| 糸井 | ぼくら「ほぼ日」も、 ヤマトさんに仕事をお願いしてる
 ちいさい会社のひとつですけれど、
 「ヤマトにしてくれ」という
 お客さんの声で、そうすることに決めたんですよ。
 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 木川 | そうですか、ありがたいですね。 
 | 
							
								| 糸井 | お客さんの要望と 自分たちの実感が合ったんです。
 ヤマトさんにぜんぶお願いするようにしたのは‥‥
 (同行したほぼ日の乗組員に)何年前だった?
 
 | 
							
								| ほぼ日 | 6年ぐらい前です。 配送料は上がるんですけど、
 すべてヤマトさんにしました。
 
 | 
							
								| 糸井 | 上がったことで、 クレームはぜんぜんこなかった。
 | 
							
								| ほぼ日 
 | 一件もこなかったです。 
 | 
							
								| 木川 | ありがたいです。 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 糸井 | この人(ほぼ日ストア担当・西田)が、 その担当をやってるんです。
 配送の問題が、ぐんと減ったんだよね?
 
 | 
							
								| ほぼ日 | もう、歴然と減りました。 
 | 
							
								| 木川 | それはうれしいですね。 
 | 
							
								| ほぼ日 | 配送料が上がったのに お客様たちはよろこぶという、
 すごい体験をさせてもらいました。
 
 | 
							
								| 糸井 | お客さんたちは、 違いをわかっているということだよね。
 
 | 
							
								| ほぼ日 | そうですね。 
 | 
							
								| 木川 | うちの会社と他の宅配会社さんの違いは、 やっぱりそうですね、
 誰の方を向いて仕事をしているか
 という部分だと思います。
 われわれはいつも、
 受け取るお客様の方を向いています。
 最後に受け取るお客様の利便性を
 最大にしたい、と。
 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 糸井 | 受け取る方が大事。 
 | 
							
								| 木川 | でも受け取るお客様というのは、 運賃を払ってくれる人ではないんです。
 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 糸井 | そうですよね。 
 | 
							
								| 木川 | 基本的には受け取るだけの人です。 
 | 
							
								| 糸井 | ほんとだ。 お金を払うのは宅急便を送る人だ。
 
 | 
							
								| 木川 | ですからふつうの宅配会社は、 お金を払ってくれる人の方を向きます。
 
 | 
							
								| 糸井 | ‥‥大きな違いですね、それは。 
 | 
							
								| 木川 | われわれは、 受け取るお客様にこんなによろこんでもらえる、
 ということを商品のメリットにしているわけです。
 
 | 
							
								| 糸井 | そのお話がそのまま、うちのお客さんに よろこばれている理由ですよね。
 なるほどなぁ‥‥。
 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 木川 | 通信販売の場合もそうです。 お金を払うのは自分で、受け取るのも自分。
 
 その場合は、
 受け取る自分のよろこびのひとつに、
 「早さ」というのがありますよね。
 
 | 
							
								| 糸井 | はい。 
 | 
							
								| 木川 | インターネット通販では、 夜中の12時が発注・受注のピークなんです。
 その時間までにネットで注文された商品を
 われわれは朝8時にお届けしようと。
 
 | 
							
								| 糸井 | はい、やってますよね。 
 | 
							
								| 木川 | 最短4時間で届けする。 これはちょっと他の会社にはできないですよ。
 翌朝に届く荷物というのは、
 ふつう夜の10時くらいには
 トラックに載せておかないとダメですから。
 でもヤマトは、朝に届けることができる。
 なぜできるのか。
 タネ明かしをするとですね、
 われわれは夜中にも
 表に出してないダイヤを走らせているんです。
 何のためかというと、
 ミスをリカバーするために。
 たとえば東京から大阪に送った荷物が、
 手違いで名古屋に行ってしまった。
 これを翌朝までに大阪に戻さないといけない。
 そういうことが起きたときのために、
 空っぽでもいいから、便を走らせています。
 名古屋に行ってしまった荷物を
 これに載せるんです。
 そうやってミスをカバーする。
 こんなことをやっているのは、
 世界中でヤマトだけです。
 ご存じなかったですよね?
 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 糸井 | そんなすごいことははじめて聞きました。 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 木川 | そもそもこの仕組みは、 品質維持のためにやっていました。
 100%コストになるけれど、
 これをやることによって
 ヤマトの荷物はちゃんと届く。
 荷物というのは伝言ゲームと同じように
 人から人へ渡っていきますから、
 ミスはある確率でかならず起きるんです。
 それをカバーするための
 純粋なコストだったんですが‥‥
 それを商品にしたんです。
 つまり、その便に載せれば、
 夜中の2時に荷物を出しても朝には届く。
 
 | 
							
								| 糸井 | はあー‥‥。 
 | 
							
								| 木川 | 夜中に注文して朝に届いたらうれしいですよね。 それが1日先になってしまうと、
 かなり返品されるんです。
 
 | 
							
								| 糸井 | ああー。 
 | 
							
								| 木川 | 返品率が飛躍的に上がってしまう。 やっぱり買いたいときが
 いちばんほしいときなんですね。
 注文してから時間が経つと、
 会社の帰り道でもっといいのを見つけたりして、
 届いたものを返品してしまうんです。
 
 | 
							
								| 糸井 | そういうものですよねぇ。 
 | 
							
								| 木川 | 一度返品されたものは新品として売れません。 したがってセカンダリーマーケットへ売るか、
 廃棄するかになります。
 それを処理する人員もスペースも要りますから
 トータルのコストは大きくなります。
 
 ヤマトのこのサービスは運賃が高いです。
 でも早く届けば、
 よろこんでもらえて返品が減って、
 物流コストはうんと下がる。
 
 こういう発想は、
 誰の方を向いていたからできたのか。
 通販業者の方ではありません。
 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 糸井 | 受け取る側ですよね。 
 | 
							
								| 木川 | 受け取るお客さんの方を向いて、 何がいちばんよろこばれるかを考えたことで
 うまれたサービスなんです。
 
 | 
							
								| 糸井 | ‥‥もう、ほんとうにぼく、 洗脳されてますよ、今日(笑)。
 いや、まさしく、
 「知は力なり」ということですよね。
 
 | 
							
								| 木川 | そうですね、最後は「知」。 
 | 
							
								|  |  | 
							
								| 糸井 | いまのお話の原点になった、 「最終的に受け取るお客さんを見ている」
 っていうのは、いつ誰が考えたことなんですか。
 
 | 
							
								| 木川 | これは宅急便ビジネスをはじめたときから ずっとそうなんです。
 だから、小倉昌男さん。
 
 | 
							
								| 糸井 | やっぱり天才的なんだ‥‥。 いやぁ、そのDNAっていうのは、
 長持ちするものですねぇ。
 
 (つづきます)
 |