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ほぼ日手帳

糸井重里

・家の上司が、いまは「書」にどっぷりはまっている。
 おそらく、それを職業にしている人以上に、
 「書」をやっているのではないだろうか。
 機織りに熱心だったときには、
 帯やら着物やらをずいぶん織っていたような気がする。
 なにか決めると、ある程度見極めるまではひたすら進む。
 たぶん、彼女の亡くなった父という人の遺伝だと思う。
 ぼくにとっての義父にあたるその人は、
 囲碁だとか、ボーリングだとかの腕前がすごかったという。
 なにげなく自慢そうにしているのも知ってはいたが、
 それを「ま、よくある腕自慢だろう」くらいに思っていた。
 ずいぶん年を取ってから俳句をはじめたのも知っていた。
 なにかに入選したとか、特選をとったという話も聞いた。
 それも、「ま、よくある話だろう」と軽く流していた。
 しかし、いまごろになって、ぼく自身が俳句に興味を持って
 「NHK俳句」だとかを見るようになったら、
 週ごとに選ばれる五つの句に入るのが、
 どれほど大層なことなのか、よくわかってきた。
 しかも、特選の一句というのは格別なものなのである。
 「お義父さん、すごかったんだな」といまさらわかった。
 もっと「すごいですね」と言わなきゃいけなかったな。
 上司も「わたしも、母も、ぜんぜんほめてやらなかった」
 と少しだけ反省まじりに言っていた。
 俳句についても、先生がいたわけでもなく、
 結社があったわけでもなさそうで、まったくの独学だ。
 しかも老人になってからのことだからなぁ。
 よっぽど一所懸命にやっていたんだろうなぁ。

 というようなことを、上司の「書」への打ち込みぶりを
 見ていて思い出すことになった。
 「趣味に夢中になるのは、似ているかも」と上司。
 「おれは、そういうところが、まったくない」。
 上司は、しみじみ「そうだねーー」と同意した。
 続けて、「でも、なんかあるような気がする」と考えて、
 いろいろ、釣りはとか仕事はとか上げるのだが、ちがう…。
 やがて、とうとう上司は発見したようだった。
 「人とか、なにかを応援するのが趣味なんじゃない?」と。
 そうか、そしたらそれは「ほぼ日」じゃないか。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「ほぼ日」が仕事で、「ほぼ日」が趣味だということなのか。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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