| 糸井 | 
        ぼく、正直言って、 
          性から解脱してますもん、もう。 
          とっくに。 
          性欲って思えるようなものは 
          いくらでもあるし、 
          いつでもスイッチ入れられるけど、 
          その、なんだろう。 
          そんなにたいへんなこと考えなくても、 
          他でおもしろいわ、っていうような。           | 
      
      
        | ルディー | 
        そうなんですよね。 
          まぁ、ほんとに、 
          いまネットとかいろんなのあって、 
          あまりにもエキサイティングなことが 
          たくさんあると、今度は反対に、 
          昔の報酬系がもうそのぐらいのことでは、 
          活性化しなくなったってことで 
          あったとすればですよ、 
          これはもう、しょうがないですよね。           | 
      
      
          | 
      
      
        | 糸井 | 
        うん(笑)。 
          で、そのわりに、アメリカ人って、 
          プロテスタンティズムの 
          裏返しじゃないかと思うんだけど、 
          バイアグラ売るじゃないですか。 
          外国の調査を見ると、 
          とにかく性的にアクティブですよね。 
          で、日本人だけが異常なんだっていう 
          調査になっちゃうんですけど、 
          人類そんなにアクティブに性に関わるって、 
          ちょっと昔の脂肪を取りたがってた 
          時代過ぎるんじゃないかなぁ。 
          でも映画なんかで描かれてる、 
          『アメリカン・ビューティ』みたいな 
          タイプの映画とか見ると、 
          もう、そこ、終わってますよね。 
          どっちよ、と。           | 
      
      
        | ルディー | 
        わたし、これ言っちゃうと 
          ほんといろいろ語弊が 
          あるかもしれないんですけど、 
          やっぱりアメリカって国の強さは、 
          移民を入れてるってことと、 
          それから、やっぱり、 
          他人との比較ってものがあるということ。 
          男の人って、 
          コンペティティブっていうか、 
          競争でしょう。 
          自分も性的にがんばらなくっちゃ、 
          っていうところが出てきますよね。 
          それから、移民っていうことは、 
          やっぱり、新興国とか、 
          開発途上国から来てる人たちっていうのは。           | 
      
      
          | 
      
      
        | 糸井 | 
        じゃんじゃん子ども作るぞっていう?           | 
      
      
        | ルディー | 
        はい、そういうのがやっぱり、 
          アメリカの強いところじゃないかなぁと思います。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ああー、そうかぁ。 
          競争相手が上にも下にもいるんだ。           | 
      
      
        | ルディー | 
        そして新しい血が 
          入ってきてるんですよね、どんどんと。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        なるほど。 
          そうすると、うかうかしちゃいられねぇぜ欲が。           | 
      
      
          | 
      
      
        | ルディー | 
        やっぱり、競争心が出てくると思うし、 
          いつも新しい血が入ってきてるってことは、 
          DNA自体も少し変化することだし、 
          やっぱり、全体としての強靭さが 
          全然ちがってくるんじゃないかな、 
          と思うんですよね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ヨーロッパともちがいそうですよね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        ヨーロッパも移民が多いですけど。 
          イギリスとかドイツとか、 
          なんか日本人と似て、 
          一所懸命働きそうなところっていうのは、 
          やっぱり、いわゆるほんとに、 
          セックスの頻度は──。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        下がってる。           | 
      
      
        | ルディー | 
        日本ほどじゃないんですけど。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ああー。           | 
      
      
        | ルディー | 
        逆に南欧はもともと、 
          ギリシア危機みたいな感じで、 
          みんなスローライフを送ってるんで。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        食べ物に対する欲望、 
          性に対する欲望、 
          もう、一個は、ちょっと 
          近代的な意味じゃなくって、 
          健康とか生きることに対する欲望、 
          この辺りの、実は知らず知らずに起こってる 
          パラダイムの大転換を、 
          ちがう物語を間に挟んで、 
          ごまかし、ごまかし、いまを生きてるだけで。           | 
      
      
        | ルディー | 
        そうですよね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        あと、100年経ったときには、 
          これはあんときは過渡期だったねぇ、と。 
          それが先にわかるのは、ぼく 
          日本人じゃないかなぁと思うんです。           | 
      
      
        | ルディー | 
        あ、そう思います。 
          ある意味では、いちばん先端を行ってる。           | 
      
      
          | 
      
      
        | 糸井 | 
        足りてるしね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        足りてるし。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        のんびりしてるし(笑)。           | 
      
      
          | 
      
      
        | ルディー | 
        競争あんまりないし、 
          そもそも競争社会じゃ、あんまりないし、 
          新しい血もあんまり入ってきてないし、 
          そういうことを考えると、 
          これも──、 
          ほんとにあんまり言っちゃいけないと思って。 
          本に書こうと思ったら 
          出版社にやめてくださいって言われたんですけど。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですか。           | 
      
      
        | ルディー | 
        過激すぎるとか、 
          品が悪いとか言われたんですけど。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        はい。           | 
      
      
        | ルディー | 
        排泄するところと、性に関係するところと、 
          場所、すごい近いじゃないですか。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        うん。           | 
      
      
        | ルディー | 
        だいたい、どうしてそうなったのか、 
          そういうふうに作られてるのか 
          わからないんですけど、 
          清潔という点から考えたら、気持ち悪いですよね。 
          アメリカ人はそれでも毎日シャワー浴びますけど、 
          ヨーロッパって、けっこう 
          みなさん同じ下着で1週間とか、 
          そういう調査結果が出てるんですけど 
          先進国のなかでも日本人っていちばん潔癖症なんですね。 
          あまりに清潔好きなんで、 
          アジアの人たちと共同生活できなくなる、 
          とか昔いろいろいわれましたけど。 
          わたしはほんとに、 
          どうして性のことに関してだけ、 
          報酬系が活性化しないのかなと思ったときに、 
          やっぱり日本人は清潔好きすぎるんだって考えてて。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        すっごくそれって、若い世代には、 
          とっても関係あると思うんですよね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        うん。           | 
      
      
        | ルディー | 
        それで、そのときに、 
          ウォシュレットの普及率が増えると 
          性に興味がなくなってくる、 
          っていうの書いて(笑)。           | 
      
      
          | 
      
      
        | 糸井 | 
        はぁー、おもしろーい。           | 
      
      
        | ルディー | 
        原稿書いて出したんですよ。 
          そしたら、 
          すいません、これは、 
          日経新聞の品にちょっと 
          合わないんだけど、と。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        ああー。 
          ほぼ日刊イトイ新聞は大丈夫ですよ。           | 
      
      
        | ルディー | 
        はい。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        きれいにしておく、っていう発想と、 
          性が普段持ってるタブーを 
          全部はずしてしまって、 
          わたしとあなたは一体化しましょう、 
          っていう、レッツ、っていう姿勢とは、 
          やっぱり矛盾しますよね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        ええ。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        これもね、誰かの研究を 
          吉本さんが読んだんだと思うんですけど、 
          おもしろかったのは、 
          女性にとって、男性との性体験というのは、 
          子育ての練習だ、っていう説があって。           | 
      
      
        | ルディー | 
        ああー。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        まぁ、品悪く言えば、 
          ぐっちゃんぐっちゃんの泥んこ遊びがアリだ、 
          っていうことをそこで覚えて、 
          自分のアイデンティティをぶっ壊しちゃって、 
          新しい何かを見るっていうのを、 
          男との関係で学んで、子どもを育てるんだ、 
          っていう説があるんですね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        はい。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        これ、ちょっとリアリティーがあって。 
          子どもとかいらない、っていうのと、 
          男とも、もっと清潔に付き合いましょう、 
          っていうのは、 
          けっこうニアリーイコールですよね。 
          でも、アメリカンポルノを見てると、 
          とにかく、一緒に地獄に落ちましょう、 
          っていうメッセージが入ってるんですよ。 
          で、日本のポルノグラフィーっていうのは、 
          女はそういうことはしたくないのに、 
          男が誘うからだと。           | 
      
      
          | 
      
      
        | ルディー | 
        そうですよね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        つまり、サディズムなんですよ。 
          で、それをもう一回逆転させて、 
          サディズムがひっくり返っちゃいました 
          さぁ、たいへんっていうのがもう一個あるわけで。 
          どっちにしても、 
          合意のもとに一緒に地獄に落ちるっていう 
          レッツっていうポルノグラフィー、 
          基本的には日本にはないんですよ。           | 
      
      
        | ルディー | 
        うん。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        そこもたぶん、日本独特のSM趣味というか、 
          嫌いなのを誘って、力任せに 
          連れ込んじゃおうぜっていうのが、 
          日本の男の力の誇示の仕方なんですね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        うんうんうんうん。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        それもきっと、無意識でお金の話と 
          重なることだと思うんですよ。           | 
      
      
        | ルディー | 
        いや、関係、すごくあると。 
          使ってる脳の仕組みは、 
          おなじところ使ってるんで。           | 
      
      
          | 
      
      
        | 糸井 | 
        たぶんねぇ。 
          オレがこうやって、 
          100万円出すって言ったら、あいつ転んだよ、 
          っていうのは、サディズムじゃないですか。 
          一緒にお金使って、なんか無駄遣いして 
          騒ごうぜっていうのとは、ちがいますよね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        うん。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        どっかで、理性が入ってるんですよ。 
          日本人の、欲望との関係って。 
          それを両方、しゃべってる自分って 
          なに人なんだって気がするんだけど。 
          なんなんでしょうね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        うーん!           | 
      
      
        | 糸井 | 
        いや、この話、やっとできた!           | 
      
      
          | 
      
      
        | ルディー | 
        いや、わたしもあんまり 
          言ったことなかったんで(笑)。           | 
      
      
          | 
      
      
        | 糸井 | 
        そうですか。 
          ぼくね、社内でもね、 
          言う相手がいなくてね、 
          我慢してたんですよ。           | 
      
      
        | ルディー | 
        いやー、いまいちばん不思議なのは、 
          ほんとにさっきも言ったように、 
          なぜいちばん不潔なところと 
          性に関係するところと近くにあるのかな、って。 
          これは絶対若い世代には受け入れられないな、 
          と思ったことが、やっぱりありますし。 
          やっぱり、ほんとに、どうして、 
          性に関することだけは、報酬系とか 
          そういうのが、うまくはたらかないように 
          なってるのかなっていうのは、 
          ものすごく不思議ですね。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        それは、ずーっと宿題にしてたら、 
          なんか、急にわかったりするのかもね。           | 
      
      
        | ルディー | 
        いやー。 
          いろいろ、もしかしたら 
          新しい研究が出てくるのかもしれないんですけど。           | 
      
      
        | 糸井 | 
        まったくちがう研究ひとつが、 
          そこに、補助線みたいに入ったら。  
           
          (つづきます) |