
第19回
石と禅のことなど。
石と禅のことなど。
糸井 |
藤田さんは、趣味の「石」を、 やってらっしゃったんですか? |
藤田 |
ええ。ぼくは、石、 やりはじめるの、早かったんです。 |
糸井 |
石って、最後に 行き着く趣味だっていうじゃないですか。 今もやってらっしゃるんですか? |
藤田 |
石はもうね、床が抜けそうになって、 みんなあげました。少し残ってますけどね。 |
糸井 |
あれって、そもそも、 どういう趣味なんですか? |
藤田 |
あれはね、あの、 もともとの石の形を変えて 削りだしていろいろかたちを作るのは、 あんまり、ぼくは好きじゃなくて、自然に、 いろんな姿になっている石が、好きですね。 例えば、自然にできた石が 富士山の形をしていたりね……。 それから、崖がこうあって、 そっから白い滝がダーッと落ちてる形の いい石が、そのままあったり。 それから、険しい海の波が かぶるような岩になってるようなものが スッとあったり。 そういうものの、なんか、その姿を見る……。 |
糸井 |
見立てるんですか? |
藤田 |
ええ。見立てていくんですよね。 自然にできてるわけ。 極端なのは、崖があって、白い滝があって、 その滝に橋が架かっていたりする。 |
糸井 |
自然石で。 |
藤田 |
はい。 「養老の滝」っていう名前で、 これは有名な石ですけど。 自然でそうなってるのがあるんですよ。 これが、おもしろいんです。 一日中じーっとこうやって、 霧吹きでシュッシュッて吹いて。 で、水を吹いてやると、 石が生きてくるんですよね。 ぬらしてやると。 |
糸井 |
ふーん。 |
藤田 |
それをね、全国歩いて集めるんですよ。 |
糸井 |
移動するのは、野球の仕事があるから、 逆にいいですね。 |
藤田 |
うん、行けるんです。 土地土地に、 そういう石の好きな人がいましてね(笑)。 その家に行ってね。 |
糸井 |
趣味多いですね、藤田さん(笑)。 |
藤田 |
いや、ぼくは、いろんなもんやって、 長続きしないですけどね。 それで、石をいちばん持ってたのは、 名古屋の人だったですけど。 旅館をひとつ潰して、部屋に ぜんぶ、石をずーっと飾っておいて……。 あれを見ると、見事なもんですよ。 |
糸井 |
禅とか、 そういうのに繋がるような? |
藤田 |
禅……ぼくは、川上さんに、 もう何回も、毎年誘われましたけど。 |
糸井 |
それは、ダメなんですか? |
藤田 |
ああいうね、じーっとしてね、 座禅組むっていうのはねぇ(笑)。 ちょっと教わりましたけどね、座禅もね。 とてもじゃないけど、腰が持たないです。 |
糸井 |
そうですか。 |
藤田 |
あれは大変ですよ。 |
糸井 |
座禅って、 ものすごい長い時間、組むんですか? |
藤田 |
朝、3時に起きるでしょう? それから2時間、5時まで禅を組んで。 それから、6時に食事をするんですよね。 お粥で、お新香2枚ぐらいかなぁ? 音を立てて お新香食べちゃいけないっていうんですよね。 で、それでこう、きれいに掃除をして。 それからまた、午前中2時間、座禅組んで。 それから、掃除したり運動したりとかして。 で、確か、1日の自由時間が 2時間ぐらいしかないんですよ。 あとは座禅。 それはまあ、座禅を組む修行の1ヶ月ですけども。 |
糸井 |
それで1ヶ月なんですか! |
藤田 |
1ヶ月やるんです。 それも真冬にね、岐阜の山ん中の、 正眼寺っていうところでね、1ヶ月(笑)。 |
糸井 |
藤田さん、やられたんですか? |
藤田 |
ちょっと行ったんです。 もう、アゴ出して帰ってきましたけどね。 |
糸井 |
え、1ヶ月のうちの……。 |
藤田 |
1ヶ月のうちの2、3日、行ってきました。 だから、禅とは言えないんですけど。 それで、終わると精進落としって言って、 郷へ行って、ドンチャン騒ぎして 帰ってくるんですけどねぇ。 |
糸井 |
よく精進落としっていう言いわけをしながら、 騒いでるのは、そっからきてるんですね。 |
藤田 |
もう、あれは、 あんな苦痛なところから解放された喜びでね、 やるんですよ(笑)。 |
糸井 |
現世に戻る、と。 |
藤田 |
そうです。 川上さんはもう、毎年、冬に 10年ぐらいは行きましたかね。 1ヶ月の修行の期間。冬場で……。 そこへ行って、それはもう痩せ細って、 厳しい顔して帰ってきますよね。 |
糸井 |
それは、 川上さんを変えたんでしょうかねぇ。 |
藤田 |
うん、やっぱり、変えたことは確かですね。 相当なナマグサだったですからね、あの人もね。 もうしたい放題ね、言いたい放題で、身勝手で、 ひどかったけど、そういうのは、消えましたから。 |
糸井 |
ふーん。 |
藤田 |
やっぱり、あれが効いてるんでしょう。 それと、物事のなんていうか、結論っていうか、 これが正しい正しくないっていう分かれ道を、 はっきり知ってくるんですね、禅を組むと……。 |
糸井 |
禅っていうのは、1回こう、 飢餓状態に置くってことですよね、 大きい意味ではね。 |
藤田 |
「こういう問題はどうか」 って持ちだされたときに、これが正しいよ、 っていう方向づけ、川上さんは早いですよね。 即座にできますから。 |
糸井 |
藤田さんは生臭いまんまでいられたんですか? |
藤田 |
もう、ナマグサの頂点だったですね。わはははは。 |
2015-05-02-SAT
タイトル
体温のある指導者。藤田元司。
対談者名 藤田元司、糸井重里
対談収録日 2002年10月
体温のある指導者。藤田元司。
対談者名 藤田元司、糸井重里
対談収録日 2002年10月
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