高橋 |
何時間もまとめて眠るのは、人間だけ。
でも、わたしたちが赤ちゃんのころには、
「眠ったり、起きたり」していたはずです。 |
糸井 |
ええ、間歇(かんけつ)的に、スプリットして。 |
高橋 |
だから3〜4歳になって睡眠時間がまとまり出し、
日中、起きていられるようになると、
幼稚園に通ったりしはじめるわけなんです。
そして、いわゆる「痴呆」のような状態になると、
ふたたび、睡眠がスプリットしてくる。 |
糸井 |
ああ、なるほど。 |
高橋 |
だから、わたしたちの基本的な睡眠というのは
他の動物と同じように
本当は、スプリットしているのではないか。
ようするに、人間以外の動物は
ほとんどそういう睡眠をとっているのだから、
われわれ人間の場合は
相当ムリして「まとめて眠っている」んじゃないか。
そういう推論が、立つわけです。
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糸井 |
それは、なんか実感的にわかりますね。
日曜日の自分なんて
スプリット睡眠そのものですし(笑)。 |
高橋 |
だから、科学者なんかは「長く起きている」ほうに
注目したりしますよね。
よくもまぁ、こんな眠らないで起きていられるな、と。
つまり、しょっちゅう休ませていなければ
神経細胞の活動が保てないから‥‥という理由で
「睡眠」が必要なんだと考えれば、
16時間とか18時間、起き続けられるっていうのは‥‥。 |
糸井 |
じつは、驚異的なんじゃないかと。 |
高橋 |
ええ、そのとおりです。 |
糸井 |
なるほど‥‥いまのお話が
眠りについての、基本的な説明ですよね。
まず、前提となるような‥‥。 |
高橋 |
ええ、まぁざっと、ですけれどね。 |
糸井 |
じゃあ、一般の人も知っている言葉で、
「ノンレム睡眠」と
「レム睡眠」ってのが、あるじゃないですか。 |
高橋 |
簡単にいうと専門家には怒られちゃいますが、
「ノンレム睡眠」は、深い眠り。
「レム睡眠」は、浅い眠りのことですね。
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糸井 |
はい。 |
高橋 |
わたしたちは、一晩のうちに、
「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の周期を
3回から5回くらい、繰り返しています。 |
糸井 |
そのワンセットが、
だいたい90分くらいなんですよね。 |
高橋 |
ええ。まず入眠直後に、ノンレム睡眠のなかでも
深い眠りである「徐波睡眠」がおとずれ、
目覚めが近づくにつれて、
ノンレム睡眠の浅い眠りや、
レム睡眠が多くなっていく‥‥
これが、健康なヒトの眠りのパターンです。
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味の素株式会社健康基盤研究所編
「睡眠の質を高める アミノ酸“グリシン”」より |
糸井 |
じゃ、そのパターンをきちんとキープできれば、
「満足のいく眠り」に近くなる、ということ? |
高橋 |
細かいことを言いだせばキリないのですが、
一般論としては、そう言えるでしょうね。
で、糸井さんのいう「満足のいく眠り」について、
ひとつ、確実に言えるのは、
深い眠りである「ノンレム睡眠」だけでなく、
浅い眠りである「レム睡眠」もないと
起きたときに満足感が得られない、
ということなんです。
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糸井 |
深い眠りだけじゃ、だめなんですか? |
高橋 |
ええ、だめなんです。 |
糸井 |
でも、
その「レム睡眠」のない状態っていうのは‥‥。 |
高橋 |
人工的につくりだすことができるんです。
いちばんわかりやすいのは、睡眠薬。
これは、覚醒を下げて「浅いノンレム睡眠」を
つくりだすようになっているんです。
この場合、「レム睡眠」が少なくなる。
そうすると、
起きたときの満足感がないんですよ。
<つづきます>
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