糸井重里
・言い方によっては角が立ちそうなので、
慎重に、ことばを選んで言わなきゃならないんだけど。
すっごく大きな、国だとか、文化圏だとかから、
近所のおやじやら、そこらへんのにいちゃんまで含めて、
「おれをなめるな!」という欲求は、
ひょっとすると、他のあらゆる欲望よりも、
強く奥深く激しいものであるような気がする。
争いごとであるとか、怒りの場面での言い分を、
徹底的に煎じ詰めると「おれをなめるな!」になる。
大河ドラマであろうが、ホームドラマであろうが、
戦争映画であろうが、ヒーローものであろうが、
衝突のからむシチュエーションの根底に流れているのは、
だいたい「おれをなめるなのテーマ」である。
「おれをなめるな!」という心の叫びは、
一般的には「プライド」「自尊心」みたいに呼ばれるが、
そういう「名詞」で整理できちゃうようなものじゃない。
「おれをなめるな!」は概念ではなく情動の叫びである。
損得でも割り切れないし、正しいからと納得もできない。
「おれをなめるな!」と認めさせるためには、
人はなんでもやりそうだし、自らの命さえ顧みない。
「おれをなめるな!」という心持ちを本物にするために、
人は努力もするし、我慢もするし、血も汗も流す。
ある意味では「なめられる」覚悟だってする。
いやぁ、いいことも「おれをなめるな!」にはあるのだ。
ただね、「おれをなめるな!」の看板のネジを、
ちょっとずつゆるめたほうが、逆に「自由」が手に入る。
「なめられない」ことと「自由」とでは、
どっちがいいかというと、後者のほうじゃないかな。
そこらへんは、各個人の生き方の問題なんだろうけどね。
◆no.013「読んだ本のこと、なんでも教えてください」。
今日のあなたへインタビューは、これを聞いてみます。
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