ことしの春夏の「フレフレシリーズ」や 今季の「エア・スウェッツ」でもお力添えくださっている、 「Nikki ESSENTIAL PIECES (ニッキ エッセンシャル ピーシーズ)」の デザイナー・浅川智子さん。 フレフレシリーズにも、エア・スウェッツにも、 あたらしい息吹を吹き込んでくださいましたが、 そんな浅川さんがデザインを手がけるご自身のブランドが、 とってもすてきなんです。 上品で女性らしく、 凛とした強さとうつくしさをそなえた服たちに、 わたしたちもすっかりとりこになってしまいました。 この魅力をぜひ〈O2〉のお客さまにもお伝えしたい、 という思いから、今回、ドレスとベストの ふたつのニットアイテムをセレクトさせてもらいました。 浅川さんが語ってくださった言葉とともに、ご紹介します。
浅川 智子(あさかわ さとこ)
文化服装学院アパレルデザイン科卒業後 大手アパレルなどを経て、2015年、 セレクトショップBLOOM&BRANCHの プライベートレーベルPhlannelの ウィメンズ企画として参画。 2023年、ブランドの終了と同時に、 Phlannelの続きとして小金毛織㈱の協力のもと、 ユニセックスブランド、 Nikki ESSENTIAL PIECESを立ち上げる。 自身のブランドの傍ら、 フリーランスデザイナーとしても活動中。
Instagram :
─ 浅川さんとご一緒させていただくきっかけにもなったのが、 この「ウールリブデイドレス」でした。 Nikki ESSENTIAL PIECESのInstagramで見かけたとき、 あまりのかわいさに興奮してしまって、 すぐに〈O2〉チームに写真を共有したんです。
浅川 ありがとうございます。 このニットのドレスは、 ブランドのファーストシーズンでつくった、 とても思い入れのあるアイテムなんです。 わたし自身もすごく好きなので、 選んでいただけてうれしいです。
─ ことしの秋冬では展開されていなかったところを、 特別につくってくださいました。
浅川 とてもありがたい申し出でした。 ことしのドレスは、 〈O2〉だけのエクスクルーシブアイテムです。
─ わがままを叶えてくださってありがとうございます。 こんなすてきなドレスを どうやって思いついてデザインされたのか、 浅川さんに聞いてみたいと思いました。
浅川 このドレスは、布帛(ふはく)でやっていた考え方を ニットに持ち込んだことがはじまりでした。
─ 織物の発想を、編み物に応用されたんですね。
浅川 そうなんです。 ブランドをはじめるときに、 紡績会社の小金毛織さんに サポートしていただけることになって。 もともとニットデザイナーではなかったので、 布帛で服をつくるときの方法をニットに取り入れたら 立体的な表現ができるかも、と思って試してみたんです。
─ 置いてあるとわかりづらいですが、着てみると、 やわらかな丸みを帯びたラインがよくわかります。
浅川 そうなんです。 丸みが出るように、何度も調整を重ねました。 裾に向かって「減らし目」(※編み目の数を減らすことで、 かたちを整える技法)を入れて、 樽(たる)型のような、立体的な丸みを出しています。 単に脇線にカーブをつけるだけだと、 のっぺりした平面的なかたちになってしまうので。
─ 編みの目数の調節で、そんなことができるんですね。
浅川 上半身のリブ編みと下の天竺編みの切り替え位置を すこし高めにしているのも、 スタイルよく見せるポイントです。 体のラインも、袖をふくらませたり、 部位によってシルエットに変化をつけているので、 あまり体型を気にせずに着ていただけるはず。
─ たしかに、ウエスト位置が高く見えて、 おなかまわりもやさしく包まれる感じ。 ほどよいぬくもりがあって、 首元もほわっとあたたかいです。
浅川 最近は冬でも気温が高い日がありますから、 えりはタートルネックよりすこし低めの ハイネックにしました。 くしゅっとさせて着ていただけたら。
─ 上から下までニットだと重そうな印象がありますが、 このドレスはなんだか軽いイメージです。
浅川 裾を編みっぱなしにして 軽さを出しているからでしょうか。 1日着ると、どうしても重みで 2cmくらいは下に伸びてしまいますから、 できるだけ軽くしたいと思いました。
─ 素材も気になります。 どんな素材で作られているのでしょう。
浅川 使っているのは梳毛(そもう)ウールです。 梳毛ウールは均一な長さのウールで作るため、 毛玉ができにくいというメリットがありますが、 整いすぎると、クリーンな印象であたたかみがありません。 そこで、このドレスではほどよくあたたかみを感じられて、 毛玉にもなりにくい糸を選んで使っています。 さらに縮まない加工もほどこしているので、 毛どうしが絡み合ってフェルト状になることもありません。
─ 気がねなく着られるのはうれしいです! そして、もうひとつのアイテムが 「フェルティングウールニットベスト」。
浅川 これも思い入れのある一着です。 以前、同じ編み地でメンズのカーディガンと レディスのポンチョをつくったことがあったんですが、 それを気に入ってくださったお店からの 別注で誕生したアイテムなんです。 今回はそのお店のご厚意で、色を変えて展開しています。
─ この編み地に惚れこむのもわかります。 ふっくらしているのに、 ぎゅっとつまっているというか。
浅川 その秘密は、この約2倍の編み地をお湯で キュッと縮絨(しゅくじゅう)させているから。 ニットでよくある手法なんですが、 この仕上げをとてもきれいにしてくださる 編み工場さんがあって、いつもお願いしています。
─ 信頼されているんですね。 どういったところに、信頼を置いていらっしゃるんですか?
浅川 縮絨させるとマットで素朴になりやすいんですが、 ここは上質感を出すのがとても上手なんです。 丁寧につくってくださるので、かなり時間もかかります。 これの倍の編み地を縮絨するから、寸法が安定しなかったり、 かたちがいびつになったりするんですが、 ここの工場さんの手にかかると 思い描いていたとおりの立体的なかたちになるんです。 似ているものはほかでも作れたりはするんですが、 雰囲気や風合いはまったくちがいますね。
─ デザイナーとして、 ニットは本職ではなかったとおっしゃっていましたが、 ニットを語るときの浅川さんの目がキラキラしています。
浅川 ニットって、ほんとうにたのしいんです。 この糸とこの糸を撚糸したらどういう糸になるんだろう、 と想像する時間が好きで。 この編み地も、自分で考えました。 今いっしょにお取り組みしている小金毛織さんでは、 すぐに試作を編んでくださるので、とてもありがたいです。
─ そうなんですね。 やっぱり、実際に製品にはならなかった試作も たくさんあるんでしょうか。
浅川 たくさんあります(笑)。 4種類くらい試して、その中から1種類を選んだり。 そういう感じです。
─ ベストのかたちは、何かヒントがあったりしたんですか?
浅川 はい、ベースになっているのは アメリカのバザーで見かけるようなキルティングベスト。
─ あぁ、どことなくなつかしい感じがしていました。
浅川 左胸の丸いポケットは、 以前レディスでつくったポンチョのデザインを ベースにしています。
─ はじめて見たとき、 この丸いポケットにキュンとしました!
浅川 レディスのポンチョではパイピングをほどこした 四角いポケットをアクセントとしてつけていて、 それがとても評判がよかったので、 ベストにもかたちを少し変えて取り入れました。 ディテールでいえば、 ファスナーは老舗の朝日ファスナーさんのもの。 ヴィンテージ感があって、繊細な意匠が気に入っています。
─ たしかに、ベスト全体に自然になじんでいますね。 ドレスもそうですが、 ベストもワンサイズのみの展開です。
浅川 ジェンダレスに着ていただけるようにしています。 男性でも着やすいよう袖ぐりを広めに、 肩幅はややせまめに。 シャツやTシャツに重ねやすいように 意識してデザインしました。 女性が着ると肩が落ちて、 ほどよくリラックス感のある雰囲気に。 体格を問わず、どんな方にもよく似合うと思います。
─ 着丈に前後差があって、 後ろはおしりが隠れるくらいの、少し長めの丈感。 その感じがまたかわいいです。 浅川さんとわたしが思い入れのあるドレスとベスト、 みなさんにご紹介できてうれしく思います!
Nikki ESSENTIAL PIECES
WOOL RIB DAY DRESS
各¥44,000(税込)
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Red
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Navy
Nikki ESSENTIAL PIECES
Felting Wool Knit Vest
¥55,000(税込)
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Charcoal