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ほぼ日手帳

糸井重里

・あるとき、「なんになりたいですか?」という質問に、
 「ホームランになりたい」と答えた。
 それを読んでいた人も何人かいて、
 「あれは、いいなぁ」と言ってもらった。
 ちょっとうれしかったな。
 ホームランは原子でできているわけじゃないので、
 物体として存在していない、名前のある「出来事」なのだ。
 しかし、たくさんの人がそれを目撃している。
 打った選手も、打たれた投手もいる、たしかにあったのだ。
 記録にだって残るし、1本2本と数えることもできる。
 なんなら写真や映像に残すことだってできる。
 だけど、それをここに置けと言われても、できない相談だ。
 だれかがホームランを持っているということもない。
 ホームランボールは、たしかにあるし、
 だれかが打ったという事実もあるんだけどね。

 そういうことから考えたら、恋愛もそうだ。
 これはホームランより、もっとややこしい。
 記録もないし、あったのかどうかも不明といえば不明だ。
 しかし、そこにあると二人が思っていれば、そこにある
 (この場合は、どっちか一人だけじゃアカンのだろうな)。
 そして、ホームラン以上に物体としては存在できない。
 むろん友情だって、そういうことだ。
 幸福にしたって、それを取り出して眺めることはできない。
 無理して「それ」を定義づけて、
 その定義に合ったものを再現することまでで精一杯だ。

 いきものをどんなに解剖しても、
 「いのち」がどこかにあるというものではない。
 だけど、たしかに「生きている」という事実はある。
 解剖しようが分析しようが、「いのち」は見つからない。
 生きているということの記録もできるし、
 みんながその「いのち」と出会っているのにね。
 思えば、「いのち」もホームランみたいなものだな。
 ロボットとかで、似たようなものはつくれるけれど、
 それは「いのち」に似たようなものでしかない。
 あ、その場でたのしむ音楽とかも「ライブ」っていうよね。 
 「ライブ(LIVE)」って、つまり「いのち」だ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
なんかとにかく、毎日のようにAI以後のことばかり考えてる。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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