マーシュ・ラディウユ
物語の主人公。
もともと離れ離れで暮らしていた父親と母親の離婚が
正式に決まったことと、
病弱な弟ドネッドの症状がおもわしくなく
空気のいい田舎へ、という理由から
母親の田舎であるSt.イヴァリースに引っ越してきた。
心優しく、他人の痛みを即座に見抜き、理解する。
正義感が強くまじめ、運動はちょっと苦手。
女の子っぽい顔だちのせいか、からかわれることが多く、
St.イヴァリースの生活になじめないでいる。
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ミュート・ランデル
もう一人の主人公。
マーシュのクラスメイト。ぬいぐるみを片時も手放さない、
ちょっと変わった男の子。内気でおとなしいせいか、
学校ではいじめられている。
母親がミュートを置き去りにして病気で亡くなってから
父親のシドは定職に就かず酒浸りの日々。
ミュートはひとりぼっちで、母親の形見のぬいぐるみを
手放さずにいるのだ。
コミュニケーションはへただが、マーシュとはいつの間にか
親しくなっていた。
彼の見つけた古本がこの世界を一変させることに‥‥
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リッツ・マルール
物語のヒロイン。マーシュとミュートのクラスメイト。
快活で男勝り、運動も勉強も得意な優等生だが
勝ち気で白黒はっきりつける性格が災いして
まわりからは敬遠されている。
リッツのコンプレックスは、生まれつきの白髪。
染めているが、実はとても気にしている。
勝ち気な性格も、コンプレックスの裏返しなのだ。
マーシュの前では強気だが、ほんとうは泣き虫な一面も。
一変した世界をマーシュとともに
元にもどそうと努力するが‥‥
|
■■■主人公がかかえているもの。 |
ほぼ日 |
どこまでが勝手にやっていいよってことか、
興味があります。
主人公が3人出てきますよね。
彼らの「背景」みたいなことは
松野さんがお考えになっているんですよね。
|
松野 |
はい。 |
ほぼ日 |
で、彼らがみんな小っちゃな傷を、
いろんなパターンの傷を全員が負っています。
それは全部現代の子供たち、
あるいは子供だった大人に
少しずつあるようなものが入っていました。
しかも3人が、そんなに仲良くない、
ただ一緒にいるっていう関係。
一緒にいざるを得なくて
一緒にいるような感じでいて、
その3人が巻き込まれて行く。
さらに向こうの世界に行くと、
その前の世界では仲間だった2人が
敵対関係になります。
そういった骨子っていうのは
松野さんの中に
ずっとあったものなんですか?
97年でしたっけ、その企画書から
あったんですか? |
松野 |
そうですね。
そこらへんはあんまり変わってませんね。
僕の中から出てきたものですが、
僕は平凡な家庭で育って来たんで、
決して不幸な境遇ではないんですけれど(笑)。 |
ほぼ日 |
例えば子供たちが今こうだからって
マーケティングから物を作って行く
やり方がありますよね。 |
松野 |
あ、はいはい。 |
ほぼ日 |
子供たちは今きっとこうだろう、多分こうだ、
だからこういう痛みを入れてやれ、
というマーケティング優先の考え方とは
違う気がしたんです。
もうちょっと自然に松野さんから
出て来たもののように見えるんですよね。 |
松野 |
そういう話自体が
僕はわりと興味があるんです。
ニュース見たりとか、
報道特集を見たりとか。
自分の周りの人間たちの
いろんな話を聞いていても、
主人公のマーシュみたいな経験を
してるヤツらはわりと多いですよね、
実は意外と。 |
ほぼ日 |
そうですね。
ミュートにしてもリッツにしても
こういう子はいますよね。
|
松野 |
実はいっぱいいますよね。
なかなかオープンになりませんけども。 |
ほぼ日 |
いつでも隠し事があるとか、
隠してることがすごく自分の
マイナスだと思ってる子、
隠したくないことを隠している子、
‥‥全部あるんですよね。 |
松野 |
たぶん僕らの世代よりも
今の世代の方がもっともっと
多いんだと思うんですよ。 |
ほぼ日 |
多くの人がリアルに感じてると思います。
子供たちにすごく受け入れられている
感じがするのは、
このベースの深さかなと思ったんですけど。 |
松野 |
そうかもしれませんね。 |
|
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■■■必ず違うエッセンスを。 |
ほぼ日 |
松野さんみたいな世界を作れる人って、
ひょっとして映画作家になったかもしれないし、
漫画を描いてたかもしれないし、
何かしらで絶対クリエイティブで
こういう表現をしてたと思うんですけど、
何でゲームなんでしょう? |
松野 |
ああ、まあそれはゲームしか
作る能がないっていうのが
あるんですけど(笑)。
ぶっちゃけて言っちゃいますと。
僕はいつも物を作る時には
他の人と同じことはやりたくない、
っていうのが必ずあるんです。
同じことをするのは、つまらないんで。
だから必ず違うエッセンスを
取り込もうと思ってるんですね。
昔オウガバトルというゲームを
作ったときもそうでしたけど、
あんまり他ではやっていなかった…、
あれ一番最初の時は93年なんですけど、
ロールプレイングゲームって
正義と悪の戦いで、
必ず最後に正義が勝って、
悪は悪であるっていうじゃないですか。
実際戦争ってそんなもんじゃないし、
一言では語れないし。
だからどこに正義があって
どこに悪があるっていうのが
分からないゲームにしようっていう
エッセンスを持ち込んだり。
|
ほぼ日 |
ええ。 |
松野 |
あと、タクティクスオウガの時は、
たまたまあの時はユーゴスラビアとかの
紛争がけっこう多くあって、
それはニュースでずっと見ていたんです。
僕は個人的にも興味があったので。
で、文献とかあたってるうちに
紛争の根がすごく深いことに気が付いて、
ゲームにもそういう部分を入れたら
いいんじゃないかっていうのが
あったりとか。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
松野 |
今ではそれはわりと
主流になっちゃったんですけど。
そういう意味では今回のFFT-Aも
とっかかりとしては、
前回のFFTは僕は反省点が
非常にあったんですね。
僕の中で焦点定まらないまま
作り始めちゃったっていうのが。 |
ほぼ日 |
焦点が定まらないまま
作り始めてそれが最後まで
行っちゃったってことなんですね。 |
松野 |
そうそうそう。だから自分の中で
未消化だった部分があって、
実際ユーザーから
そういうところは見抜かれるんですよ。
それはもうご指摘の通りで、
反省点として、やっぱり今回は
一つ芯となるテーマをちゃんと作ろうと。
元々ファイナルファンタジーが
目指す世界っていうのは
わりとほんわかした世界なんです。
ほんわかした世界なんだけども、
そこに入り込むためのユーザーっていうのは
実はいろんなものを背負っていて、
ゲームに投影したいものじゃないですか。 |
ほぼ日 |
はい。 |
松野 |
そういうところを
アレンジしたかったんです。
やってみたかった。
だからほんとは最後の最後まで、
おまんじゅうをつくるなら
あんこを詰めるところまで
自分でやるべきなんでしょうけど、
出だしと最後だけ
こんな感じにしてとか言って、
あと真ん中に関しては
自由に作っていいよって、
スタッフに振る作り方をしました。
でも、僕の言った骨っていうものを
スタッフが理解をして
全部作ってくれたかって言われると、
それは違うんだろうなって思うんですよ。 |
ほぼ日 |
うんうん。でもそこは許容と言うか、
ゲームとしての、松野さんが予想しない
おもしろさが出て来たりしますよね。 |
松野 |
そうです。 |
ほぼ日 |
骨格さえしっかりしていれば
大丈夫、というチームのやり方ですよね。
|
松野 |
そういう考え方でやってるつもりですね。
よく言えばスタッフを信頼して任せてるし、
悪く言えば放置しているのかもしれません。
放任主義でもあるっていうことなんですけど。 |
ほぼ日 |
テーブルをひっくり返すようなことは? |
松野 |
小さなテーブルなら
たまにひっくり返すかも(笑)。 |
■■■ジャッジメントシステムについて。 |
ジャッジメントシステム
イヴァリース全土に制定され、
すべてのバトルに影響を与えるのは、
国王の敷いた法「ロウ」。
イヴァリースでは「殺し合い」や「戦争」が
禁止されているため、すべてのバトルは
ロウ(戦闘ルール)にしたがって執り行われる。
たとえば「炎魔法禁止令」がロウとして公布されていれば
炎魔法をバトルで使用することができない。
バトルはすべて審判「ジャッジ」によって監視されている。
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|
ほぼ日 |
今回入れた新しいシステムの中に
「ジャッジメントシステム」
というものがありますね。 |
松野 |
うーん。これがですね、
実際完成されて見てみると、
反省点が多いんですよ(笑)。 |
一同 |
ええっ(笑) |
松野 |
正直に言いますと、
練り込みがちょっと足りなかったです。
‥‥反省点はいっぱいありますね。 |
ほぼ日 |
うんうん。 |
松野 |
FFT-Aは個人的にはおもしろい試みだし、
発展性はたくさん持ってると思うんですよ。
そういう意味ではこれはまだまだ
アレンジメントできる可能性を
持ってるシステムだと思うし、
チャレンジしていきたいんです。
今、北米版を作ってるんですが、
かなりタイトなスケジュールで作った日本版の
弱点は作り手も分かってるんですよ。
その弱点のいくつかの部分っていうのを
今回北米版では直そうとしています。
ジャッジメントシステムも
かなり、今、手を加えている最中です。 |
ほぼ日 |
どういうところがよくないんですか? |
松野 |
簡単に言っちゃいますと、
元々シュミレーションRPGって
将棋っぽいイメージがあると思うんですけど、
ほんとに将棋にしちゃうと
やっぱりライトユーザーの方は
ついて来れないんですよ。
将棋は楽しいかもしれませんけど、
実際に将棋をやるかっていったら
そう簡単にはやらないですよね。 |
ほぼ日 |
はいはい。 |
松野 |
シミュレーションRPGも、
緻密な計算と戦略と戦術で
戦っていくっていうのは
楽しい人は楽しいと思うんです。
でもいろんな人に楽しんで欲しいという
裾野を考えるとそこは
大味に作らざるを得ないかなと
僕は思ってるんですね。 |
ほぼ日 |
はいはい。
|
松野 |
あともう一つは任天堂さんの方で
ファイアーエムブレムっていう
素晴らしいシュミレーションRPGが
あるんです。
これの真似してもしょうがないんですよ。
ファイアーエムブレム、僕は大好きなんです。
緻密な戦術と戦略で戦っていく、
非常に素晴らしいゲームだと思うんです。
それと同じものを作っても
しょうがないんです。
逆にエムブレムがあるからこそ、
シュミレーションRPGの
違ったユーザー層と遊びを
今度は提供したいってところで
FFT-Aを作ってました。
ロールプレイングの感覚で
ガンガン育ててガンガン戦っていくっていう
そういうノリは残したかった。
ただそれやるとほんとに力技で
なんでもなっちゃうんですね。
だから僕はどこかで制限事項を設けようと。
だから炎魔法禁止とか、
そういう制限事項を入れて行こうってとこから
元々「ジャッジメントシステム」という
発想が始まったんですよ。
ところが、実際に商品を作ってみると、
この辺のニュアンスの使い方が
僕が、まずかったというか、
コントロールできてなかったんでしょうね、
「制限」にしかなってないんですよ。 |
ほぼ日 |
うん? 制限にしかなってない、とは? |
松野 |
できればそこに
一長一短は設けたかったんですよ。
制限はあるんだけど
これでいいところもあるよねってところを
やりたかったんですけども、
その制限だけが際立っちゃって
いいところが立たなかったんですよ。 |
ほぼ日 |
ああ! |
松野 |
そういう意味では北米版は、
制限もあるんだけど
その制限を生かして
逆にプラスになることっていうのを
もっとオープンにしていきたいというか、
クローズアップしたいと思うんです。 |
ほぼ日 |
はあ、なるほど。
でも、ヘビーユーザーというか
FFT-Aをやりこんでいくと
ジャッジメントシステムっていうのが
いい、という声も増えるのでは? |
松野 |
ええ、コアユーザーには
よかったんだけども、
ライトユーザーにはやっぱりかえって
足かせになっちゃったんですよ。
だからバトルはちょっと難易度を下げて
簡単にして、この制限で
多少頭を使ってもらおうって思ったんですけど、
バトルも作ってみたら意外と
そんなに簡単でもなくなって、
覚えなきゃいけないこともたくさんあるし。 |
一同 |
(笑) |
松野 |
よく言えば奥が深い、遊び甲斐がある。
悪く言うと複雑である、
煩雑であるっていう形になったという
反省があるんです。だから今、
北米版に向けて改良しているんです。
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