糸井重里
・昔は、マンガや映画で、時代劇がもっと多かったので、
時代劇的な教養が、子どもたちにも身についていた。
「お歯黒」だとか「仇討ち」だとか「浪人」だとか、
「武士は食わねど高楊枝」なんてことば、
小学生でもだいたい知っていたんじゃないかな。
そういうよくある時代劇的な知識のなかに、
「御前試合」というものがあってね。
将軍さまだとか、大名なんかの前で、
剣豪みたいな人たちが試合をするというものだ。
それなりの位のある身ぎれいな武士もいたり、
素浪人で身なりは汚いけれどふふふと笑ってるやつ、
クサリガマみたいな不思議な武器の使い手、
なんだかトーナメント方式らしかったな、
強いやつが勝ち抜いていくんだよね。
勝って、しかも強さをアピールして、殿様に認めてもらう。
仕官の道が拓けるとかのご褒美や、名誉や、金銭や、
真剣に戦う理由があったんだろうね。
なんにせよ、戦うけれど、戦争とはちがう。
「偉い人」の目の前で行われる前提の「試合」だから。
どう見られるか、どう審判されるかが主題になるわけだ。
ぼくもマンガや映画でしか知らないイベントだけれど、
いまの時代の「メディアのなかの論争」を見ていると、
これは「剣豪(自薦他薦を問わず)」が集まって、
「御前試合」をやっているように思えてならない。
昔だったら「殿様」の御前でやっていたことを、
「大衆(マス)」の御前でやっているというちがいはある。
相手が死んでしまうような真剣は使わないけれど、
木刀や竹刀だとか模擬刀を思い切り振り回す。
「やぁっ!」とか「とうぅ!」とか声も出すし、
口上も、応援も、戦略も、ハッタリや駆け引きもある。
結果的には「あんたは強い!」と認められるのが、
最終的な勝利ということになるのだろうか。
「我こそは」「我こそは」という声がこだまして、
試合会場がにぎやかになるほど「殿様(大衆)」も増える。
昔は剣の強さを誇ったのかもしれないけど、
いまは、なにの強さを競り合っているのだろうか?
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
御前試合もあれだけど、御膳汁粉があたくしは好きですね。
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