が帰りがけに、 かばんを肩にかけながら フロアをさんぽしていました。
 「あれ? 山下さん。 今日おやすみじゃなかったっけ?」
 「ちょこちょこ用事があったので 来ちゃったんですよ」
 「では、手品をやりたいと思います」
え‥‥? 手品。
社長は、家で自分が思いついた、 携帯電話を使った手品をはじめました。
 「あ‥‥だめだ、ぜんぜんできなかった」
できなかったんだ。
 「ぼくがやってみせましょう。 iPhoneを、こうやって、両手で持って‥‥ なかゆびに乗せてバランスを取って、 ゆらゆらさせると、 ほうら、電話が浮いたように」
    「すごーぉい、ほんとに、 浮いたように見える!」
 「俺が考えた手品なのに‥‥。 山下さん、 今日おやすみの予定だったくせに‥‥!」
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