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| 糸井 |
赤瀬川さんの「千円札裁判」の事件も、
結局、性の話に似ていた‥‥と。
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| 赤瀬川 |
ようするに、勝手につくっちゃいけないわけです、
「お金」っていうのは。
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| 糸井 |
それは罪になる、ということですね。
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| 赤瀬川 |
ぼくは、それでも「やってみたい」と思って
模写とか印刷とかしちゃったんだけど、
その感じがね、性の話と似ていると思うなぁ。
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| 糸井 |
そうですか。
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| 赤瀬川 |
つまり、仮に、ニセをつくちゃったとしてもね、
人に見せちゃいけないわけです、それは。
でもやっぱり「見せちゃいたい」んですよね‥‥。
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| 糸井 |
自分で自分の股間を眺めるのは、オッケーだけど（笑）。
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| 赤瀬川 |
オッケーです。
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| 糸井 |
ぼく、毎日毎日、トイレで小便をするから
「もう見飽きたよ！」って言ったことあります（笑）。
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| 赤瀬川 |
人のが「見えちゃう」のも、いいんでしょ。
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| 糸井 |
いいんでしょう。
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| 赤瀬川 |
銭湯なんかで「見られちゃう」のもいいんだけど、
「見せちゃう」のは‥‥ダメなんだな。
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| 糸井 |
なるほど。
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| 赤瀬川 |
よく酔っぱらって「見せちゃいたく」なる‥‥
あの気持ち、わかるんだよねぇ。
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| 糸井 |
わかりますか（笑）。
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| 赤瀬川 |
「お金を投げる」のと、似てる気がする。
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| 糸井 |
ああ、なるほど。
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| 赤瀬川 |
子どものころ、野っぱらをね、
オヤジが「うわあー」とかなんとか言いながら
歩いてたんですよ。
で、何だろうと思ったら‥‥出してるんですよ。
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| 糸井 |
はぁ（笑）。
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| 赤瀬川 |
悪気とかは、ぜんぜんなかったんだろうけど。
子どもらはもう、
「うわあー、おちんちん」とか言いながらね、
あとをついてまわって。
‥‥お祭りみたいだったな、あれは。
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| 糸井 |
でも、そういう「見せちゃう心」がゼロだとすれば
赤瀬川さんも
いまの表現の仕事には、関わってないでしょうね。
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| 赤瀬川 |
そうでしょうね。
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| 糸井 |
文学なんかも「恥そのもの」を書いてるわけだし。
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| 赤瀬川 |
ああ‥‥そうそう、すごいのがあった。
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| 糸井 |
すごいの？
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| 赤瀬川 |
千円札裁判の資料集めで、熱海とか、
そんなようなところで入手したんだけど、
「オモテが千円札、ウラがそのものズバリのポルノ」
‥‥というお宝を持ってます、ぼく。
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| 糸井 |
すごいですねぇ！
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| 赤瀬川 |
ポルノ写真は、まぁ、わかるんだけど、
その反対側を「お札」にしたのは、すごいと思った。
お金って、そういうもの‥‥なんだね、つまり。
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| 糸井 |
そう考えると「偽札づくり」というテーマって、
人間の根源的な欲望のような気がするんです。
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| 赤瀬川 |
そんな気がするねぇ、うん。
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| 糸井 |
やっぱり「性」と通底しているというか‥‥。
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| 赤瀬川 |
「フリーセックス」みたいなことになるのかな。
「偽札をつくってもいい」ってことになったら。
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| 糸井 |
なるほど（笑）。
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| 赤瀬川 |
「禁じ手をとっぱらう」という意味では。
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| 糸井 |
赤瀬川さんが「千円札の芸術」をつくったときは、
「使ってやろう」という気持ちとは
関係ないところで、はじめたんですよね？
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| 赤瀬川 |
そうなんです。
自分は「勝ち負け」から外れてるって
意識があるんで‥‥。
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| 糸井 |
ああ、いまの発言については解説が必要ですね。
ぼく、赤瀬川原平という人の「生存戦略」について
小さな文章に書いたことがあるんです。
「ケンカは絶対負けるって決めてる」って（笑）。
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| 赤瀬川 |
そうそう（笑）、
つまり、ぼくが「勝ち負け」にこだわってたら
本物の偽札をつくって、使ってたでしょうね。
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| 糸井 |
「本物の偽札」っていうのも（笑）。
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| 赤瀬川 |
でも、それはちょっとできないなっていう感じが、
ぼくには、あったわけです。
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| 糸井 |
そのバッターボックスには、立ってなかったんだ。
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| 赤瀬川 |
でもね、「だけど」っていう気持ちもあるんです。
これだけ印刷の技術が
どんどん精巧になってきているのにも関わらず、
お金を刷ってはくれないわけ。
印刷屋さんも、どうして刷らないんだろう、
お札だって印刷物なのに‥‥って、
もうバカな子どもみたいなんですけどねぇ（笑）。
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| 糸井 |
ええ（笑）。
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| 赤瀬川 |
ぼくに大人の論理が、もうちょっとでもあれば、
「世のなかのみんなが、やってないことの理由」が
すっと出てきたはずなんだけど。
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| 糸井 |
ええ、はい。
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| 赤瀬川 |
でも、だんだん、ワクワクしてきたんですよ。
そんな、子どもみたいなことを考えてたら。
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| 糸井 |
ほう‥‥。
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| 赤瀬川 |
もちろん「偽札」はいけないんだろうけどね、
「偽札」ではない「印刷物」。
「印刷」というのはコピーですからね、
「コピー芸術」で、何かできるんじゃないかって。
どこからがオッケーで、どこからがダメなのかは、
あとから考えればいいか、と。
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| 糸井 |
それで‥‥。
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| 赤瀬川 |
通貨及証券模造取締法違反。‥‥だったかな。 |
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＜つづきます！＞ |
