
(夢中で何かを食べている)
「むしゃむしゃ‥‥フゴッ‥‥むしゃむしゃ」

(向かいの席の田中に用事でやってくる。
驚いた声で)
「イサワさん! いったい何を食べてるんですか?!」

(驚かれたことに驚いて)
「フゴッ‥‥けほんけほん。
あの、『チョコクッキーシュー』を‥‥」

(その言葉にさらに驚いて)
「まぁ! わたしてっきり、
岩を食べているのかと!」

(むせて)
「フガッ! ごほごほ‥‥
岩じゃないですよぉ‥‥」

(恐縮して)
「あらら、とっても失礼なことをわたしったら!」

(やさしく笑いながら)
「いえ、いいんです、
ぼくが食べてると、
岩に見えますよね」

「そんなことないです!
それはケーキです!
岩だなんてわたし‥‥」

(ちょっと力なく)
「あはは‥‥」
(ふたたびケーキを食べる)

(席にもどる。心の声)
「やっぱり岩に見える‥‥」