糸井重里
・子どものころに「少年探偵団」という物語があった。
江戸川乱歩の書いた少年向けの探偵小説で、
さまざまな怪しい人物や設定が登場して飽きなかった。
明智小五郎という名探偵が中心にいて、
事件を解決していくのだが、その助手として
小林少年をはじめとする「少年探偵団」がいるのだった。
たぶん、昔の人は知ってると思うけれど、
敵役は基本的に怪人二十面相であった。
いまにして思えば、お話の構造はアメリカンコミックスの
「バットマン」とかによく似ているなぁ。
この「恐怖」と「知恵」と「勇気」の物語を、
小学生のぼくも真剣に読んでいたのだが、
この単行本シリーズには、一冊のなかに何箇所かの
「挿絵」というものがあった。
だいたい1ページで、黒インクの多い絵だった。
その絵がなかったら、文字だけの「探偵小説」を
読み続ける気にはなれなかった。
ただ、その絵を目に入れるのは、とても怖かった。
挿絵がないと読む意欲が失せるし、
その絵を見るのは怖いので、見ないようにしたい。
このややこしいココロについては、
だれにも言ってなかったが、いまでもよく憶えている。
「少年探偵団」ばかりでなく、少年向けの小説には、
当然のように「挿絵」があったような記憶がある。
「挿絵」がなかったら、張り合いがなかったとさえ言える。
あの、ああいう場面で「絵」を求める読者と、
それを送り出す編集者や画家の関係というのは、
いまは、あんまりなくなっているような気がする。
例外的に「新聞小説」は挿絵と共にあるんだよな。
絵が主体のようなマンガとはちがうのだけれど、
ずっと文字じゃぁ愉しみが少ないというような気持ちは、
もっと掬い上げてもいいんじゃないかと思った。

◆今日は質問no.030「笑うのは、どんなときですか?」
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