糸井重里
・吉本隆明さんには、ほんとうにいろいろなことを聞いた。
ある時期に聞いた話は、「ほぼ日」にも掲載されているし。
フリーアーカイブとして183回の講演もあるので、
興味のある人は、ぜひ読んだり聞いたりしてください。
吉本さんといえば、親鸞について書いたものも多くて、
ぼくらも『吉本隆明が語る親鸞』という本を出している。
宮沢賢治、マルクス、柳田國男などなど、
吉本さんが考える対象にしてきた人はたくさんいるが、
親鸞について書いたものは特別に多いようだし、
もっとも長い期間語ってきた人物であるように思えた。
ある日、あらためて吉本さんに、
「吉本さんは、親鸞には特に強い思いがあるようですが、
どういうところが惹かれる理由だったんですか?」
というようなことを、なんだか軽く訊ねてしまった。
どんな答えも想像してはいなかったが、
深くて興味深いことばが返ってくるような期待があった。
吉本さんは、どういう質問に対しても、
そこで考えられるいちばんいい答えを真剣に考えてくれる。
一見、遠回りしたように思えることがあっても、
その遠回り自体が質問を補強してくれるようなこともある。
このときに、ぼくが軽率に質問したのは、端的には
「どうして親鸞が好きになったんですか?」ということだ。
いつものように、吉本さんは訊かれたことを確かめるように
何度か首を縦にうごかして、口を開いた。
「それは…。ぼくの親の育った天草というところは、
浄土真宗の信仰に篤い地域で、うちのおばあさんとかは、
ほんとにまじめに信心していたんですよ。
そういうことはよく憶えていますけど、
その影響があったんじゃないでしょうかね」と言った。
育った家が親鸞の浄土真宗で、はじまりはそこである、と。
ふつうだ!(笑)…ものすごくあっけなかったけど、
ものすごくほんとの答えを聞いたように思えた。
吉本隆明として、親鸞についてたくさん考えたけれど、
もともとは「家が真宗で仏壇があって」ということだった。
ほんとうの、ほんとうのことを見つけるって、
年を取ってからのほうが得意になるんだな、と思った。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
芯のところに、なにがあるか。見てるのに、見えないんだ。
ほぼ日の更新時間は、土日祝も
毎日11時になりました。
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