糸井重里
・「市川市動植物園」に、小さなおサルを見に行ってきた。
生まれてから半年くらいのオスのニホンザル、
名前はちょっと気の強そうな「パンチ」くんである。
昨年の夏に生まれたが、親ザルの育児放棄があって、
飼育員さんたちの人工哺育で成長してきた。
少しずつ群れの一員に戻れるよう社会化の練習をしてきて、
本格的にサル山のみんなと合流したのが1月19日だという。
たぶん、こういう例は、これまでにもあったのだと思うが、
今回の「パンチくん」については、
ちょっと人目に立つような理由があった。
人工保育されているときから、母親代わりのようにいた
「オランウータンのぬいぐるみ」といっしょに、
サル山の群れのなかに参加してきたのである。
ぬいぐるみはロボットじゃないので動かない。
しかし、パンチくんはお母さんと手をつなぎ、
子どもであるじぶんが連れて歩いているのだ。
それでもお母さんはお母さんなので、
くっついて甘えたり、抱かれて眠ったりしている。
群れのサルなかまには、まだ完全に溶け込んでいないが、
少しずつ遊んだり、めんどうをみてもらったりもしている。
その様子に心を動かされたサル山見学の人が、
「オランウータンを連れた子ザル」を写真に撮って、
SNSに投稿したのが、なにかのはじまりになった。
最初は事情あって人口哺育からスタートした子ザルが、
けなげにサルたちの社会に参加していく姿は、みんなの
「希望」そのもののように見えたのかもしれない。
「#がんばれパンチ」の応援ハッシュタグは広まって、
あっというまに全国的な人気者になりつつある。
ぼくも「パンチくん推し」として行った日曜日、
この動植物園は「前代未聞の大混雑」になったらしい。
たくさんの家族が、千葉県市川の郊外にやってきていた。
誕生の7月26日から、たった半年のストーリーである。
この先、小さなパンチくんがさらに成長して、
たぶんぬいぐるみのお母さんとも別れて
サルの群れのなかで見分けがつきにくくなったとき、
それがひとつのハッピーエンドなのだろうが、
まだ、もうちょっと小ザルの物語は続きそうだよ。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「小さな希望の物語」を、みんなが見つけたいんだろうなぁ。
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