| 糸井 | 
          これはぼくの印象なんですけど、 
            横石さんはお金のことを大事に思いながらも、 
            基本的にあまりご自分から 
            お金のことを話そうとはされせんよね。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 横石 | 
          そうですね、 
            あんまり表に出したいとは思いません。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          わかります。 
            でも、やっぱりね、すごいんですよ。 
            たぶん無意識なんだろうけど、 
            お金に対する「健康的なテクニック」が。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そうですか。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          なにせ、タヌキが葉っぱをお金に変えてる絵が、 
            町の入り口にあるんだから。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          はい、はい(笑)。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          トンネルをくぐったら 
            あの絵があったんで、びっくりしたんですよ。  
           | 
        
        
            
           | 
        
        
          | 横石 | 
          あのタヌキは、ぼくがモデルなんだそうです。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          それを最初に言っちゃったことは、 
            すごく後をらくにしましたよね?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          おっしゃるとおりです。 
            すごくらくになりました。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          「あの絵を描いて」と言ったのは、 
            横石さんなんですか?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          いやいや、おばあちゃんたちが言ったんです。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          おばあちゃんたちが!  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          最初はぼくにお説教してたんですよ。 
            「葉っぱをお金に換えるのは、横石さん、 
             タヌキかキツネの、おとぎ話だ」 
            「あんたは仕事を真面目にせにゃあかん」って。 
            そしたらある日‥‥あの絵を。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          それはまた痛快な(笑)。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          びっくりしましたよ。 
            ぼくの顔を描いてる!(笑)  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          (笑)  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          しかも町の入り口に。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          いやぁ、肯定的にそれを描こうと思った 
            おばあちゃんたちの、素朴で率直な感性が、 
            ほんとに横石さんを 
            後で助けてくれましたよねぇ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          助けてもらいました。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          つまり、 
            「おばあちゃんを元気にしたいんです」 
            とかね、 
            「お金じゃありません! 
             村を活性化させたいからやってるんです」 
            ということばっかりを盛んに言って、 
            あの絵がなかったとしたら‥‥。 
            今ごろは違う見方をされていたかもしれない。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そうですね、もしかしたら。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          だから、道具として上手にたのしく 
            お金を扱うことの意味っていうのが、 
            上勝を見てるとほんとうによくわかるんです。 
            ──たとえば、 
            パン食い競争でね、 
            「パン」って書いてある紙がぶら下がってても 
            競技は成り立つかもしれないけど、 
            そこはやっぱり、 
            ほんもののパンじゃなきゃだめでしょ?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          それはそうですね(笑)。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          生々しい物をぶら下げるから盛り上がるわけで。 
            つまり、 
            この「パン」に当たるものが、 
            「お金」っていうものだと。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 横石 | 
          そうなんだと思います。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          あとね、 
            横石さんは意識してるかどうかわからないけど、 
            登場人物とか、キャラクターとか、 
            ストーリー設定が上手なんですよ。 
            「人はこういう話が好きなんだ」 
            っていうのをわかっている気がする。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そうでしょうか。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          葉っぱのビジネスはFAXでも成り立ったのに、 
            かなり早い時期にパソコンでやりましたよね?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          ええ、そうでした。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          あれは、 
            パソコンを入れなきゃだめなんです。 
            「おばあちゃんがパソコン」 
            というニュースにしないと。 
            横石さんは、そういう勘がいいんですよ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          あれは、そうですね、勘でした。 
            そっちのほうがいいと思ったので。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          じつはぼくも、 
            そういうことをやってるんですよ。 
            ぼくの場合は、自分の80代の母親に 
            パソコンを急に送ったんです。 
            で、「80代からのインターネット入門」 
            というコンテンツを始めました。 
            たしか10年以上前のことです。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          その時代に、80歳でインターネット。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          はい。 
            誰がパソコンを始めてもニュースにならないけど、 
            80歳ならニュースになると思ったんです。 
            まあ、身内のことで恥ずかしいんですけど、 
            しばらく会ってない母親とのコミュニケーション 
            というテーマもぼくとしてはありました。 
            でも、ニュースになるのは、 
            「80歳でインターネット」だったんです。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          いいニュースですよね。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          要は、「おもしろいじゃないか!」なんですよ。 
            たとえば、75歳の人が 
            「80代からのインターネット入門」を読んで、 
            「俺はまだまだ若いなあ」 
            って言ってくれたら、おもしろいですよね?  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          おもしろいです。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          横石さんがされている活動も、 
            けっこうそういうことが多いんですよ。 
            若い人を引きつける理由も、 
            ストーリーが魅力的だからじゃないでしょうか。 
            で、さらに今度はまた、 
            「若い人がやってきた!」 
            という物語が生まれてきている。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          たしかに、そういうのは好きですね。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          好きですよねぇ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          めちゃめちゃ好きです(笑)。  
           | 
        
        
            | 
        
        
          | 糸井 | 
          それはもう、 
            小説を書くのと同じですよ。  
           | 
        
        
          | 横石 | 
          そんな大層なことではないですけど(笑)。 
            なぜか好きですね、 
            そういうストーリーをつくるのは。  
           | 
        
        
          | 糸井 | 
          だから、横石さんがしていることは、 
            「マーケティング」じゃなくて、 
            「ストーリーテリング」なんですよねぇ。  
             
            (つづきます) |