何ができるかな? あかぎのまど。

sanami.yoshino

冬の大沼で、氷上を歩く。

2025/02/07 11:00
「氷上を歩くだけ。
それだけの体験だけど、ちょっとした異世界に
足を踏み込むようなすごくいいものでした」


「生活のたのしみ展」を終えて
ほっと一息ついたのも束の間。
2025年最初の赤城訪問は冬真っ盛りの1月末に

向かいました。

今回の目的は、赤城の冬魅力を探ること。
この時期にしか出会えない”いい時間”を求めて、
「あかぎの冬あそび」を体験してきました。

この日向かったのは、実に5年ぶりに
全面結氷した赤城大沼(おの)です。

赤城の冬あそびの筆頭、
ワカサギ釣りで知られる大沼は、
氷上にうっすらと雪が積もっており、
一面に広がる真っ白な湖上に
かたつむりテントが点在していました。

グリーンシーズンの大沼を知っているからこそ、
その一変した光景に、
同じ場所かと少し驚きます。

冬季は山頂エリアへの唯一のアクセス道である
4号線をのぼり、
トレッカーズカフェさんの前あたりに駐車。
早く湖面に駆け出したい気持ちを、
文字通り一気に吹き飛ばすのが、
全身にたたきつけるような圧倒的な冷気。

「顔がもげるような寒さ」とはこのことか!!

予めマグマカイロは貼付済み。
さらに帽子・ネックウォーマー・手袋をはじめ、
ありったけの防寒具を着込む。
外気に露出しているのは僅かな隙間だけで、
ぱっと見には誰が誰やら。

意を決してやっと湖上へ、とはいかず、
最後に大事なもうひと装備。
少し心もとない足下のは、
やすな先生の私物のチェーンスパイクを借りて
装填します。

さむ〜いと悲鳴をあげながらの
どたばた準備を終え、いざ氷の上へ。

ロープが湖面へと誘うのに従って、
ほんとうに大丈夫かな、
と少しドキドキしながら歩みを進めます。

かたつむりテントを積んだ
アウトドアカートを手に徐々に引き上げる、
ワカサギ釣り客たちと時折すれ違う。

はじめのうちは、わー!などと声をあげ、
湖のそこかしこに点在するワカサギ釣りの
テントの様子を遠目に伺ったり、
表層の雪を払った下に現れる
アイスバブルやワカサギのドリル跡を探したり。
喜び庭駆け巡る犬よろしく、
皆はしゃいだ気持ちが溢れる。

でも、気づけば4人とも思い思いの方向へと
言葉も発さずに氷上を歩いていました。

ときおりかなり強い風が吹くと、
湖の表層にある雪がさーっと舞いながら
こちらに迫ってきます。

「あ。風が見えた」

落ち葉や桜の花びらが舞う様子など、
風が見えると感じる機会は、
これまでもあったけれども
けっこう遠くからこちらに向かってくる
風が紛れもなくしっかり見えた気がした。

私は、赤城神社が立つ半島のような
場所にむかって、黙々と歩きます。
すると氷の上にぽつんと看板が。
「ここから神社への参拝はできません」

ちょっと残念、と思いつつ、
たしかにチェーンスパイクで
ガシガシと踏み込むのは違う気もする。
参拝に向かう際には、ぜひ道路からお願いします。

ふと振り返り、周りを見渡すと、
出発した岸から300m強は離れているでしょうか。
随分と遠くまで歩いてきた気がしていたけれど、
湖全体の1/3にも届いていない。
真っ白な地続きに見えるので
距離感がつかみにくかったけれど、
自らの足で歩くと
やっぱり大沼はそれなりに大きい。

この間にもどんどんと陽は傾いていて、
山の影がみるみるうちに湖面を覆っていきます。
真っ白な湖面が陽を受けてきらきらと
発光してみえるところと、
影の部分とのコントラストが
刻一刻と動いていく様子を、
ついついぼーっと眺めてしまいます。

影に入ると一気に冷えてくる。
そろそろ引き返す頃かと、
なんとなく4人がまた一所に集まってくる。

再びロープを頼りに駐車している辺りまで戻るが、
ロープがなかったらどこに向かって歩いていいか、
簡単に方向を見失いそうです。

車に戻って、重装備を剥がしていき、
暖房も効きはじめてやっとひと心地。

がポツリと「いやぁ。よかったね」

氷上を歩く。
確かに、それだけの体験だったのだけれども。

湖上へと繋がるロープも一役買って
まるでちょっとした異世界に誘われたような、
各々が氷上でただただ少し不思議で
すごくいい時間を過ごせました。

その晩も、東京に戻ってからも。
ふとした時に思い出し、
よかったなぁとしみじみ。

また行きたい。
強く実感できる氷上体験でした。


ちなみにも最後にひとこと。
「以前、顔がもげるような思いをしたのは、
完全なる準備不足のせいだ。
ちゃんと装備をすると大丈夫だね」

なんたって夏は市内-10℃の避暑地ですから。
寒さに気を取られて、そこで過ごす時間に
集中できないのは、間違いなくもったいない!

うっかり油断した格好ではなく、
しっかり防寒し、車も人間も足下は冬仕様にし、
ぜひこの時期にしか味わえない
特別な時間を存分に満喫してください!



【冬のあかぎを楽しむために。】
◯ 冬の赤城山へ車でお越しの際は、
スタッドレスタイヤを必ず装着ください。
◯ 赤城大沼では、氷の劣化を防ぐため
ドーム(ワンタッチ)テントの使用が禁止されています。
必ず”かたつむりテント”をご使用ください。
赤城山 大沼氷上でのルール厳守のお願い
◯ 夏の大沼の様子は過去の記事へ 2024年10月2日