

![]() |
|
〈前回のあらすじ〉 コーヒーハンター・川島良彰氏の存在を知らせるべく 乗組員・カサイがカッパとウサギを訪ねたのは まだ肌寒い季節のことだった。 カサイの手には、1本のボトルが。 艶やかな光りを放つそのガラス瓶には、 褐色の豆が封じ込められていた。 いっさいの妥協を排した、理想のコーヒー豆。 それが目の前にあるというのに‥‥ 栓が抜けないから、さあたいへん! おとなのちからで引っぱったのに、抜けない抜けない。 イトイもやってきて、おとこ4人でがんばって、 ようやく栓は抜けました。 めでたしめでたしと思っていたら、 それから2カ月近く更新していなくて、さあたいへん! 妙に間があいてすみません、後編です。 (ウサギ) |
![]() |
|
![]() |
一気にあふれだしたね、香りが。 |
| アロマが。 |
|
| アロマが。 |
|
![]() |
アロマチック天国が。 |
![]() |
‥‥ふっ(苦笑)。 |
![]() |
|
![]() |
福田さんもどうですか、 このアロマ、 瓶から直接。(瓶を渡す) |
| ぺちゃ(←瓶を受け取った音) ありがとうございます。 |
|
![]() |
|
| んーー、ええ香りです。 |
|
| ちょっと、いいですか(ビンを受け取り)、 どんな豆なのか見てみましょう。 |
|
![]() |
|
| ほおー、さすがにきれいですねぇ。 |
|
![]() |
山下さん、それさ、 そのまま食べられるんじゃない? 新鮮だから。 |
| え? あ、そうかも‥‥。 |
|
![]() |
食べるべきでしょう、ここは。 |
![]() |
|
| 食べた。 |
|
![]() |
食べるねえ。 |
| (カリ)ん? ‥‥おいしい。 |
|
![]() |
ほんとぉ? |
| イトイさんもどうぞ。 |
|
![]() |
|
![]() |
ぼくは要らない。 |
| えぇーー。 な、なんでですか。 |
|
![]() |
山下さんの手のひらに直接のってる豆は、 山下さんのエキスを吸っているから。 |
| ‥‥‥‥。 (そういうことを言う人には もう食べさせてあげないと思った) じゃあ、鮮度のいいうちに豆を挽きましょう! |
|
| 挽きましょう。 |
|
| ミルに入れて‥‥。 |
|
![]() |
|
| ここはひとつ、 カサイさん、挽いてください。 |
|
![]() |
や、そうですか! それはかたじけない。 |
![]() |
|
![]() |
なんともこれは(ガリゴリガリゴリ)、 どのくらいの早さで回せば? |
| ゆっくりでお願いします。 |
|
![]() |
こんな感じ(ガリガリゴリ)。 |
| ええと思います。 |
|
![]() |
あのさ、なんでこれ瓶に入ってるの? |
| ‥‥え?? |
|
| え? |
|
| ‥‥ああ、そうか、 イトイさんは途中参加でした。 |
|
![]() |
とくべつな豆だっていうのはわかるけど。 どう、とくべつなの? |
![]() |
あのね、イトイさん、 (回しながらグイと身を乗り出す) 『ガイアの夜明け』。 |
![]() |
|
![]() |
テレビ東京の? |
![]() |
そうそうそう、あの番組に コーヒーハンターと呼ばれる男が‥‥ (中略/くわしくは前編をお読みください) ‥‥それがこの「グラン クリュ カフェ」です。 |
![]() |
すごそうじゃない。 |
![]() |
|
![]() |
ぼくは強く感銘を受けましてね(カラカラカラ)。 |
| あ、カサイさん、豆が挽けました。 |
|
![]() |
お。 |
| ドリッパーに移して‥‥(移す)。 |
|
![]() |
いいね。 |
| いいですね。 |
|
![]() |
|
| じゃあ、福田さん、淹れてください。 |
|
| わかりました。 |
|
![]() |
|
![]() |
‥‥集中してる。 |
| ‥‥‥‥。 |
|
![]() |
|
| ゆっくり、ね。 |
|
| ‥‥はい。 |
|
![]() |
‥‥そんなにゆっくりなんだ。 |
![]() |
|
| ええ(イトイさんが女の子座りになってる)。 |
|
![]() |
点滴みたいだ。 |
| 最初のうちは、 一滴ずつくらいのイメージがいいみたいです。 |
|
| ‥‥(集中)。 |
|
![]() |
|
![]() |
あとさ、沸騰したお湯じゃないんだよね。 |
| はい、すこし冷まして、 80度くらいがいいようです。 |
|
![]() |
うーん。 |
| 沸騰したお湯をポットに移すと だいたいそのくらいになるんです。 |
|
![]() |
熱い方がいいと思ってた。 |
| ぼくらもずっとそう思ってました。 そのほうがエキスが出るような。 でも、沸騰してると苦みが強いというか‥‥。 |
|
![]() |
それは、はっきりとちがうもの? |
| そうですね、そう思います。 ぬるめの方がまろやかだと。 |
|
![]() |
そうかあー。 お、ふくらんでる。 |
![]() |
|
| ぼちぼち、下におちてくるかと‥‥。 |
|
| ‥‥‥‥きました。 |
|
![]() |
|
![]() |
ぽたり、と。 |
| このくらいから、すこしお湯の量をふやします。 |
|
| ‥‥(集中)。 |
|
![]() |
|
| それにしても、この豆‥‥。 |
|
| ふくらみがすごい。 |
|
![]() |
|
| これは過去最高のふくらみじゃないでしょうか。 |
|
| そうかもしれない。 ‥‥‥‥そろそろ、フィニッシュですね。 |
|
![]() |
|
| では、お湯が落ちきらないうちに、 ドリッパーをはずします(はずす)。 |
|
![]() |
それも知らなかった。 |
| 日本茶だと「最後の一滴まで」ですよね。 コーヒーの場合は最後までお湯を落とすと、 アクが混じっちゃうんだそうです。 |
|
![]() |
それも、はっきりとちがうもの? |
| わりとちがうと思います。 えぐみが混ざるんですよ。 |
|
| 温めておいたカップに移して‥‥。 |
|
![]() |
|
| あ、これはきれい。 |
|
![]() |
|
| きれいですね。 |
|
| さあ、飲みましょう。 |
|
| カサイさん、いただきます。 |
|
![]() |
|
| ‥‥‥‥おいし。 |
|
![]() |
カサイさん、いただきます。 |
![]() |
|
![]() |
‥‥‥‥うん、おいしい。 |
| カサイさん、ぼくらも。 |
|
![]() |
そうね。 |
![]() |
|
| ‥‥‥‥これが、 妥協のない豆の味なんですね。 |
|
![]() |
‥‥うん。 |
| 上手に味を表現できないんですが、 おいしいです。 すっきりした酸味もちゃんとあって。 |
|
![]() |
|
| でた、めがねの曇り。 |
|
![]() |
‥‥なにそれ。 |
![]() |
|
| カサイさんもできますよ、めがねかけてるから。 やりますか? |
|
![]() |
‥‥‥‥。 |
![]() |
|
| カップを顔に近づけたときに、 わざと息をはくと、めがねが曇るんです。 |
|
![]() |
‥‥‥‥。 |
![]() |
|
| い、いや、あの、それだけのことなんです。 意味なんてなんにもないんですけど‥‥。 |
|
![]() |
‥‥‥‥。 |
![]() |
|
| ちょっと、おもしろいかなあと思って‥‥。 |
|
![]() |
‥‥‥‥。 |
![]() |
|
| ‥‥‥‥。 |
|
| ‥‥‥‥。 |
|
| ‥‥‥‥‥‥あ。 |
|
![]() |
|
| そうそう、そうです! 上手い!! 福田さん、アップで撮って!! |
|
| はい!(撮る) |
|
![]() |
|
| ありがとうございました! いやぁ、イトイさん、 カサイさんはほんとにやさしいです‥‥ね‥‥。 |
|
![]() |
|
![]() |
‥‥‥‥‥‥。 |
| ‥‥うそ。 ほんの30秒ほど前には起きていたのに。 |
|
![]() |
(すっくと立ち上がる) じゃ、ぼくはこれで失礼します。 |
![]() |
|
| あ、ごちそうさまでした。 |
|
![]() |
失敬(去る)。 |
| カサイさんの去り際は 何度見てもうつくしい‥‥。 |
|
| ‥‥ええと、山下さん、どないしましょ。 |
|
| どうしましょう‥‥。 なにしろぼくも、 イトイさんの寝オチというのは 初めて目の当たりにするんですよ。 ‥‥ほんとに寝てしまうんだ。 |
|
| しかもかなり深いですね。 |
|
| ええ、カフェインを摂取したはずなのに。 |
|
| どないしましょう‥‥。 |
|
![]() |
|
| カッパとウサギはこのあとしばらく、 ちいさな声で他愛のないおしゃべりをしました。 それからふたりは勇気を出して、 「イトイさん、風邪をひきますよ‥‥」 と眠りの国に遊ぶ人を現実に呼び戻したといいます。 「んーー」と目を覚ます糸井重里。 かちゃかちゃとコーヒー道具を片づけるカッパとウサギ。 こうして、 「コーヒーに賭ける男の闘い」は こんなになんでもない感じで後編の終了です。 このシリーズは、 前編の栓を抜くところがクライマックスでしたね。 |
|
| (次の展開につづきます) | |
![]() |