HOBONICHI

Yasashii Towel 2024 SUMMER

やさしいタオル2024 vol.2pink pepperによる、
2種類のお花のタオル。

「pink pepper」は、
栗原あずささんと脇田あすかさんによる、
オリジナルスカーフのブランドです。
この夏「やさしいタオル」を
デザインしてくださったおふたりは、
大学時代から尊敬し合い、
影響を受け合ってきたのだとか。
出会ってからの歩みや、
お互いの魅力をのびのびと生かす
デザインについて、お聞きしました。
前編後編でお届けします。

> pink pepperプロフィール

2016年、グラフィックデザイナーの
栗原あずささんと脇田あすかさんが立ち上げた
プロダクトブランド。
「身にまとえるグラフィック」として、
スカーフを中心に制作している。

> 栗原あずささんプロフィール

1993年生まれ。
東京藝術大学デザイン科大学院を修了後、
デザイン会社勤務を経て独立。
広告やブランディングなどに携わるほか、
イラストレーション・ドローイングを中心にした
作品制作を行っている。

> 脇田あすかさんプロフィール

1993年生まれ。
グラフィックデザイナー・アートディレクター。
東京藝術大学デザイン科大学院を卒業後、
コズフィッシュを経て独立。
あらゆる文化に対してデザインで携わりながら、
作品を制作・発表をしている。

1.
自由と信頼でできている。

──
きょうはよろしくお願いします。
おふたりは、大学の同級生だったと
お聞きしました。
栗原脇田
そうです! 
──
すごい、息がぴったりです。
脇田
ふふふ。
大学に入学した当初からの同級生なんです。
大学院の研究室でも一緒でした。
栗原
まるまる6年間、一緒に過ごしたことになります。
──
ベストフレンドですね。
栗原
自分たちで「ベストフレンド」と言うことは
あまりないですけど(笑)、
たしかに親友みたいな感じです。
脇田
懐かしの「心の友」だね。
栗原
そうそう、「心友」!(笑)
──
pink pepperを結成なさったのは、
どんなタイミングだったのですか? 
栗原
大学院に入ったときでした。
それまで、
同じイベントに出展したことはありました。
でも、それぞれ自分のものをつくっていて、
一緒にやるということはなかったんです。
同じ研究室に入ってから
「なにか一緒にやりたいね」
という気持ちが出てきて、
pink pepperを始めました。
脇田
大学院を修了してからは、
別々のデザイン会社に就職したのですが、
その間もpink pepperは細々と続けていました。
いまはふたりともフリーランスとして独立して、
普段は各々デザイナーとして活動をしています。
──
環境が変わっても、
関係性は変わらずに続いているんですね。
pink pepperをメインに
お仕事をしていこうと考えて、
それぞれ独立なさったのでしょうか。
脇田
その考えは、あまりなかったです。
もちろん、フリーランスになるタイミングで、
pink pepperの運営と発展に
力を入れる選択肢もありました。
でも、pink pepperは、メインの仕事というよりは
「趣味」のイメージで続けたかったんです。
栗原
pink pepperでは、
「売れなきゃいけない」
「もっと有名にならなきゃいけない」
といったことを考えすぎずにいたいと
思っています。
いまやりたいことや、
ほんとうに自分がかわいいと感じるものをつくって、
気に入ってくださる方に届けたいです。
脇田
「こうした方がpink pepperっぽいね」
と考えることはありますが、
「売れそうだからこっち」というふうには
選びたくなくて。
自分たちが心から好きなものをつくれる
pink pepperという場があることは、
ありがたいです。
栗原
自由だからこそ
「なにをつくりたかったんだっけ」と
悩むときもあるんですけどね。
──
そうなんですね。
pink pepperで考えたり悩んだり、
実現したりしたことが、
普段のおふたりのお仕事に生きることも
ありそうです。
栗原
自分たちでやりたいことをやっている
pink pepperでつくったものが、
それぞれの「名刺」のようになってくれているんです。
スカーフを気に入ってくださったかたから、
別のデザインのお仕事をいただけたり。
脇田
今回のタオルも、
まさにその流れでつくらせてもらえて。
──
おふたりのデザインにはそれぞれ特徴がありますが、
pink pepperのスカーフをつくるときは、
どのように分担なさっているのでしょうか。
脇田
1シーズンにだいたい4枚のスカーフを出すので、
2枚ずつ担当することが多いです。
はじめにふたりでテーマを話し合うこともあるかな。
栗原
具体的なテーマがなくても
「今回は少し大人っぽい感じでやってみようか」
とか、目指すところはすり合わせをします。
色などが被らないように、
途中経過を見せ合って相談したり。
普段、自分の仕事で制作をするときは
「どっちがいいかな」と
ほかのデザイナーさんと相談する機会は
あまりないので、新鮮ですね。
脇田
うん、いい時間だよね。
栗原
お互いに「かわいい柄」と言ってもらえたら
「よし!」みたいな。ふふふ。
──
親友からのOKは心強いですね。
相談し合うとき以外は、
別々で制作なさっているのでしょうか。
栗原
はい、制作中はLINEや電話が
メインの連絡手段です。
でも、直接会うことも多いです。
例えば、共通の友人と会う前に、
1時間先にふたりで集まって
pink pepperのことを話すとか。
脇田
週1以上で会っているかもしれません。
pink pepperの仕事がないときも
会うもんね(笑)。
栗原
来週は、一緒に沖縄行くしね。
──
ほんとうに仲がいいんですね! すてきです。
栗原
年々、ふたりのデザインの
足並みがそろってきた気がします。
私たち自身も一緒に年を重ねながら
モノを作っていくなかで、
影響を受け合ったり、
互いに取り入れたりしているところは
あると思います。
──
あぁ、たしかに、Instagram
などで拝見する
pink pepperさんの商品一覧には、
統一感があります。
パッと見ただけでも
「pink pepperのスカーフだ」
とわかるというか。
脇田
うれしいです。
栗原
私たちの身近な友だちでも、
どちらがどの柄をつくっているか、
意外とわからないようなんですよ。
脇田
でも、家族はわかるんだよね。
栗原
そうそう、家族には見抜かれる(笑)。
──
そうなんですか、さすがですね。
お互いに相談するときに、
意見が合わなくてもめるようなことも、
ときにはあるのでしょうか。
脇田
まったくないです。
栗原
もめたことはないですね。
──
へえーーっ。
栗原
あくまでも
「自分ではない誰かがつくっているひとつの案」
だと捉えているので、尊重しているし、
素直に「いいな」と思います。
提案してもらったもののなかで、
とくにこれがかわいい、こっちの色のほうがいい、
と意見を出すことはありますが、
もめることはないです。
ひとりで考えていて、
悩みすぎてドツボにはまってしまったときに
脇田に見てもらって
「こうしたらいいんじゃない?」
と言ってもらったようにやってみたら、
パッと解決することがあるんですよ。
「ああ、相談してよかった」って。
脇田
私も同じことがよくあります。
だから、pink pepperにとって、
このふたりでやっているということは
とても大切なことだと思います。
栗原
脇田は、私より私の柄のことを
わかってると思います。
──
まさに理想の関係ですね。
お互いの尊敬しているところとか、
お聞きしてもよいでしょうか。 
栗原
前提として、全部を尊敬しているからこそ、
一緒に続けられているということがあります。
でも、ひとつ挙げるとしたら‥‥
決断が早いことかな。
私はもともと、ものづくりに対して
「誰かと一緒だったらできるかも」
と思っていたんです。
ものをつくるにはたくさんのコストや判断、
行動力が必要なので、
ひとりではどうしても腰が重くなってしまって。
その「誰か」が、脇田だったんですよ。
一緒にものをつくる仲間として、
脇田の行動力と決断力にはいつも助けられています。
もちろんデザインのよさも尊敬していて、
pink pepperとして活動してきた8年で、
たくさんの刺激をもらいました。
脇田
私は、大学1年生で出会ったときから、
あず(栗原さん)が
つくっていたものが好きだったんです。
あと、あずが「これかわいい」と言ったものに、
私も「あ、ほんとだ。かわいい」と思うことが、
すごく多くて。
昔からそんな信頼感があったので、
展示やグループ展に出るときは
「一緒に出よう」と声を掛け合っていました。
その関係がずっと変わらずに、
現在まで来ている感じです。
栗原
えへへ、照れるなぁ‥‥。
私もpink pepperのものを制作するときは、
Aの柄とBの柄で迷ったら、
脇田が「こっち」と言ったものにしています。
こんなに信頼できる相手は
なかなかいないと思うので、ありがたいです。
脇田がかわいいと言ったものは、
ほんとに信頼できるんですよ。
あと、おいしいって言った食べものも。
脇田
あはは! 
たしかに、食べものの好みも合うよね。

(つづきます)

2024-07-09-TUE