
みっつの海苔の、ことなる個性。
それぞれに「おいしさ」がちがいます。
海苔は、4月から育成が始まります。
牡蛎の殻をつかって培養を始め、
夏の終り頃に、海苔のタネを網に定着させる
「採苗」(さいびょう)を行ないます。
その後、海に支柱を立てるか、
浮き流しで網を海中に広げて、
25枚から30枚かさねて「タネ網」を育てます。
この時期を「育苗」(いくびょう)といいます。
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その後、重ねて張られていた網を減らし、1枚にして、
「単張り」と呼ばれる本格的な育成に入ります。
減らした網は冷凍され、
順番に育成されるのを待ちます。
同じ生産組合で、ほとんど同じような海で育っていても、
採苗、育苗、単張り、そして収穫の時期が
ほんのすこし異なることで、海苔の味は、変化します。
また、網がすぐ隣同士であっても、
水温、塩分、海流、栄養分の分布などの「海況」は、
場所によってほんのすこしずつ異なるため、
それも、味に変化をもたらします。
また、全体的に言えるのは、ことしの皿垣の海苔には、
(昨年にくらべて)穴が多いということ。
しかしそれは味には影響がありません。
ちなみに昨年は「秋芽の一番摘み」という、
いちばん最初に育て、収穫した海苔を
「海大臣」として販売いたしましたが、
ことしの「海大臣」は、5回目に入札が行われた、
「冷凍網の一番摘み」です。
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海況がいちばん整ったなかで育ったその時期の海苔が、
ほかの時期に出品された海苔にくらべて、
いちばん、香りと味がよかったからです。
しかし、最後に「ひとつ」を選ぶのに迷いました。
最終的に絞り込んだ3種類の「海大臣」候補が、
いずれも、個性的で、それぞれに引けを取らない
「おいしさ」を持っていたからです。
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「海大臣(みぎ)」は、
光沢のある見た目や、ぱりっとした厚み、
サクサクとした歯ごたえが、
昨年販売した「海大臣」にいちばん近いもの。
ほんのり、生のりのような香りがあって、
後味には、あまみが残ります。
なにより歯ごたえ重視で選ぶとしたら、これでした。
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「海大臣(まんなか)」は、
全体的にしなりがあり、やわらかな印象。
磯の香りが、「海大臣(みぎ)」に比べて強めで、
そのまま食べたときに舌に感じる塩味も、
ほんのすこし、強くなっています。
一般的には、もっとも高い
値がつく海苔だということです。
厚さと味のバランスのよさで選ぶならば、これでしょう。
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「海大臣(ひだり)」は、
穴が多く、すこし透けた、色の浅い印象があります。
3つのなかでもっともやわらかいのですが、
口に入れたときにふわっととろけるという個性で、
きわだっていました。
また、最初にあまみを感じることが特徴的で、
海苔らしい後味もしっかり残ります。
見た目より味を重視したい「海大臣」です、
味の濃さ、後味のよさで、
この海苔も最後まで候補に残りました。
林屋海苔店の相沢さんと、「ほぼ日」とで、
この3種類の海苔を、それだけでつまみ、
なんどもなんども味をみて検討した結果、
私たちは、ことしの「海大臣」として
3種類とも販売することに決めました。
それぞれ、昨年の「海大臣」とは、
すこし違う個性をもっていますが、
香りと味には自信があります。
別のページで、飯島奈美さんによる
それぞれの個性を活かした
海苔のレシピを紹介していますので
どうぞ、参考になさってくださいね。
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