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ほぼ日手帳

糸井重里

・関東で食べる「くず餅」は、
 小麦のでんぷんを原料にしていて、
 白い不透明なぷるぷるの「もちっとしたもの」である。
 同じように「くず餅」と呼ばれているが、関西はちがう。
 葛粉を練ってつくった透明な「ぷるぷるしたもの」である。
 ぼくは、もちろん! どちらも好きだ。
 で、言いたいのは、ぼくの好物のことではない。
 どちらの「くず餅」も、そのまま食べるものではないのだ。
 目の前にそれが出されて、どうぞお食べくださいと言われ、
 そのまま「はい、いただきます」という人はいない。
 黒蜜や、きなこをかけて食べるものなのだ
 (葛のほうは、あんこを包んでまんじゅうにしたり)。
 「くず餅」が好きだとか食べたいとか言う人でも、
 実は「黒蜜で味をつけたくず餅」が好きなのである。
 「おいしいね」という味のほとんどは、黒蜜だ。
 しかし、そういう人でも、黒蜜だけ飲んだりはしないし、
 やっぱり「くず餅が好き」と言っていいのだとは思う。

 しつこく似たようなことを言うことにする。
 あんみつや、みつ豆も、基本的に寒天を食べるものだ。
 しかし、ご承知の通り、これも、おそらく、
 寒天だけそのまま食べる人はいないだろう。
 黒蜜なり、白蜜をかけて、なんならあんこも乗せて食べる。
 でも、あんみつやみつ豆は、寒天を食べるおやつだ。
 ついでに言うが、いちごのショートケーキの上に、
 いちごが、たとえ半分にカットしたものでも、
 乗ってなかったらどうだろうか? 
 これは「くず餅」や寒天の場合とは、少々ちがうけれどね。

 本体が、主題が、名前が「くず餅」であっても、
 黒蜜(そしてきなこも)がなかったら、
 「だいたいの人間はあんまり食べない」のである。
 人間が食べるから「くず餅」ができたのであって、
 「くず餅」を定義するために「くず餅」があるのではない。

 よくなにかの企画を完成させるときに、
 黒蜜をかけない「くず餅」を出してしまうことがある。
 というようなことを、社内で話していたのだが、
 今日のこの文は、いつもより1行だけ多めに書いてみた。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
なんでも、人から人になんだよ。黒蜜やいちごを忘れるなと。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

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