HOBONICHI

つきのみせ。2022 私たちのほしい、心地いいもの。

人と会ったり遠出をしたり、
外に出られる日々がかえってきたこの頃。
今季は、アクティブな気持ちと
一緒になってたのしめる
晴れやかな色のラインナップになりました。
うつくしい光をあびたような色に、
ちょっとした遊び心をしのばせて。
また、シグネチャーラインは素材がアップデート!
特別なシルク100%のma.to.waに全身包まれたい、
という願いを叶えるラインナップも。
また、アーティスト・ひがしちかさんの
アートワークをプリントしたアイテムも登場。
身につけるだけで、
気分がうきうきするアイテムたちです。
ご一緒した方々にくわしいお話を聞きました。
ひがしさんにお茶を淹れていただき、
いまの暮らしぶりについて
すこしお話をうかがいました。
ひがしちかさんのプロフィール
1981年、長崎県諫早市生まれ。
文化服装学院卒業後、アパレルの仕事などを経て独立。
1点ものの日傘ブランドとして
「Coci la elle(コシラエル)」を2010年にスタート。
ひがしさんが一本ずつ手書きや刺しゅうを
ほどこした日傘を製作した。
2022年にブランドをクローズし、
現在は依頼されたアートワークなど、
自身の創作活動を行っている。

ひがしさんは絵を描かれるとき、
どんな風に筆を動かすのですか?

柄は決めないんですけど、
中心になる色だけ決めるようにしています。

私、PCのソフトを使って、
絵を描くことができないんですね。
PCなら後から修正することもできますが、
絵の具の場合は最初に色を決めないと
なおすことが難しいので、中心の色だけ。
あとは、なにも決めないようにしていました。
生地の方向や裁断のことを考えて
描くことはありましたが、
もっと自由な色でありたいというか。

自由な色っていうのは、
心のおもむくままに描かれた色
のようなイメージですか?

それもありますが、なんていうんだろう……
上手な絵を描く人は本当にたくさんいらっしゃいます。
私の絵は何か?を考えた時、技術で描くよりも
私は心象風景や今この瞬間の”感じ”を
描きたい気持ちが強いんだなと思って。
そこを大事にすることが、
自由な色なんだと思います。

そういう風に絵を描けることが
うらやましいです。
私は言葉でならいくらでも書けるのですが、
絵となると考え込んでしまうので。

人それぞれ、
得意な表現方法は違いますもんね。
私の場合は、言葉にできないから、
絵を描いているんだと思います。

歳を重ねて、
ようやく人並みに喋れるように
なってきましたけど、
コシラエルをはじめた当初は
あまりにつたなかった。
言ってしまえば、
言葉の力をあまり信じていなくて、
頼りにしていなかったんだと思います。

いまはそんな感じを
まったく受けないです。

最近はとくに、
言葉に興味がありますね。
とくに「詩」が好き。
詩がさまざまな芸術の源に
あるんじゃないかと思っていて、
詩を土台に絵や建築や写真など
作品が生まれてきたのではないか
と思うようになりました。

どんな方がお好きですか?

絵本作家としても活躍された、
詩人の片山令子さんの作品が
詩を読むようになったきっかけでした。

あとは、アレン・ギンズバーグさんや
ナナオサカキさんなど、
人柄もユニークな人の作品が好き。
俗世からすこし離れている人が
つむぐ言葉というのは、
凄みがあるなと感じています。

いちばん好きな詩は、
イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの
『無垢の予兆』の冒頭。
18歳のときに詩の朗読会で読んで、
衝撃を受けたことを最近思い出しました。

詩を読むようになったのは、
なにか心境の変化もあったのですか?

コシラエルをたたんで、
自分を省みる時間、
三番目の末っ子が手が離れてきたものあり、
20年ぶりとかです。
落ち着いて本を読めるのは。
いまはその時間がたのしくて、
夢中になっています。

時間ができると、
やりたいこともまた変わってきましたか?

いまは、20歳の頃に制作していた絵本と、
もう一度向き合っているところです。

ずっとやりたかったんだけれど、
どこに着地すればいいのかわからなくて、
ぼんやりしていたんです。
でも、絵本作家のゴフスタインの本を読んだとき、
「絵本はその頁の絵に対して言葉はひとつしかない」と
書かれていて。
その言葉が心に残っているんです。
この20年間、一生懸命仕事をしてきて、
わき目も振らず走ってきたけれど、
まず今年は、
この絵本のこの頁に対する
「その言葉を探す」ことに集中したい。
それが、使命の年になるんだと思います。

そうやって時間ができると、
また違う方向に向かって
進みはじめるものですね。

そう、だから余白って、
すごく大事だなと思います。
私、よくばりなので、
やりたいことがたくさんあって
一日のうちにいっぱいつめこんじゃうんですよ。

でも、最近は「いかに余白をつくるか」
ということを毎日考えています。
ぼんやりする時間を、意識的につくるんです。

皮肉な話ですけど、
余白をつくろうとしないと
そういう時間って生まれないですよね。
私もひがしさんと似た性格なので
よくわかります。

自然と、やることで埋め尽くされちゃいますよね。
なんとなく気になって掃除をしたくなるし、
考えごともしてしまうし。
世の中にも情報がたくさんあるから、
すきあらば情報が流れ込んでくる。

街をボーっと歩いていても、
看板や液晶画面からどんどん売り込みが
あるじゃないですか。

とくに東京は、
ボーっとさせてくれないですね(笑)。

仲のいいドイツ人のおじいさんがいるんですが、
すごく素敵な人なんです。
一緒に話しているときに、
英単語がわからなくて調べようとすると
「ノン、ノン」って言われるの。
調べないで、知っている単語を相手に伝えて
連想ゲームのように思い出す。
たとえば「りんご」なら、
赤くて、丸くて、と伝えるんです。
今はわからないことがあれば調べて、
正確な会話運びをしようとするけれど、
その代償もある気がするんですよね。
もっと曖昧でもいいし、
想像することのおもしろさもあるんだと
教えてもらいました。

それも余白みたいなものですよね。
考えることをもっと楽しむというか。

そうですね。
そうやって頭でいろいろ考えていると、
身体で覚えるようになるんですよね。
覚えられなかったら、また聞けばいい。
そんな風に余裕をもって
毎日を過ごせるようになったのは、
自分自身の創作においても
大きな変化が生まれる気がしています。

(つづきます。)

つきのみせ。× ひがしちか
8.2(WED)ON SALE
コットンのブラ
¥6,820(税込み)
コットンのショーツ
¥5,500(税込み)