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ほぼ日手帳

糸井重里

・ボクシングには、体重による階級制があります。
 かなりそれは細かく分かれていて、
 そのちょっとした重量の差で有利不利が多いに変わります。
 それとはまたちょっとちがいますが、
 他のスポーツでもプロ、大学、高校、中学などと、
 年齢や経験などによって競争する相手はちがっています。 
 また、男子と女子も体格を考慮されて、
 別の枠組みで試合が行われるようになっています。
 これは、知識や学問の世界でも同じようなところがあって、
 数学の大会だとか、将棋や囲碁などの場合でも、
 ある程度分かれたフィールドで力を競いあっています。

 しかし、社会に出ると、すべてが無差別級というか、
 年齢や性別とか経験や基礎的な修練の差などは、
 基本的に考慮されることはなくなります。
 比喩的な言い方ですが、大人が赤子の手をひねっても、
 大の男が若者を理屈で追い詰めても、
 仕事という試合の場面では問題にはならないでしょう。
 いったん、試合の場面、競争のなかに参加したら、
 もともとの力の差や組織の大小にハンデもなく、 
 勝てるものが勝つようなルールになっている。
 お金や人数をどれだけ投入しても勝てばいいわけで。
 おそろしや、ぶるぶるぶる。
 ちっちゃいからとか、弱いからとか、
 まだいろいろ足りてないからとか、なし。無差別級っす。
  
 社会の競争って、こんなに残酷であるにもかかわらず、
 あなたやわたし、きみもぼくも、生きてこられたのは、
 「試合に出ない」という選択があったからだと思うのね。
 君子も危うきに近寄らないけど、弱子も危険に近寄らない。
 わざわざ敗けるケンカにエントリーしないし、
 じぶんで階級別の試合にして生きているからでしょう。
 「のび太、逃げるのか」とか言われたってかまわない。
 参加しない理由さえも、言わなきゃならない理由はない。
 ここは挑戦できる、ここは勝ってみたい、という試合だけ、
 よく考えて戦えばいいのだと、みんな知っているのです。
 世界は、もちろん無差別級の強いもの勝ちルールだけど、
 小ザルだってメダカだって元気でやってますからね。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
自然界と同じように人間の社会も「棲み分け」があるよなぁ。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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