あっちこっち隊のやすなです。
いしるとの出会いは、
はじめて能登を訪れたとき、
のと里山空港で「ふぐのいしる干し」を
たまたま見つけたことでした。
ナンプラーともしょう油とも違う、
奥深くてさわやかさもあるような風味と、
ふぐの柔らかさにびっくり。
次に訪れたときには、
いしるの小さなボトルとスルメイカのいしる干しを求め、
またまたその美味しさに驚き、
すっかりファンになってしまいました。
それからは、地域の方々にお会いするたび、
家庭でのいしるの使い方や、
どんな食材と合わせているのか伺うようになり、
ますます興味がわいてきました。
「しょう油の代わりに使う感覚かな。
里芋やじゃがいもを炊くとき、
いしるを少し入れると、
味がまあるく落ち着くね」
「冬の魚と相性がいいね。
刺身をいしるをつけた醤油で食べると最高やよ」
「うまく説明できんけど、
わたしたちが普段食べてるいしるは、
あなたたちが買ってるのとは、
味がぜんぜん違うから」
聞いているだけで
お腹が鳴るエピソード揃いに心奪われ、
これはしっかりと本場の味を教わらなければと、
旅の計画をたてました。
ご一緒してくださったのは、食のプロフェッショナル、
オカズデザインの吉岡知子さん・秀治さん
そして、永福食堂の松本晋亮さんご一家とスタッフの皆さん。
妻の麻美さんと娘のむぎちゃん、まっきーさんと辻ちゃんも
同行してくださいました。
というのも、お二組は、以前にほぼ日で開催したイベント
「能登のこと、知ろう&味わおう!のトーク会」に
参加してくださり、
地震や復興の情報だけではなく、
もともとあった能登のすばらしさを伝えていこうという
ほぼ日の姿勢に共感してくださったのです。
まっさらな気持ちで能登を訪れ、
地域の方からお話を聞き、食材を知り、
自分たちにこの先なにができるか考えてみよう。
そんな思いで、昨年3月、
いっぱい食べていっぱい飲む気十分で輪島を訪れました。
私たちが能登を訪れるころ、
海はあいにくの時化に見舞われていました。
かねてより連絡を取り合っていた漁師の上濱さんによると、
輪島港では2月中にわずか2回しか出漁できなかったといいます。
たらやアカガレイ、甘エビがとれたらいいね、
などお話していましたが、
訪問を予定していた日は大雪に見舞われて、1ヶ月延期に。
3月に入っても空は荒れたままでしたが、
「宇出津(うしつ)ならほぼ毎日出ているみたいだよ」
という上濱さんの助言を受け、
私たちは輪島へ向かう前に、
能登町の「日の出大敷」、中田洋助さんを訪ねました。
前日はあいにくの悪天候で
漁には出られなかったそうですが、
その前の漁での収穫分を確保しておいてくださったおかげで、
無事、5kgもの立派なイワシを受け取ることができました。
そして、公費解体が進んで更地が増えていくようすを
眺めながら、輪島へ。
途中、「mebuki (芽吹)」に立ち寄ってランチタイム。
地震直後から炊き出しを続けた料理人仲間が
集まって始めたお店だそうです。
それぞれ、刺身にフライなど、
立派な魚の定食をいただきました。
腹ごしらえを済ませた後は、直売所「能登おおぞら村」へ。
輪島市や穴水町、能登町の採れたての野菜や加工品が並びます。
オカズデザインさんと永福食堂さんの勘をたよりに、
いしるとイワシに合う食材を選びました。
mebuki (芽吹)のスタッフさんにおすすめしていただいた、
「酒ブティックおくだ」にも立ち寄りました。
90年以上続く老舗の酒屋さんで、
木の風合いを活かした明るい雰囲気の店内に、
地元の日本酒やワインを中心とした
幅広いラインナップが揃います。
どれにしようかと迷う私たちに、
店主さんが丁寧に説明してくださったり、
常連のお客様から、
いわしのつみれに梅酒をいれるとおいしいと教わったりと
たのしい交流もありました。
あれやこれやと悩んだ末に、
夜の宴のお供に選んだのは、この4本。
左から、竹葉(ちくは)の梅酒、遊穂(ゆうほ)の純米酒、
末廣の純米酒、宗玄の無濾過生原酒。
能登町の数馬酒造、羽咋市の御祖酒造、輪島の中島酒造店、
珠洲市の宗玄酒造と、すべて能登のお酒です。
食材とお酒の調達を済ませた私たちは、
本日の宴の会場、中浦政克さんのご自宅へと向かいました。
街を歩くと、車の移動以上に地震の影響を多々感じます。
中浦さんは、柚餅子総本家中浦屋の4代目。
取材を通して出会い、
その後もほぼ日本社ビルで開催したイベントに
お越しいただき、能登の現状をお話してくださったりと
交流を重ねてきました。
そんななかで、今回の企画にも興味をもってくださり、
ご自宅のキッチンをお貸しくださることに。
同席してくださったのは、
中浦さん夫妻のほか、ご近所のお仲間。
おいしいものが大好きな主婦の山上さん、
茶舗を営む西浦さん、
ボランティア活動を続けるジルバーンの岩本さんです。
いざ、調理スタート。
まずはイワシを下ろすところから。
オカズデザインさんと永福食堂の皆さんが、
手際よくさばいていきます。
中田さんからいただいたイワシは、
私たちにとっては充分に新鮮で、
生でいただこうとしましたが、
ご近所で「お宿たなか」を営む田中さんからストップが。
田中さんは、中浦さんのご友人でもあり、
能登ならではの調理方法を教えてくださるべく、
お忙しい間を縫って、かけつけてくださったのです。
そんな田中さんから、奥能登の感覚では、
一日おいたイワシは火を通すべき、と念押しをいただき、
急遽レシピを変更しました。
まずは、穴水町の祝蕾(しゅくらい)や七尾市の中島菜、
そして能登町のきくらげや原木椎茸、イカを使って、
ごま和えやサラダなどの前菜を。
いわしは、
フードプロセッサーでミンチにしてつみれにしたり
パン粉をつけて揚げたあとに、パスタにしたり、
アヒージョにしたり。
アヒージョのオイルには、パンのほか、
中浦屋さんを代表する和菓子、柚餅子をディップすると、
さわやかな風味が引き立ち、絶品に。
酒ブティックおくださんで調達したお酒と共に、
イワシを余すところなく存分に楽しんだあと、
なんとびっくり。
この日は来られなかった上濱さんから、
香箱ガニのサプライズ!
食事を存分に楽しむ一方で、
中浦さんをはじめとする皆さんが、
地震直後のエピソードや、
復興過程でのむずかしさを話してくださいました。
そこには、新聞やニュースなどの報道では伝わってこない
リアルな能登のいまがあり、
もし同じような地震や水難が
自分の住む地域で起きたらどうなるのか、
それぞれが思いを巡らす時間となりました。
最後には、ご一緒してくださった西浦さんから
メッセージをいただきました。
「支援をしてくださる方から、
何が必要かと聞かれることがあるけれど、
私はなによりも、輪島に来てほしいです。
ちゃんと自分の五感で感じてほしい。
そして自分の周りの人に、こんな状態だったよ、
まだ何もないけれど、行ってあげることが大事だよ、
と伝えてほしいです。
そしてこれからこの場所がどのぐらい変わっていくか、
10年、20年後にはどうなっているか、
確認してもらえたらうれしいです」