によどヒノキウォーターができるまで。
午前11時販売開始
「生活のたのしみ展」で大好評だった、
「によどヒノキウォーター」。
日本一の清流と言われる高知・仁淀川の源流域で
自生するお茶やハーブをつかって
和のハーブティーをつくっている
tretreの竹内太郎さんがみつけた、
“和のリネンウォーター”です。
じつはこのアイテム、
仁淀に暮らし、仁淀のひとたちと交流するなかで、
竹内さんが“発見”したもの。
山のヒノキと、山の水。
できあがるまでのいきさつを、
竹内さんにおききしました。
もくじ
前編仁淀の山と川から
生まれたもの。
仁淀に引っ越してきたのは4年前になります。
築100年を超えた古民家を借りて暮らしていると、
古民家独特の匂いというのかな、
気になる部分があったので、
最初は化学系の消臭剤を使っていたんですね。
でもそれだと、気になる匂いは消えても、
周りの空気がキレイすぎるからでしょう、
違和感というか、異物感というか、
感覚的に引っかかるところがあり、
買ったはいいけど使わずじまい、だったんです。
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tretreの竹内太郎さん。
そのときに、池川木材工業という、
「すのこ」づくりで日本一のシェアをもつという
おおきな木材の生産・加工会社の大原儀郎さんという、
いまは息子さんに経営をゆずり、
会長をなさっているおじいさんと知り合いました。
池川木材工業は、森を生きている状態にしながら、
きちんと木の数を管理して育て、
計画的に伐採して、ゴミを全く出さない
材木の作り方をしている、
エコシステムを作っちゃってるような、
おもしろい会社なんですよ。
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その会長である儀郎さんが言うんです、
「オイルとりゆうけんど、見にこんか」
って。
オイル? それはいったいなんだろう?
って思いました。
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ヒノキオイルを抽出している小屋にて。
竹内さんと大原さん。
儀郎さんに訊いてみると、こういうことでした。
製材するときに出る
ヒノキの端材(木くず、木片)を燃やし、
自作の巨大な釜で沢の水を沸騰させる。
出てきた水蒸気でヒノキチップを蒸す。
その水蒸気には、ヒノキの成分がたっぷりと
含まれているんです。
それを、沢の水で冷却し、
上に分離するオイル分を、
「ヒノキオイル」として製品化していました。
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いい香りのヒノキチップ。
どうしてそれをつくったのかというと、
20年ほど前に、
孫と一緒に持ち帰ったヒノキの葉を、
香りがよいからと風呂に入れてみたら、
オイルが浮いてきたのだそうです。
その香りがすばらしくよいので、
焼酎をつくるようなしくみで、
オイルをとってみようと考えたそうです。
そこで儀郎さんがヒノキオイルをつくっているところに
連れて行ってもらうことになりました。
大きな工場を想像していたのですが、
そこは山のなかのわずかな平地にある釜と冷却装置。
とても簡素なものだったのですが、
儀郎さんはエコシステムを考える人ですから、
燃料は自社のヒノキの端材だし、
水は沢からひいたものだし、
そもそもの釜もぜんぶ手づくりでした。
その徹底ぶりにも感動しました。
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森と木を知り尽くした
大原さんが自ら設計して作った釜と冷却装置。
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ヒノキオイルとヒノキ蒸留水ができるまでの図
そして見ていると、オイルをとった残りの液が、
外に流されていました。
「会長、これ何ですか?」とたずねたら、
「ヒノキの蒸留水。
オイル、とるときに、出る副産物よ」と言うんです。
ヒノキオイルは、いろいろな用途があるので
買い手がいるんですが、残った水の部分は、
家に持ち帰って風呂に入れたりする以外は、
また流してしまうのだと言うんですね。
でも、手にとってみると、とてもいい香りがした。
ヒノキならではの香りが含まれていて、
ぼくもそのとき、いただいて帰りました。
これが「によどヒノキウォーター」の原型です。
それで最初の話にもどるんですが、
古民家独特のにおいを消すのに有効なんじゃないかと、
スプレーボトルに入れて、シュッシュッ、
としてみたんです。
そうしたら「あれ? なんか効いてるぞ」。
そこで「もっといい香りにならないかな」と、
ラベンダーなどの精油を混ぜてみたんですね。
それはそれでわるくないんですが、
よくあるような香りになったりして、
ヒノキのよさをいかすには、同じように木か、
木になる実の香りがいいんじゃないかと思いました。
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取材に訪れたのは5月。
緑がイキイキとしていて、
ちょうどみかんの花も咲いていて
かすかに甘い香りがしていました。
5月のこと、上名野川の山のみちで車を走らせていたら、
ミカンの花の香りがしてきたんです。
そのとき、ああ、いいな、と。
森林浴の心地よさの中に、
こういう甘い香りがフッと漂うぐらいの
体験ができたら、自分はすごくうれしいし、
みんなもうれしいんじゃないかなっていう予感がして、
柑橘系を入れることに決めました。
そこで文旦とか小夏とか、高知のオイルも
いろいろ試してみたんですけど、
最後にいちばんしっくりきたのはベルガモットでした。
それを、いつか何か商品にしたいなとは思いながら、
自分たちで楽しく使っていました。
会社をつくって2年目の5月に、
「ほぼ日」の皆さんがいらしてくださいました。
そのときに、このヒノキ蒸留水を紹介したら、
こうおっしゃったんですよ、
「これ、いいですね! ほしいです!」って。
その反応がぼくはとてもうれしくて、
そんなふうに言ってくださるのかと驚いて、
これは本腰入れて商品化をしていこうと、
開発をはじめたんです。