| 糸井 | 
          横石さんとお付き合いをするために 
            近づいていらっしゃる方々は、 
            良い意味でも悪い意味でも 
            何らかの「欲」を持って 
            横石さんのところへいらっしゃいますよね?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そう、ですね‥‥。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          すみません(笑)、 
            また答えづらい質問で。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 横石 | 
          いえいえ。 
            でも、そういうふうに言えると思います。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          付き合うべき「欲」を持った人と 
            付き合っちゃいけない「欲」を持っている人と、 
            どうやって見極めているんですか?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          やっぱり‥‥自分の「立ち位置」ですね。 
            判断の基準になるのは、そこだと思います。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          立ち位置。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          自分の立ち位置を保てているか。 
            人にお会いするときは、常にそれを考えてます。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          その判断の方法で、当たってきましたか?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          当たってきましたね。 
            すぐわかるんです、そこは。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          そうですか。 
            実はぼくも、けっこう当ててきてるんです。 
            ちょっと慎重すぎるくらいの 
            付き合い方をしちゃうんですよ。 
            なんていうんだろう‥‥ 
            「人間って意外に怖いもんだ」 
            っていうことをぼくは知ってるつもりなんです。 
            で、その人間の中には、自分も入っている。 
            根本的にぼくは、 
            自分を信用しきってないですから。 
            「欲」については、自分だって危なっかしい。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そうですか、そうは思えませんが。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          いや、危なっかしいんです。 
            だから、自分を危なっかしく思う分量くらいは、 
            他人にも疑いの目を 
            向けさせていただこうと(笑)。 
            「信じることができないあなたは悲しい人だ」 
            と言われるかもしれないけれど、 
            信用しきったおかげで 
            両方もろとも死ぬのはいやですから。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          ああ、それはありますね。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          疑いを持たずに愉快な話だけを信用して、 
            「信じたいんです!」なーんて言ってる自分は、 
            もう、隙だらけですよね?  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 横石 | 
          おばあちゃんの世界もそうなんです。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          あ、そうですか。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          おばあちゃん自身が 
            「欲」に対して揺れているときは、 
            だめですね。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          へええー。 
            おもしろいなぁ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          おもしろいですよ。 
            「欲」で隙ができると 
            商品にあらわれてきたり、 
            いろんなことがうまくできなくなるんです。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          隙かあ、隙ねえ‥‥。 
            この前、ちょっと短い文章を書いたんです。 
            「選挙に立候補しないか? 
             と誘われるのは、その人に隙があるからだ」 
            っていう文章を。 
            つまり、横尾忠則さんとか、 
            赤瀬川原平さんだとか、 
            ぼくが付き合ってるおもしろい人は、 
            そういうことに誘われない人ばっかりなんですよ。 
            で、ぼくは一度だけ誘われたんです。 
            そのときは隙があったんでしょうねぇ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          あー、なるほど。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          その隙については、 
            自分でも思い当たるんですよ(笑)。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 横石 | 
          いや、糸井さん、すごいことを考えますね。 
            そうですか、隙があるから。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          結局、声をかけてきた人に一度会って、 
            「なんてくだらないやつだ」と思われて、 
            二度と会わないことになったんですけどね。 
            でも声をかけられたときに、 
            悪い気がしてなかったんですよ、おれ(笑)。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          私も、何年か前にありました。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          ありましたか!(笑) 
            隙を見せた?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そうだったんでしょうね。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          そうかー、 
            「村のために自分は何かをやるべき!」 
            っていうのも、欲のうちになりますから。 
            でもそれは、身の丈じゃない自分なんですよね?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          ええ、そういうことです。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          誤解のないように言っておきたいのは、 
            ぼくは政治全体を 
            否定しようっていうんじゃないんです。 
            ただ、自分の身の丈ではないと。 
            身の丈じゃないのに誘われるのは、 
            やっぱり隙があるからなんですよ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          うーん。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          だって、今のイチロー選手を誰が誘う?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          ぜったいに誘わないです(笑)。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          いや、それにしても、そうですか、 
            横石さんも、ありましたか。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          みごとにありました。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          あぁー、いい話だ(笑)。 
            でも、誘われるがままじゃないってことは、 
            隙はあったけど、 
            立ち位置はグラつかなかったんですね。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          まあ、大丈夫でした。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          そうかぁ(笑)。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          変な欲がちょっとでもあると、 
            そういう隙ができるんでしょうねぇ。 
            で、お金っていうのは、 
            隙がうまれる要因としてすごく大きい。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          力のシンボルでもありますから。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          はい。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          だって少年にね、 
            「喧嘩強くなりたいか?」って言ったら、 
            「なりたい」って言うと思うんですよ。 
            そのくらい、人って力が欲しいわけで。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そうですね。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          そういうところから、 
            完全に自由になるのはなかなか大変なことで。 
            そこは、うーん‥‥。 
            ちょっと油断してると、すぐ誘われますよね?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          ええ(笑)。  
               
            (つづきます) |