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ほぼ日手帳

糸井重里

・たとえば矢野顕子が、ずっと昔から
 「オーチャードホール」で演っていたかといえば、
 ぜんぜんそんなことはないわけで、ごくごくふつうに
 渋谷の「ジャンジャン」でライブやってた。
 100人足らずの客をぎゅうぎゅうに詰めこんで。
 山下達郎、高円寺だったかのライブハウスで演ってた。
 これも、もちろん100人足らずの客だった。
 RCサクセションがあのスタイルで再出発したときも、
 渋谷の100人足らずのライブハウスで演っていた。
 「ここにいるみんなが、もうひとりの友だちを
 連れてきてくれたら、客席はこの倍になるんだぜ!」と、
 ずいぶん具体的に語りかけていた。
 有名だったとか、人気があるとかないとかは、
 整理券が出るかどうかのちがいぐらいじゃないかな。
 どのアーティストも、好きな人には有名なんだけど、
 ひとりで大きな会場をいっぱいにするようなことは、
 そうそうできるものじゃなかったと思う。

 ただ、年表のようなものをたどれば、
 この年にはこの曲が出たとか、
 ここでメンバーがこうなったとか、
 記録として語られて、ファンはそれを知ってるんだけど、
 大きな渦をつくっていたわけでもないんだよね。
 大瀧詠一さんが、じぶんの福生のスタジオで、
 何枚も何枚もアルバムを出していたけれど、
 それは、聴きたくて待ってるファンだけが買ってた。
 人数はそれほど多くなかったんだと、いまさら気づく。

 100人だとか、200人だとか、せいぜい1000人だとか、
 そういう目に見える単位の数を前にして、
 歌がつくられたり演奏されたりしていたんだよなぁ。
 いわば、「手仕事」としての音楽が当たり前にあった。
 それを増殖させたり拡大したりして、
 いまみたいなメガヒットが語られる時代になる。
 ただ、いまの、あの大ヒットメーカーたちも、
 100人とかを目の前にするところから、
 出発しているはずなんだよね。
 「ヨーイドン」の時点では、みんな同じなんだよな。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
少ないお客さんの前での歌を、たのしく歌えることが大切。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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