ウルグアイの羊のセーターは、なぜ、こんなに気持ちがいいのか?その3:セーターを編む 金泉ニット(株)

MITTANの定番のセーターは、
ウールなのにまったくチクチクしなくて、
素肌に着てもとても気持ちいいんです。
カシミヤのようになめらかでやさしくて、
しかもウールらしいハリがしっかりあって、
からだのラインがきれいにカバーされる。

ウルグアイの羊ってなんでこんなにいいんだろう?
その理由が知りたくて、たずさわっている方に
お話をうかがいました。

第3回は、セーターを編んでいる
金泉ニットさんの福島工場へ。
社長の金岡さんと、顧問の梅澤さんのお話です。

金泉ニット

金泉ニット株式会社

1973年創業。
愛知県岡崎市に本社をおくニットメーカー。
2018年に福島県葛尾市に
金泉ニット福島工場を新設。
素材開発や、オリジナル糸の開発を得意として、
国内はもちろん、ヨーロッパブランドの
OEMも手がけている。

チクチクしない、っていうのは、
それはウチのノウハウです

金岡
MITTANさんのセーターね、
いい感触でしょ? 
カッコいいと思いますよ。
ちょっと細身でね、カッコいいと思う。
僕も着とるけど(笑)。

ウルグアイの羊のセーター(黒杢)を着たKIKIさん。

金岡
チクチクしない、っていうのは、
それはウチのノウハウです。
ニットだとまず素材がね、
やっぱりモノが良くないと、なかなかね。
そこからどうするか、っていうところで。
ウチの社員がね、いいものを作ろうというので、
いろいろ勉強してます。

この工場は去年の5月22日から稼働してて、
今は主に編み立てをやってます。
MITTANさんのセーターも、ここで編んで、
本社で加工や仕上げをするんです。
梅澤
ここは、中学校のグラウンド跡地なんですよ。
震災後、学校は別なところに移ったんで、
草ボウボウの荒れ地だったんです。
その周りはもうずっと山。
そこに金泉さんが入っていただいて。

顧問の梅澤義雄さん。

金岡
本社が愛知県岡崎でやってるますけど、
手狭で、編み機もそんなたくさん置けなくて。
なんとか、外注比率を抑えて、
自分の庭先で自分のものをつくりたい。
そうすれば、自分のクオリティを極めることが
可能になるじゃないですか。
それが、そもそもだったんですよ。

要は、自分のところの商品を
責任もってつくれるかどうかなんで。
それをやっぱりキチッとやらんと。
たまたま、自立帰還支援で
補助金もつくっていうんで、
それで、手あげたら採択されて、
一応これだけのものができたんですよ。
問い合わせたのが、4年になるのかな。
そのとき役場で対応してくれた人が梅澤さんで。
梅澤
私だったんです。
そのご縁で、ここに来ました。
金岡
やっぱり全然知らんとこだし、
来ていただいてホントに助けてもらってます。
梅澤
私、隣の田村市役所で勤務してて、退職したので、
復興の支援ということで、ここにお手伝いに来て、
その1年目に金泉さんが工場を建てたいと。
金岡
僕が初めて電話したとき、梅澤さん、
「山の中だけど、いいとこだから。来て」って(笑)。
来たら、思った以上にスゲえ山。思った以上に。

見てください、この素晴らしい景色。
ここで仕事を社員がやるっちゅうこと。
こういう自然があって、そこで仕事ができて。 
梅澤
今、ここが葛尾村で唯一の企業なんですよ。
金岡
この敷地でね、井戸を掘ったんですよ。
役所の指導だったんですけどね。
ニットって洗うんですよ、編んだあとに。
そういう工程があるんです。
で、その井戸水で洗ったらね、
めちゃくちゃいいんです。
やわらかさとか、風合いが全然違うんですよ。

僕のとこはね、やっぱりこだわりがありますから、
洗うノウハウはホントに断トツなものを持ってる。
洗いは今、本社でやっていて、
カシミア、アルパカ、いろいろやってますけど、
同じ紡績の同じ素材で、同じようにやって、
仕上がりが違った。
本社は水道だから、そこが違うのか。
やっぱり自然の力、素晴らしいと思います。
もうね、素肌に着てほしい。
なんでいいのか、それが科学的に証明できれば。  
梅澤
東北大学農学部の皆さんに、
「この水はいいから、ちょっと研究してください」
という話を、いま持ちだしてるところなんですよ。
金岡
掘ったときに分析はしてるんですけど、
それは通り一遍の分析なんでね。
梅澤
2年ぐらいかかるらしいです。
水の成分はすぐ出るんですけど、そうじゃなくて、
他の地区と違ってこんなにいいとこがあるっていう。
金岡
根拠が欲しいんですよ。
早くやってほしいんだけどね(笑)。

いいものをつくるって、おもしろいじゃないですか。

金岡
工場を見ますか。
撮っちゃいけないところ?
全然ない(笑)。秘密はありません。

まずは糸が届いて、整理をして、
巻き直すんです。
巻き直すことで起毛するんですよ。
やわらかさが出るんです。
僕はね、糸の開発やってるんですよ。
自慢じゃないですけど、自慢して言うけど(笑)。
やっぱりクオリティの高い素材を使って、
ある糸とある糸を合糸したり撚糸したり、
そういうことをやって全然違う、新しい糸をつくる。
ウチだけにしかない糸。

ふつうは、売ってる糸を
そのまま使うのが多いんです。
ウチもそれはやるんですけれど、
ウールとオーガニックコットンだとか、
ウールとリネンだとか、
そういうのを掛け合わせたら、
もっと価値が出るものができるんじゃないかとかね。
そういうのって、つくらな、ないんです。

原料が、安いもの使うとね‥‥。
ダメというより、やっぱり、
いいもので作った方がね、
お客さんは喜ぶもんね。
売り場に置いてあるだけでも、
金泉が作ったものっていうオーラがないとね。
MITTANさんの、
U-ブリッドの糸を使ったセーターだってそうですよ。

やっぱり価値あるものを着てもらいたい。
例えばそれが2万円だとしたって、
10年着れば1年2000円。
それなら高くはないですよ。

いいものをつくるって、おもしろいじゃないですか。
そういうものを日々開発すればね。
だから、MITTANさんも来てくれると思うよ。
MITTANさん、そういうものがなきゃここに来んと思うもん。
ずっと来てもらいたかったら、
やっぱり自分のとこの魅力が、なんかないとね。
編機は、ホールガーメント、パーツで編む物があって、
そのあとに、縫製したり、ボタン付けをしたりを、
いろいろな機械や、手作業で。

編みあがったもの、大きいでしょう。
天然繊維は洗うと、もう15%縮むんですよ。
だからそれを見越して設計する。
見越さんと、ちんちくりんになっちゃう。

編みの技術はね、同じ機械を使っても、
ほんとに個人差、能力差があるんですよ。
だから、僕んとこは優秀な人しか雇わない。
やっぱり編む人は、賢い人じゃないと、
いいものはできない。
来年の春先には、みんなここで、
全部一貫でできるようになります。
そのためにつくったんですよ、ここを。

縮絨にもここの井戸水を使えば、
岡崎で縮絨するのとでは、また風合いが変わる。
もっと良くなるかもしれない。
それは幸せなことですよ。

そして、この自然ですよ。
雑木林がパノラマみたいに広がって、
その向こうに、900メーターほどの、
五十人山(ごじゅうにんやま)って、由緒ある山。
とっても心が和むし、
パワーが出そうな場所なんですよ。
なんにもないように見えるけどさ、最高です。

葛尾村をね、ニットの村にしたいんですよ。
名前かえてもいいかな(笑)。
葛尾村ニットカンパニー、どうですか。

こうやってつくることが、物語になる。
そういうことをね、発信していきたいんです。
他社にはできないことだもんね。どうですか?
そういうノリでやってこうと思って(笑)。

(おわり)

(おわり)

MITTANの服、販売は
2019年12月6日(金)午前11:00からです。
くわしくはこちらからどうぞ。

2019-12-02 MON