけど 
									
そういったご縁で。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								味の素の研究所に。 | 
							
							
								| 高橋 | 
								そういうことなんです。 | 
							
							
								| 糸井 | 
								先生のそういう話、いいなぁ(笑)。 
									 
									  
									 
									
<つづきます> 
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