
第2回
「精一杯」ということ
「精一杯」ということ
糸井 |
今年の原さんのチームが 藤田さんの時と似てるなぁと思うのは、 若手の選手の一人一人、2軍にいる選手や 1軍スレスレの選手を原さんがよく見ていて、 「‥‥そんな選手、いたのかよ!」 という人を出している。あれはすごいですね。 |
藤田 |
ええ。 それがまた、はたらくんですよね。 だから、あの連中のレベルが 上がってきているのか、 いちばんイイ時をつかまえて使っているのか、 どっちかだと、思うんですけどね。 両方かもしれませんけど。 何しろ、今年はうまいですよ。 ピタッピタッとつかまえて。 |
糸井 |
「この人、いたのかよ!」という気分って、 ファンとしては失礼なんだけど、 やっぱり野球って、ある程度 固定したメンバーをイメージしているから。 |
藤田 |
そうなんです。 力のあるヤツが出ていて、 ある程度の成績を残す。 力のないヤツは、なまじ出たって、 そこそこの働きしかできないのがふつう。 原が出す選手たちは、 自分の力を倍を出してくるんですから、 おもしろいですね。 |
糸井 |
あれは、イチOBとして見ていても 楽しいですよね? |
藤田 |
そうですよ。 「何でこんなことになるんだ?」 と思うようなことがありますし。 「どうやっているんだろう?」 と見に行ってみたいような気がしますね。 |
糸井 |
ファームには今、誰がいるんですか。 |
藤田 |
淡口がいます。(※淡口2軍監督) |
糸井 |
へぇー! 要するに、今のジャンアンツというのは、 首脳陣を「同じ釜の飯を食った仲間」で 固めていますね。 |
藤田 |
はい、そうなんです。 |
糸井 |
特に誰がというんじゃなくて、 みんな、「選手あがり」の印象がすごく強い。 |
藤田 |
「選手あがり」の中でも、 特に、選手を最後までまっとうして 終わった人間たちがいるわけです。 最後、いいかげんに崩れたような選手はいない。 全部やり切った人があがっていったから、 選手たちも文句が言えないです。 あれが、最後クタクタになって、 いいかげんなことをした人がコーチになったら、 集まる選手が、信用しませんから。 その点、スタッフもいい人選をしている。 |
糸井 |
吉村、斎藤という顔を見たらね。 |
藤田 |
ええ、そうなんです。 精一杯やった人たち。 |
糸井 |
「精一杯」という言葉を、藤田さんは よくお使いになるような気がするんだけど、 たぶん、「精一杯」がお好きですよね? |
藤田 |
ええ。 「精一杯」は、好きですよ。 「これ以上できないよ」というところまで やっている人がイイんですよ。 |
糸井 |
「精一杯」ってイイですよねぇ‥‥。、 やっぱり、かわいいですよね。 |
藤田 |
そうなんです。 「精一杯」というのはかわいいんですよ。 ぼくはだから、あの力のない川相なんか、 かわいくてしょうがないですよ。 |
糸井 |
川相はね、いいですよね。 |
藤田 |
一生懸命になって やっている姿がいいんです。 |
糸井 |
川相、選手の間で尊敬されてるじゃないですか。 |
藤田 |
そうですね。 |
糸井 |
あれはほんとにいい景色ですね。 |
藤田 |
いい景色です。 常に怖い顔してますから。 ベンチの中でも、 気合いがみんなに入ってなかったら、 ひとりで怒るんですよね。 「気合い入れろ!」裏で怒鳴っているんです。 |
糸井 |
だって、 「川相ファンクラブなんだ」 って選手たちが言ってましたからね。 陰で聞いてましたけれど、 「みんな、川相ファンクラブなんだからな」と。 前に、最近ダメだなあみたいに、 ぼくが誰かに言ったことがあるんです。 「川相、力ないなぁ」とか言ったら、 「みんな川相ファンクラブだから、 そういうこと言うの、気をつけろよ」って。 |
藤田 |
ああいう真剣にいつでもやっているやつは、 みんなでそれなりに見てやった方がいいですね。 |
糸井 |
後半の不幸つづきのときの村田、 あれもふつうの人間だったら潰れていますよね。 だから、根っこにある明るさというか‥‥ いい男ですよね。 |
藤田 |
ぼくは、元木が ああいうふうになってほしいんです。 元木は十分なれる素質がある子なんですけど、 つい、休むほうにまわっちゃうんだ。 |
糸井 |
やっぱり才能があり過ぎるんですかね。 |
藤田 |
気づいていないんですね。 そこそこ、できているからね。 |
糸井 |
だから、おもしろいなと思うのは、 才能があり過ぎるというのは、 かえって邪魔なんだなということも‥‥。 |
藤田 |
ええ。 若いときは、イイですよ。 しかし、力が衰えてきだした時には、 「才能」というものが一番邪魔なんですよ。 |
糸井 |
ぼくは最近、 清原さんに時々会うことがあって、 話をすると、やっぱり才能だけで やってこられた時間で、 相当ムダをしてきたそうなんです。 その間にやってこなかったことで ケガがあったりとか、そういう過去のことを、 ちょっと悔しそうに言っていますね。 |
藤田 |
その体験は、将来生きるでしょうけどね。 |
糸井 |
才能のない選手というと失礼だけど、 川相さんなんかは、 プロの選手からいうと弱いんですか。 |
藤田 |
Bクラスです。 |
糸井 |
あと、どんな選手がいますか。 Bクラスだけどイイなというのは。 |
藤田 |
Bだけどイイなというのは、 やはり‥‥簡単にはいません。 |
糸井 |
あ、そうですか。珍しいんですか。 |
藤田 |
珍しいです。 だから余計、目立っちゃうんですね。 |
糸井 |
それほど選ばれた人たちの集団なんですね。 |
藤田 |
そうですよ。 何千人のうちの1人が入ってくるわけですから。 何万人に1人かもしれないですね。 それをまた、ふるいにかけていくわけですからね。 |
2015-05-02-SAT
タイトル
体温のある指導者。藤田元司。
対談者名 藤田元司、糸井重里
対談収録日 2002年10月
体温のある指導者。藤田元司。
対談者名 藤田元司、糸井重里
対談収録日 2002年10月
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