花が咲きこぼれ、枝葉が茂る
Miknitsアランのヨークセーター
「bloom」
下向きに伸びる花模様が
袖までたっぷりとデザインされた、
ヨークセーター「bloom」。
4色から今の気分に合う色を選んでみてください。




元々は春夏もののmarikomikuniのために
考えたデザインだったんです。
ただ機械で試作をしていただいたら、
柄の出方が整然としすぎて、
思ったより硬い印象になってしまったのです。
機械が悪いというのではなく、
プロジェクトによって向き不向きがあるということですね。
「下向きに伸びる花のテクスチャーを
大きくヨークに使う」
というアイディア自体は気に入っていて、
活かしたい気持ちがあったので、
結局Miknitsアランの糸を使って
手で編むことにしました。
この糸はアラン糸としてはやや細めで、
テクスチャーを盛ったウェアを編んでも
重くなりすぎない。
なのでまず柄の数(多めにしたかった)
に応じてゆったりと身幅を設けて
のびのびと花、葉、枝の順に編んでいきました。

ヨークセーターをデザインするときには
胸から首に向かう減らし目をどう設定するかが
醍醐味のひとつなのですが、
今回はそれを「枝ぶり」の中に組み込んでいます。
上に向かって収斂していく枝葉を編みながら
減らし目も同時に行う。
そこが編んでいて一番気が抜けず、
かつおもしろいところなので、
マーカーを用意して1段ずつ、
セーターを「収穫」するような気持ちで
進んでいっていただけたらと思います。
ちょっと変わった作業として、
今回は編み上がった後で水通しをしています
(アラン糸で編むニットは普通水通しはしません)。
脱水した状態でドライアイロンを当てて
編み地を伸ばしていくのですが、
ここで幅が結構広がり、模様の表情もはっきり出ます。
セーターの全容が現れる瞬間、どうぞお楽しみに。


和更紗がアイデアのはじまり。
“モノトーンの世界から
梅の香りが漂ってくるような”
ヨークセーター「kyoto」
三國さんが心惹かれている「更紗」から
デザインのアイデアがふくらんでいったそう。
モノトーンだからこそ華麗な花模様が映え、
編み終えたらじまんのセーターになること、間違いなしです。

古い更紗が好きで、端切れを集めたり
図録や写真集をよく眺めます。
何がいいんだろう、
どうしてこんなに惹かれるのだろう、
とぼんやりと思っていたのですが、
理由をはっきりさせるなら、そのひとつはまず
「模様が細かいこと」にあるようです。
唐草や宝尽くしなどの模様の
大きさ(というか小ささ)から、
作り手が注いだ愛がはみ出てる感じ、
といいましょうか。
そのこまごました模様を描く行為が、
当時の素材や技術の制限によって、
思いに追いつかないまま表現されるところに、
そのおもしろさの一端があるように思います。
理由の二つ目は、東西の文化が入り混じり、
布の上で醸成され、
新たな表現に生まれ変わっているところ。
更紗はインドで発達したものですが、
もとをいえばもっと西からの影響も
多く受けているらしい。
やがてシルクロードの最果ての日本に辿り着き、
この国独特の意匠を得て、よりわたしたち好みに
生まれ変わっていった。
それが和更紗というもので、
「和」といいながらもやはり
どこかベースに「洋」のテイストが残っている。
その混じり具合が、すごく好きなんです。
何かそういうことが、
ニットでもできるといいなと思い、
作ったのが、この「kyoto」です。
早春に京都の北野天満宮に行ったら
ちょうど梅花祭をやっていました。
まだあまり咲いていなかったのですが、
家に帰ってもそのイメージが残っていて、
梅かぁ、梅を編むのはいいかもしれない、
と、ふと思った。
小さい花がたくさんついて、
枝ぶりも繊細で唐草文ぽいところが、
面で使う模様に向いていそうだな、と。

デザインの割と早い段階で、
多色ではなく2色にしようと決めました。
モノトーンの世界から梅の香りが漂ってくるような、
そういう場所をイメージできるものにしたかった。
目からの情報が多すぎると、他の要素が
感じ取れなくなったりもしますからね。
着る人を引き立てるためにも、
おそらくこれくらいがちょうどいい。
編み方は見た目よりシンプルで、
ヨークセーターを1度編んだことのある方なら
スイスイ進めていただけると思います。
工程としてまず先に袖を編むので、
模様編みの手慣らしにもなるんじゃないかな。
ヨークの手前で身頃に前後差をつけていて、
その拾い目が一つの山場ともいえるかもしれません。
編み終えたら忘れずに水通しもしてくださいね。


(つづきます。)
2025-10-02-THU