料理して、いっぱい食べていしると奥能登の食をまなぶ旅
地震をきっかけに通うようになった能登ですが、
いつも圧倒されるのは、
海のそばで暮らす方々の豊かな食文化です。

なかでも、発酵調味料のいしると冬の魚は、
現地で調達できるものが格別だと、
聞いているだけでお腹が鳴ってしまいそうな
エピソードを数々うかがい、
それは実際に確かめてみなくては!と
昨年、輪島を訪れました。

ご一緒したのは、食のプロフェッショナル、
オカズデザインさんと永福食堂さん。
地域の方々に教わりながら、食材を調達し、
料理し、食べて感じた能登をレポートします。
<後篇>いしるを作る舳倉屋さんのこと
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翌日は朝から舳倉屋(へぐらや)さんへ。
いしるのことをもっと知りたいと
中浦さんにご相談したところ、
紹介してくださったのが岩崎さんご夫婦でした。
舳倉屋では、代々、添加物を使わずに
新鮮な魚介と塩を自然発酵させて
いしるを作り続けるほか、
塩辛や干物など、
能登の豊かな水産資源を活かした加工品も
生産しています。



「いしるの作り方はとってもシンプル。
科学的なものはいっさい入っていません。
新鮮な魚介に30%ほどの食塩を合わせる。
あとは日本海の潮風と能登の風土、
そして元気な菌の力に委ねるだけ。
私たちはただじっと待つんです」と妻の律子さん。
舳倉屋の熟成タンクは
日本海の海沿い、
さえぎるもののない屋外に並んでいます。
以前は屋内にタンクを置いていましたが、
東南アジアへ視察に行ったとき、
ナンプラーが外で作られているのを目にし、
参考にしたのだそうです。
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能登の夏はとても暑く、
タンクの内部は、太陽の熱を直接受けて温度が上がり、
発酵がぐんと進みます。
そこで、濃厚な旨みが形作られます。
冬を迎えると、日本海から冷たい潮風が吹き、
熱を穏やかに沈めながら、余分な雑味をとってくれます。
さらに海沿いの湿度は乾燥を防ぎ、
じっくりと進む熟成を支えてくれるため、
一年を経て、とてもまろやかな仕上がりになるそうです。
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そういった経緯もあって、
舳倉屋では、海からの風をいい具合に含むよう、
タンクを完全には密閉せずに保管していました。
そこに、2024年の地震があり、
蓋が外れてしまったりと、
大きなダメージを受けてしまったのです。



「いしるの作り方はさまざまありますが、
どんな方法にも素材を余すところなく使い切る
先人の知恵が詰まっています。
かつて能登の沿岸部では、
多くの方が魚を背負って行商に出ていました。
その際に、売りに出せない魚の残渣(ざんさ)を、
自分の家の倉庫で塩とともに寝かせたのが、
いしるの始まり。
冬になると、保存しておいた野菜を漬けたりと、
昔から能登の生活に密着したものなんです。
環境を整え直すには時間はかかるけれど、
ゆっくり熟成させて、
また良いいしるに戻していきます」と直さん。
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おすすめの調理方法をうかがうと、
「やっぱり、お出汁や日本酒で割ったいしる鍋。
具材はブリや甘エビなどの魚介もいいですが、
主役はたっぷりの野菜。
特にナスや大根、じゃがいもなど、
淡白な野菜との相性が抜群で、
薄く短冊切りにして入れると
旨みを芯まで吸い込んでくれます。



酸味や油分ともよく合うので、
ナスや大根の浅漬けに少し垂らしたり、
チャーハンやカレーを作る際には
スプーン一杯加えるだけで、
料理の輪郭が際立ちます。
普段はしょう油を使うところを少し減らして、
その分いしるを増やしてみる。
そんな風に気軽に取り入れてみてほしいです」と律子さん。



舳倉屋さんでは、どんな家庭や料理店でも使いやすくするため、
年ごとの微妙な差が出にくいように
常に使いやすい品質を届ける努力を続けているそうです。
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一方で、オカズデザインさんと永福食堂さんからは、
その年の魚の状態や気候を反映させた、
「ヴィンテージいしる」を作るのもおもしろいのでは、
というアイデアが。
未来に向けて商品づくりの話題でひと盛り上がり。



これからも交流を重ねながら、
能登の味をたのしく伝えるコラボを
いっしょに考えていきましょう、とお約束し、
帰路につきました。
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オカズデザインの知子さんによると、
「力強さと勢いを感じる素材」も、
いしるとの相性が良いそうです。
これから夏に向けては
そら豆やアスパラガスなど。



わたしはアドバイス通り、
そら豆ごはんを炊き込むときにすこし加えて、
炊き上がったあとに、
ほんのすこし”追い”いしるをしたら、
そら豆の甘みが引き立って、
全体的にリッチな味わいになった気がしました。



ここまで読んでくださった読者の皆さま、
いしる未経験の方がいらっしゃいましたら、
普段はしょう油で味付けしているところを、
いしるに代えるところから、
ぜひ試してみてくださいね。


後日談




オカズデザインさんと永福食堂さんの
食の探求は、旅の後も続き、
いしるのポテンシャルを改めて集まって考えてみようと、
後日、オカズデザインさんが営む
器料理店「カモシカ」に再集合しました。
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この日に合わせて、
舳倉屋さんからはいしるの干物に塩辛、
いしるのジェラートを。
谷川醸造さんのいしるも取り寄せ、
能登の幸尽くしパーティに。
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オカズデザインさんと永福食堂の皆さんの手によって
イタリアンも、和風にも、アジアンにも、
次から次へと料理が広がり、テーブルは大賑わい。
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いしるの風合いを活かしたサラダにスープ、
いしるを練り込んだパンにソーセージ、
カレイのいしる干しやイカ、
そしてパスタにうどん、バインミーにと、
それぞれにさわやかさがありながら、
お酒がすすむ深い味わいで、
あっという間に夜は更けていきました。
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秀治さんは自ら、
小さなボトルでいしる作りをスタート。
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次は皆で、舳倉屋さんへ、
仕込みのお手伝いに伺えたら、と話しています。
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舳倉屋さんの最新情報




昨夏は、大きなタンクを動かすための重機が揃わず、
小さなタンクでいしるを作られました。
今年こそ暖かくなったころ、本格再開予定だそうです。
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(おわります)
2026-06-25-THU
わたしたちが訪れた場所
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谷川醸造
明治38年創業。伝統を守りながら、
食のトレンドに敏感な層からも支持を得ています。
独特の甘みとコクが特徴で、
地元のひとにも愛されるサクラ醤油のほか、
添加物に頼らずに麹の力を活かしたラインナップも豊富。
チャーミングなパッケージデザインも魅力です。
麹ディップソースやおかずみそは、
いつもの一品を手軽にアレンジでき、
使い切りやすい小ぶりなサイズなので
乗組員も重宝しています。
永福食堂さんは、谷川醸造さんのいしるを仕入れ続けていて、
イタリアンのほか、
東北の郷土料理「たまこん」に入れたりと、
さまざまな料理との相性を追求し続けられています。
Data: 石川県輪島市釜屋谷町2-1-1 / 0768-22-0501
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鳥居醤油
明治初期から続く土壁の蔵を構え、
木樽を用いた天然醸造による醤油造りを、
職人の手作業で守り続けています。
地震では甚大な被害がありましたが、
もろみや原料の能登産大豆が奇跡的に無事だったことから、
事業を続ける道を選んだそうです。
麹造りは、茹で上がった大豆を人肌まで冷まし、
麹菌を付けて麹室(こうじむろ)へ入れる工程から始まります。
四日間、30度を超えないように常に確認しながら、
深夜や早朝を問わず手作業で熱を逃がす管理が徹底されています。
醤油造りに適しているのは、気温が下がる11月末から3月頃まで。
自然の気温変化に寄り添いながら、
ゆっくりと時間をかけて発酵・熟成を進めることで、
鳥居醤油ならではの深い味わいが生まれます。
その工程の説明してくださった
3代目店主、鳥居正子さんの肌は美しく、
ほんとうにいいものを正しく作り続けていらっしゃることを
しみじみと感じました。
だし醤油やもろみ塩などの定番商品にもファンが多く、
オカズデザインさんとは長いお付き合いが続いています。
Data: 石川県七尾市一本杉町29 / 0767-52-0368