本を読むように、 毎日、街を読んでいた。 平武朗さんのファッション・デザイン
それは、2007年の冬のこと。 糸井重里は、あるセーターに一目惚れしました。 続けてもう一枚買ってしまったほど気に入った そのセーターをつくったのは、 「デザーティック」というブランドのデザイナー、 平武朗(たいら たけあき)さん。  28歳、まだ若いけれど、 とても魅力ある洋服をうみだすこのデザイナーに、 ひょんなことから、 実際にお会いすることになりました。  みんな、いま、どんな洋服が着たいんだろう?  それに対して、デザイナーは  どんなふうに洋服をつくっていけばいいんだろう? 糸井重里と、語りあっていただきました。
2008-04-02 第1回 着る人の気持ちでつくるデザイナー
2008-04-03 第2回 10年間、毎日、洋服屋をめぐってきた
2008-04-04 第3回 自分が「よろこぶ」ことをする
第1回 着る人の気持ちでつくるデザイナー
糸井 まず、平武朗さんという、この若いデザイナーさんを
読者の多くがご存じないと思いますので、
ご紹介の意味を込めて、ちょっとお話しましょうか。
平 よろしくお願いします(笑)。
糸井 ぼくが、ふだんよく利用している
10 corso como COMME des GARCONS
(コルソコモ)というセレクトショップが、
事務所の近く、青山にあるんです。

ある日、そのお店にふらりと入ったら、
親しくしている店員さんに、
一枚のセーターをすすめられたんですよ。

これ、まだご紹介してないですよねって。

平 はい。
糸井 そのときは、カタログ写真を見せられたんですけど、
なんというか、
まるで「すてきな絵はがき」のように見えたんです。
平 絵はがき、ですか。
糸井 なんか、額ぶちに入ってるみたいに思えて、
写真を見たとたん、もう「ほしい!」って。

それが、今日、ぼくが着てきたこのセーター。
ここにいる平さんが、デザインしたものです。

平 はい、「リキッドニット」というシリーズです。
糸井 さっそく買って、よろこんで着ていたら、
じつは、もっと種類があったんです。

そこで、もう一着、デザイン違いを買ったんですよ。

平 それは、ありがとうございます!
糸井 どうして自分は、こんなによろこんでるんだろう‥‥って、
それからちょっと、考えました。

もちろんね、見たとたんに「ほしい!」なんて思える
洋服に出会うことなんて滅多にないから、
そういう「出会いのうれしさ」というのは、あったんです。

平 ぼくも洋服屋さんを回るのが大好きなので、
そういう感じ、よくわかります(笑)。
糸井 こんなセーター、見たこともないでしょう?
なのに、奇抜すぎるってわけじゃない。

文法は正しいんだけど、思いきりがいいというか‥‥。

平 無地のスウェットに、
まるで、液体を上からドバーっとかけちゃったみたいに
カッティングした古着のセーターを縫い合わせて、
1枚にしているんです。

いわゆる「古着のリメイク」ですから、
ぜんぶ1点もので、手がかかるぶん、
自分としても愛着のあるシリーズなんですよ。

糸井 そのデザインセンスが「すごいなぁ」って
思ったのと同時に、
単に「気に入った洋服を買った」というだけじゃない、
別のうれしい気持ちも、あったんですよね。
平 えっと、それは‥‥。
糸井 なんだか、このセーターをつくった人と
すうーっと親しくなれたような気がしたんです。

実際、会ったこともなかったんだけど(笑)。

平 それは、洋服のデザイナーとして、
すごく、うれしいことばです。

自分のつくった洋服をとおして、
そういうコミュニケーションが生まれたらいいなって
ずっと思っていましたから‥‥。

糸井 そうしていたら、今年の2月くらいに、
平さんご本人から
「ほぼ日」宛にメールをもらったんですよね。
平 はい、コルソコモの店長さんから
糸井さんが
ぼくのセーターを買って下さったことをお聞きして。

以前から「ほぼ日」はよく読んでいましたから、
すごく、うれしくなっちゃったんですよ。

たくさんのメールが届くでしょうから、
読んでもらえるかどうかもわからないけれど、
ひとこと、お礼が言いたくて‥‥。
着てくださって、ほんとうにうれしいですって。

糸井 ぼくらもTシャツなんかをつくっていますから、
その気持ちは、すごくよくわかるんです。

それで、近いうちに会いましょうって
お返事を出したんですよね。

平 はい、ビックリしました。
自分からメールを出しておきながら(笑)。
糸井 でもね、こうやって、平さんご本人に
じっさいにお会いしてみたら、
もうひとつの「うれしい気持ち」の理由が、
なんだか、わかるような気がしてきたんです。
平 それは、どういう‥‥?
糸井 平さんという「つくり手」は、
「着る人の気持ち」で、
洋服をつくっているんじゃないかと思うんですよ。
平 あ‥‥それは、つねに心がけていることです。
糸井 どの洋服が気に入るか、気に入らないかって、
ぼくたち「着る人の気持ち」じゃないですか。

平さんというデザイナーは、つくり手であるまえに、
その「着る人の気持ち」が
徹底的に研ぎすまされているなぁって、感じるんです。

つまり、デザイナーとしてのこだわりとか、
職人技を見せつけるというよりも、
「洋服を着る側の人」が、
どんなものを「うれしい」と思うのかを、
とても、たいせつにしている人なんじゃないかなって。

平 はい。
糸井 ぼくは、以前からずーっと、そういうデザイナーと
いっしょに何かしてみたかったし、
そういうデザイナーがつくったセーターだから、
なんだか、
うれしくなっちゃったんだと思うんですよね。
平 たしかに、ぼくは、
まず着る側の人として、洋服が大好きなんです。

つくり手となった今でも。

糸井 だから今日は、平さんがどんな道を経て、
「着る人の気持ちでつくるデザイナー」になったのかを、
お聞きしてみたいと思うんですが‥‥いいですか?
平 なんか緊張しますけど‥‥よろしくお願いします!(笑)
  <つづきます>
 
Liquid Knit Series Vintage
無地のスウェットの上から、
まるでニットの柄が垂れてきたようなアイディアは、
まだ専門学校の学生だったころに、思いついたもの。
「2つの素材が液状化して、さかい目なしに溶け合う」
そんな感じをやりたかったんです。

Desertic をはじめてすぐにスタートさせ、
それからずっと続けている、
自分自身にとっても愛着のあるシリーズです。

長い時間をかけて収集してきた
ヴィンテージのセーターを、
無地のスウェットに縫い合わせてつくっているので、
すべて「1点もの」です。

セレクトしている古着は、
70年代から80年代にかけての、ヨーロッパ、北欧、
アメリカのヴィンテージセーター。
日本では、あまり見たことない柄、
きれいな柄、着やすい柄のものを、選んでいます。

 
Primitive Fragment Tribal Textile Print Top & Cut Jacquard Dress
美術館や博物館などでやっている民族衣装展の
ミュージアムショップにあったらうれしいのは、
どんな洋服だろう‥‥
そんな想像からうまれたシリーズです。

エスニック柄の「かけら」をひろってきて、
洋服にはりつけてみる。
民族衣装のエスニックなテイストを
現代の洋服に取り入れるなら
それくらいの「控えめさ」がいいんじゃないかと
思っています。

具体的には、
ネパールや南アフリカの民族衣装に使われている
素朴な柄や伝統的な模様を、
シャツの裾などに断片的にプリントしています。

2008-04-02-WED
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