劇団セルフタイマーへ ようこそ!
作品鑑賞会#7 組み写真・『雨上がりの黄昏』
 
観覧客A つづけてまいりましょう。
となりにあるこちらも、
ある意味で大作と呼べるものかもしれません。
観覧客B 5枚でひとつの「組み写真」です。
糸井 ‥‥なるほど、
その5枚をタテに並べて展示したんですね。

観覧客A この組み写真のテーマはなんでしょう?
糸井 これはもう、
「こうえんに行くぞ!」ですよ。
観覧客A ええと‥‥その場合の「こうえん」は、
どっちの「こうえん」ですか? 
すべり台のある公園でしょうかそれとも‥‥
糸井 劇団の「公演」です。
観覧客A あ、そっちで。
糸井 雨が上がったから、
「野外公演に行くぞ!」ということです。
観覧客B なるほど。
では、順に解説をお願いします。
1枚めのこれは‥‥?

 

あめあがりの。(1)

『劇団セルフタイマー』公演。
『雨上がりの黄昏』
はじまりは挫折だった。

2013/04/21 18:57

糸井 まちがいです。
タイマーで10秒セッティングするところを
2秒にしてしまいました。
観覧客C 2秒でシャッターがおりた(笑)。
糸井 向うに走って行こうとしているうしろ姿ですね。
写ってませんが女優も足元にいます。
観覧客A 1枚めは、まちがい。
でも気を取り直して、2枚めは‥‥。

 

あめあがりの。(2)

『劇団セルフタイマー』公演。
『雨上がりの黄昏』
思いがけない女優の反乱。

2013/04/21 18:58

観覧客B 女優の反乱と書いてありますが‥‥。
糸井 あのですね、
カメラをセットしたら、走りますよね。
観覧客C はい。
糸井 女優もいっしょに走ります。
そのとき女優は向こうを向いて走るわけです。
なのに到着したら、
今度はカメラの方に振り向いてもらわないといけない。
これが、すごくむつかしいんですよ。
一同 はい、はい。
観覧客A 女優さん、踏ん張っています。

糸井 反乱です。
でもいつもは、ここまで反乱はしないんです。
このときこんなに反乱した理由は、これです。

観覧客B ‥‥え?
観覧客C なんでしょう?
観覧客D 写真の右の方に写っているそれは‥‥
糸井 犬。

一同 おおーーーー!(笑)
糸井 2匹。
観覧客A 女優さん、これは気にしますねぇ。
糸井 おおいに気にします。
観覧客B ちなみにこういうとき、
監督は女優さんに何か話しかけるんですか。
糸井 いや、無言ですね。
もう、その余裕はない。10秒ですから。
うちの劇団はだいたいが無言です。
観覧客B 基本的に、無言劇(笑)。
糸井 余裕がないんです。
観覧客A 無言だと思って見ると、また味わい深いです。

で、この日の3枚めは、また場所を変えて?

 

あめあがりの。(3)

『劇団セルフタイマー』公演。
『雨上がりの黄昏』
寺へ。

2013/04/21 19:02

糸井 フジフィルムの横のお寺です。
観覧客B お寺。
糸井 ぼくはこの日、お寺で撮りたかったんです。
だから本当はもっとお寺に近寄って
撮りたかったんだけど‥‥それはだめでした。
観覧客C どうしてですか?
糸井 人通りが意外と多かった。
一同 あーー(笑)。
糸井 役者ふたりの表情には、焦りしか見えません。
観覧客A そして4枚め。
これは珍しい作品です。

 

あめあがりの。(4)

『劇団セルフタイマー』公演。
『雨上がりの黄昏』
薄明の彷徨。

2013/04/21 19:05

糸井 セルフタイマーで撮った写真ではありません。
ぼくがふつうに撮りました。
こういうのも入れないと、流れがね。
観覧客B アクセントとして。
糸井 そうそう。
これ、ぼくの好みなんですよ。
東京で写真を撮ると写っちゃう電線。
電線のある景色が好きなんです。
観覧客A そんなアクセントをぽんと入れつつ、
この日の最終幕がこちらでした。

 

あめあがりの。(5)

『劇団セルフタイマー』公演。
『雨上がりの黄昏』
新しき公園。

2013/04/21 19:05

観覧客B ‥‥女優さんが、真横を向いていらっしゃる。
糸井 カメラを見るようお願いしているうちに、
シャッターがおりました。
観覧客C ‥‥先ほどの反乱といい、
この日はちょっと女優さんのコンディションが‥‥。
糸井 いや、女優さんは悪くないんです。
彼女は、なんというか‥‥
座長の不安をそのまま感じ取るタイプの女優なんです。
一同 ああーー。
糸井 ぼくに余裕がないのがいけなかった。
この公園では、どんどん暗くなっていく状況でした。
「はやく撮らなきゃ」
というぼくの追い込まれた気持ちが、
彼女を不安にさせていたのでしょう。
観覧客D なるほど。
糸井 そんなわけで組み写真は、
「まちがい」「反乱」「焦り」「電線」「真横」という
あまりかんばしくない5つになりました。
でも枚数を稼げたという意味では、
記念碑的なものだったと思います。
観覧客A はい。
たくさんアップされたので
ファンとしてはワクワクがありました。
観覧客B では、つぎの展示作へまいりましょうか。
観覧客C そろそろ、終盤ですね。


(つづきます!)
2013-06-12-WED
前へ このコンテンツのトップへもどる 次へ
 
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
ほとんどのカメラについているのに、 たぶんあんまり使われていない機能、「セルフタイマー」。 糸井重里は、これに着目。 「劇団セルフタイマー」を設立しました。 それはつまり、孤独にがんばる撮影活動。 一座の公演は「気まぐれカメら」で発表されています。 主演女優、ブイヨン。監督・出演、糸井重里。 タイマーセットで本番スタート! 走れ! レンズを見よ! 周囲の目は気にしない! この、ペーソスあふれる活動を、みなさんもいかがですか? 劇団セルフタイマーは団員を募集します。 とはいえ、ほんとに人を集めるわけではございません。 「セルフタイマーで撮った写真を投稿する」、 それが団員になるということなのです。 さぁ、あなたも、タイマー・セーット!