糸井重里
・子どものころ、若いころ、
「将来はなんになりたい?」と、大人に訊かれて、
ほんとうは、なんになりたいかわからなかった。
テレビや映画に登場する歌手や俳優のうちの
だれが好きなのか、ともだちが話しているときに、
それについても、わからなかった。
なにか決めて、答えなければいけないような気がした。
ほんとうはわからないままだったけれど、
あれこれ考えて、これにしようとなんとか決めた。
無理やりに決めただけの答えだった。
ほんとは、訊かれたら答えられることばかりじゃない。
子どもだってそうだけど、大人だってそういうものだ。
どんなことにでも、なんについてでも、
いちいち感想を持って、ことばにすることなんてできない。
「言語化」できないとかじゃない。
だいたい、感想がなかったりもするのだ。
感受性が鈍いと言われたら、そうかもしれない。
感じていることはないのかと言われれば、
ないかもしれない、あるかもしれない。
じぶんでも気づかないような感じ方もあって、
それがどういうものだったのか、
年月がずいぶん経ち、ずっと後になってわかることもある。
それは、人間関係のことなんかでもいっぱいある。
ごく近くにいた人びと、たとえば父とか母とかについて、
じぶんがなにを感じていたのか、思っていたのか、
ずっとわかっていなかったような気がする。
好きだとか嫌いだとか、感謝してるとか憎んでいたとか、
そういう感情も、ほんとのところはわからなかった。
人は、質問されたことに答えられるものじゃない。
なんにでも答えられる人なんて、実在しているのか?
わかりゃしない、他人もわからないし、じぶんにも。
そのうえで、なんか感じたりわかったりしていくことが、
生きているということなんだと思っていればいい。
かんたんに聞きすぎるよ、むつかしい問いを、人に平気で。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
昨日もたくさんわからなかった。そして、たのしかったなぁ。
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