糸井重里
・トルコの、ピスタチオを使ったお菓子を買うために
渋谷西武に行くことにした。
こういうきっかけをつくって、閉店する前の「渋谷西武」を
見ておきたいという気持ちがあった。
たしか、この秋のうちに無くなってしまうんだよな、
と思っていたが、その日が「9月30日(水)」だと知った。
知らないうちにふっと無くなっていたかもしれなかった。
じぶんのなかで、そういうものになっていたようだ。
少しの買い物をして、いくつかのフロアを少し歩き回って、
少し通路やら壁やら階段なんかも見て、
ありふれた感傷を味わってみたが、それは、
あんまりおもしろいことではなかった。
「どうだったら、よかったんだろう?」と、
半端な経営者みたいな気持ちもあって、つい考えてしまう。
さみしさよりも、難問を前にした悩ましさが勝ってしまう。
他人や評論家は好き勝手なことを言えるけれど、
どこで、どうしていたら、どうなっていたのか、
それをわかる人などいるのだろうか。
うまくいったことも、あきらかな失敗も、
混じりながらうねうねとここまで来たというわけだ。
真剣な責任者たちも、頭のいい参謀たちも、
年月のなかでたくさん入れ替わってきたことだろう。
さらに言えば、この9月30日の「閉店」が
悲しいものであるかどうかも、わかりゃぁしない。
ぼくも知ったかぶりなことは言えない。
19世紀のある時期に、デパート(百貨店)が生まれ、
時代と共に変化し大きくなり、そして‥‥いまに至っている。
デパートがしだいに変化し、消えていくことになっても、
「人びとがよろこんでいた」という事実は消えないはずだ。
そこにあり、そこに集まっていた「人びとのよろこび」は、
デパート(百貨店)というかたちでなくても、
どこかしらなにかしらに移って輝いているのではないか?
そんなことを考えもするが、ぼくにもよくわかっていない。
ふと「生活のたのしみ展」のことなど想像はしてみるが‥‥。
◆今日の質問047「買ってよかったなぁと思うものは?」
考えて、よろしかったらメールに書いて送ってください。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「お店のかたち」も、ひとつの「時代の発明」だと思うんだ。
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