![]() |
「GRでファインダーを覗いて撮ると、 思ったのと違う写真になる、と」 |
![]() |
「そうなんですー。 ずれちゃうんです」 |
![]() |
「一眼レフでは そういうことはないような‥‥」 |
![]() |
「なにをおっしゃっているのか、 わたしにはさっぱり‥‥」 |
![]() |
|
![]() |
「うん、たしかにずれるよね」 |
![]() |
先日、デパ地下で おいしいお弁当を買ってきて、 食べる前に撮ろうと思ったんです。 そしたら、こうなりました。 ![]() これ、ファインダーの中には ちゃんと収まってたんです‥‥。 |
![]() |
ああ、なるほど。 |
![]() |
でも、撮ってみたらずれてた。 私のやり方が悪いのかな。 |
![]() |
いや、それは、そうなんですよ。 レンジファインダーって 言われるカメラの欠点なんですよ。 |
![]() |
そうなんですか? |
![]() |
一眼レフっていうのは、 レンズを通した像が、 ミラーとプリズムを通って、 そのままのすがたでファインダーから見える。 でも、レンジファインダーは、 レンズに入る像と、 ファインダーに入る像が別なんですね。 で、遠いところは、ほぼ合うんですが、 近いところは、ずれが大きい。 冨田さんはお弁当を撮ろうとして、 近寄っているので、 見たものと写ったものに ずれが生じたんですよ。 |
![]() |
じゃあ‥‥慣れるしかないんでしょうか。 |
![]() |
はい、ファインダーを使っている以上、 慣れるしかありません。 近づいたらちょっと下げて撮る、 ということになりますね。 |
![]() |
あるいは、近くを撮るときは 液晶表示をオンにして確認するか。 |
![]() |
むかしは、レンジファインダーは、 構造上、あまり近接撮影が できなかったんです。 だから、ずれもそんなに気にならなかった。 ところが、今のカメラは 1センチまで近づけたりするので、 そうなったら、‥‥ずれるに決まってるよね。 ![]() |
![]() |
そうか、ファインダーというものの 限界なんですね。 |
![]() |
でもね、冨田さん。 |
![]() |
ハイ! |
![]() |
前にも言ったと思うけど、 冨田さんは、ずれなんか気にせず 撮ったらいいんだよ? |
![]() |
菅原さんは、とみちゃんに いつもそのアドバイスですね。 |
![]() |
いいじゃない、気にしなくって。 |
![]() |
たぶん、気にしてないから こういうのが撮れちゃうんですけどね(笑)。 |
![]() |
いや、これはいろんな人の意見があるから 何とも言えないと思うんですけど、 これがちょっと暗くなったとしたら、 このちゃんと撮れてるって 冨田さんが思ってるほうより、いいと思う。 |
![]() |
うーん。 |
![]() |
ちゃんと撮れたっていうのは、 これですね。 ![]() で、もういちど、 こちらが、ずれちゃったほう。 ![]() |
![]() |
何か雰囲気とか写真としても、 こっちの方がぼくはいいと思います。 |
![]() |
これの方が何か、 トミさんの「美味しそう」がある気がします。 |
![]() |
わたしも同感。 |
![]() |
みんなに好かれるのはこっちの方なんですね‥‥。 |
![]() |
もし、冨田さんが写真集を出されたとします。 |
![]() |
それはないんじゃない。 |
![]() |
もしも、ね(笑)。 そしたら、このずれた弁当のほうが 入ってても大丈夫かもしれないよ。 |
![]() |
へえ! |
![]() |
たしかに、味はこっちの方があります。 彼女らしさが出てる。 |
![]() |
(笑)。![]() |
![]() |
うん。 |
![]() |
写真て別に、枠に入ってなきゃいけない、 ってことはないですし、 別に失敗してもいいんですよ。 冨田さんのは、全然これでいいんです。 |
![]() |
なんだー。 |
![]() |
なんだー。 |
![]() |
(笑)。 |
![]() |
むしろこっちの方がいいです。 ぼくはこれが好きですよ。 |
![]() |
断然印象に残るのはこっちですよね。 |
![]() |
たとえば、よく撮れた花の写真と 並べてみたらいいですよ。 ほら。 ![]() ![]() で、こっちはどう? ![]() ![]() |
![]() |
おお! |
![]() |
なるほど。 最初のほうが、いいですね。 |
![]() |
なんか、ずれてるのが、 かっこよく見えてきた。 ‥‥ほんと? 菅原マジックにかかってない? ![]() |
![]() |
わーい、あたしの写真集! ‥‥って、そんなわけがないでしょ! |
![]() |
でも、写真集ぽく見えてきました。 |
![]() |
なんかね、面白いなあと思うのは、 自分で一番いいと思ったものって そんなにたいしたことないんだなあって。 |
![]() |
そうなんですよねー。 |
![]() |
「俺が俺が」っていうの、 よけいなんだね。 |
![]() |
写真を撮る時は、 そのままでいいですよ。 ずれちゃっても、 あんまり気にしなくていいんです。 そのうえで「もうちょっとどうしたら いいかな」って知識が役に立ちます。 暗くしたり明るくしたりっていうのは そういうことですね。 「もうちょっと暗くなるといい感じかな」 って。 特に冨田さんの持っている GRというカメラは、一眼レフと違って、 すみずみまでピントをあわせて 全体を写すのに向いているカメラです。 前に説明しましたね。 |
![]() |
この回ですね。 |
![]() |
GRはね、本当に不便なカメラなんですよ。 不便だからいいの。 |
![]() |
へえ。 |
![]() |
広角、単焦点、そして値段も不便。 不便なカメラは不便なまま 使った方がいいと思うんです。 同じことはトイカメラにも言えるよね。 トイカメラは玩具としてたのしめばよくて 「じょうずに撮る」なんて 考えないほうがいいんです。 |
![]() |
楽しくね。 |
![]() |
トイカメラって、 もったいないなと思ってるのは、 トイカメラがいいなと思ってる人は、 感性、二重丸なんです。 でも探究心が足りないことが あると思うんだ。 |
![]() |
なるほど。 |
![]() |
今って、技術が進化し過ぎちゃってて、 大事なものを結構捨てちゃってたり、 なくしちゃってたりすることがすごく多いんです、 カメラの場合。 でも、トイカメラの場合は そういうことを全くやってないので、 大事なことも進歩を止めちゃってる分、 大事なことも残っちゃってるみたいな。 偶然なんです、それは。 意図的に残ってるんじゃなくて、 偶然残っちゃってるんですよ。 ロモ(LOMO)なんか、 周辺が落ちて(暗くなって) 可愛いって言うけど、 わざとじゃなくて たまたま落ちちゃっただけなんですよ。 ![]() |
![]() |
性能的に光が取込み切れないので、 周りがこう、暗くなっちゃうんですね。 |
![]() |
ホルガ(HOLGA)なんかも、 プラスチックでできてるから、 真ん中しかピントが合ってなくて、 周りはもう流れちゃってる。 でもその方が、撮る人が 何を見てるかがはっきりするじゃないですか。 そういう意味ですごくいい。 だけど、それだけで溺れちゃうと つまらないんじゃないのかな。 結局、誰が撮っても 同じ写真になっちゃうんですよ。 写真というのはやっぱり撮った人、 全員違うはずじゃないですか。 今だってこんだけ違いますよね。 それがよくなっていけば、 おーってなるわけじゃないですか。 それがならないんだよね。 |
![]() |
トイカメラだと。 |
![]() |
みんな、一緒なんですよ。 ホルガはみんな、ホルガ。 ロモはみんな、ロモ。 そこで何とか工夫をして 個性を出そうと思って、 僕もやってみたんですけど、 そこで工夫しても意味がないなと思いました。 だったらこういうちゃんとしたカメラで 工夫してった方が、 ずっと楽しいよって、 ぼくは思うんですよ |
(つづきます!) |
![]() |
![]() |
![]() |