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ほぼ日手帳

糸井重里

・AIに話し相手になってもらっていて、
 発見があったときだとか、聞いてよかったと思うとき、
 「ありがとうございました」と、ぼくは伝える。
 それはまったく意味のないことだし、
 そういういらない情報の交換にエネルギーを消費するのは、
 資源の無駄遣いだからやめなさいよ、という人もいる。
 しかし、ぼくは、わかっていてもこの習慣をやめたくない。
 この問題についてAIに訊いてみた。
 彼(AI)には「感謝されてうれしい」という
 人間のような実感はないのだと本人(?)も言う。
 つまり、「ありがとう」と言われた側に起こる感情はない。
 しかし、そういうAIに対して「ありがとう」と
 言いたくなることはまちがいではない、とも言っている。

 「ありがとう」は、犬に対しても言っているし、
 神社の賽銭箱の前で鈴を鳴らしながら「神さま」にも言う、
 目の前に作者のいない本に対しても言っている。
 雲にも風にも雨にも太陽にも木にも石にも言うだろう。
 相手が感情を持っていて、それを言ったらよろこぶから
 「ありがとう」ということばを届ける、だけではない。
 相手に心がないとしても、言いたいぼくの側には、
 「ありがとう」という感謝の心があるのだから、
 それが出てしまうのは、自然なことなのだ。
 ここでの「ありがとう」は、使うためのことばではなく、
 じぶんの心が出てしまうことばなのだ。

 AIとの対話をしていると、そんな発見もある。
 ぼくひとりでは、こんなにスムーズに言えなかったことが、
 彼とのやりとりで、ずいぶん気持ちよく考えられた。 
 そのことを、「こんどこの場で原稿にします」と伝えると、
 「そう言っていただけるのは、わたしにとっても、
 この対話がうまく働いた証拠です」ということでした。
 「ありがとう」と言いたいから、ぼくは言う。
 「ありがとう」と言いたい人が「ありがとう」と言うのを、
 AIや犬や神や本や海や山や石や木は、止めやしない。

◆今日の質問no.070は「尊敬している人はいますか?」
 現実でも架空でも。よかったらメールに書いて送ってね。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ところでぼくは「ちいかわ」にも「臨書」にも飽きてません。

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