いいものリレー

10人めのゲスト
竹村 真奈さん
プロローグ整った家で、好きなものに囲まれて
快適に暮らす。

次にバトンを受け取ってくださったのは、
編集者の竹村真奈さん。
編集のお仕事とは別に、
整理収納アドバイザー、ルームスタイリストの
資格をとって、
お片付けの活動をされています。
ミニマリストなわけではなく、
好きなものに囲まれて快適に過ごすとは。
いろんな「いいもの」を教えていただきました。

ゲストキュレーター竹村 真奈(たけむら まな)
編集者でありながら、
「快適な暮らし」を多くの人に知ってもらうために
片付けに困っている人や、
ミニマリストになりたいと願っている人の夢を
お手伝いする活動をしている。
Instagramでは、小さな家で
好きなモノに囲まれた暮らしを発信中。

知れば知るほどおもしろい、
整理収納の世界。

――
竹村さんは、「たけまな」さんという名前で、
みなさんに親しまれていますが、
もともとは編集の仕事をされていて。
今はお片付けのアドバイスや、
ルームスタイリストもやられています。
どういう流れで、
お家のことを始めたんですか。
たけまな
妊娠出産を機に、というのが大きいですね。
この部屋に人が1人増える
ということに危機感を覚えて、
怖くなって、ものを減らさないと!って思ったんです。
でもそう思いながらも、ベビーベッドとか
子どものためのものをどんどん買っている自分もいて。
どうしよう、じゃあ自分のものを捨てなきゃ。
って、そこから断捨離をしだしたんですよ。
それが10年ぐらい前。
――
そういうきっかけだったんですね。
たけまな
でも、それより前、結婚したときも断捨離は始めてました。
徐々にものを捨てる、ということはしてたけど、
捨てても捨てても、捨てきれてなかったんですね。
ずっとリバウンドみたいなことが続いてて、
「けっこう捨てたのに減らないなぁ」って。
でも、それは捨てる量があまい、ってことなんですよ。
――
み、耳の痛い話です‥‥。
捨てきってない感じというのは、どういう状態ですか?
たけまな
「余白が足りていない」状態ですね。
このスペースに収納できたらOK、って思いがちだけど。
――
ああ‥‥。
クローゼットに入るだけ入れて、
ギチギチだけど入ってるからだいじょうぶ。
たしかに、ありがちです。
たけまな
洋服だったら、手が入るくらいのすき間、
そういう余白が必要です。
じゃないと、服はシワシワになるし、
着たい服がすぐに見つけられない。
――
いつも取り出しやすい上にある同じ服ばかり着て。
‥‥先生、今日はいろいろ教えてください!
たけまな
はい(笑)!
服はいっぱいあるのに「着るものがない」って言って‥‥
また買っちゃうときってあるでしょう? 
で、また増える。その繰り返し。
そうしてがんばって捨てていってた先に、
整理収納アドバイザーという資格があるのを知って。
勉強してみたら、
整理収納の基本が全然分かってなかったと気付きました。
「とにかく手放す」は正しいんだけど、捨て方も甘いし、
ものを手放すより前に張り切って、収納道具を買っちゃうとか。
――
まず収納用品を買っちゃうというのは、
ありがちな失敗として、見かけます。
たけまな
そう、それをやってたんですよね、まんまと。
知れば知るほど、この世界がとってもおもしろくて。
――
資格を取ったのは、いつごろですか?
たけまな
3年前ぐらいかな。
同時にルームスタイリストの勉強もして、
資格を取って、っていう感じですね。
――
そこから、お片付けがお仕事になっていくんですか。
たけまな
整理収納の勉強をして、自分の家が片付いたら、
やることがなくなっちゃって。
次はだれかの家を片付けるしかない、って。
――
もうやる場所がない!
たけまな
散らかってる家を見ると超興奮状態で(笑)。
片付けたい衝動にかられるんです。
――
捨てるものがいっぱいある家を見て興奮!?
たけまな
そう。編集の仕事とはちがう楽しさがあります。
チームを結成してやり始めたのが、去年です。
勉強したし、楽しいし、伝えたいし。
誰かにやってもらうんじゃなくて、自分でやろう、
自分でやったほうが早いよ、って伝えてます。

スタイリングは、整理・収納ができてから。

――
「ルームスタイリスト」というのは、
勉強してみていかがでしたか?
たけまな
思っていたのと、ぜんぜん違いましたね。
「インテリアなんて、私にできるわけない」
と思ってました。
でも、勉強したら、わかったんです。
インテリアの基本って、
たとえば部屋に入って真正面が
「フォーカルポイント」といって、
そこがビシッと決まってると、
その印象で「オシャレな部屋」とか
「〇〇な部屋」というイメージが、
3秒で植えつけられるらしいんですよ。
それを聞いたときに、
うちはフォーカルポイントに何も置いてなかったことに
気付いて、今はアートや植物を飾ったりね。
座ったときに目がいくところも、フォーカルポイント。
あとは階段を上がるとき、
視線は左から右に動くことを意識する、とか。
――
そういうのをお勉強するんですね。
ものの置き方にもコツってあるんでしょうか?
たけまな
いろいろあります。
取り入れやすいのだと、
「三角形を意識して3個のものを並べましょう」
というのがありますね。
1、2、3って、ちょっと意識して。
――
同じものが3個じゃなくても、
3個をひと組みとして考える、ということですか?
たけまな
そうです。
4つのものでも、三角形になるように置けばいい。
いろんな三角が何個もあってもいい。
――
そう言われてみると「3」って安定感を感じる気がします。
色の使い方も、コツがありそうですね。
たけまな
あります。
うちもそうですけど、テレビって大きな「黒」ですよね。
その黒をどうやって気にならなくさせるか。
あえて、さらに黒を入れたらいいんですよ。

たとえば、
うちの実家は普通の家ですが、
全体的に、ダークブラウンのテイストでまとまってたのに、
突然、真っ白な家具を買ってきたんです。
元からあるものがだいぶ使い込んでる中に、
真っ白な新品がきたから、すごい浮いちゃって。
そのときに、白をなじませるために
白のものをちょっと増やそう。
と、今あるものでできることをやってみたら、
すごく気に入ってくれたんです。
そこでルームスタイリストのおもしろさを
実感しましたね。
――
お片付けとはまた違う視点ですね。
たけまな
いきなりスタイリングっていうのは違っていて。
まず整理が必要で、それから収納。そして片付け。
それができてからスタイリングなんです。
――
整理から収納、片付けと順序が大事と。
たけまな
そう。整理をしないまま、
収納から入ろうとするとおかしくなっちゃうんです。
本当に、ものを最小限に減らすというところを
いかにできるかで、あとが決まってくる。
――
ああ、耳が痛いです(笑)。
つらくなってきました‥‥。
でも、興味あります。
たけまな
全然つらくないですよー(笑)。
ほんとに、めっちゃ楽しいのよ!
――
楽しいのはとても伝わってきます!
箱や引き出しを開けたとき、「全部、見える」って
気持ちがいいですもんね。
それが楽しくなってくれば、
キレイをキープできる。
たけまな
そうです。
整理収納の基本「ゼロアクション」って知ってますか?
これはそこにあるものを取ること。
例えば「引き出しに入ってるものを取り出す」で、
ワンアクション。
引き出しの中に箱があって、そこから取り出すなら
もうひとつアクションが増える。
アクション数を少なくすることが、肝心なんです。
アクション数が増えてしまうと、
億劫になて中にあるものを触らないままに
なってしまう可能性が高い。
――
ああ~。そうですね。
出しにくいものは使わなくなっていくし、
見えないと、見えないまま‥‥。
たけまな
そう。でも私はね、
引き出しの中は多少ぐちゃぐちゃでもいいと思ってて。
下着とかはもう投げ入れ収納です。
――
え、たたまない?
たけまな
たたまないです。
そこまでやろうと思うと、しんどいし。
――
ほっとします(笑)。
全部完璧じゃないとダメなのかと思ってたので。
たけまな
シワになるものはたたむけど、
テロテロしたパンツとかって、
たたんでも、1枚出したらもうぐしゃぐしゃになるでしょ。
それはたたむ必要ない。
そういうところは手を抜いていいと思ってます。
ただ、何が入ってるかは分かるようにしてほしい。
――
把握、できてないなぁ‥‥。
たけまな
把握ができないのは、
物量がオーバーしちゃってるんですね。
――
詰め込み過ぎてる。
たけまな
そうそう。引き出しが開けづらくなったら……。
――
何か引っかかっちゃってて(笑)。
たけまな
そうそう(笑)。あれはもうダメなサイン。
そうなるともう開けたくないし、
しまいたくないじゃないですか。
だから、そこの引き出しじゃないところにまた……。
――
収納用品を買っちゃう。
たけまな
そうそう。それはしちゃダメ!
ものの適性量を知って、その量をキープする。
――
いやぁ、そこがむずかしい(笑)。
いろいろ買いたいし。
でも、ものを探してる時間がなんて長いことか、
っていう話は、聞きますよね。
たけまな
そう、そうなんですよ。
1年で3カ月ぐらい探してるらしいです。
――
えぇ、そんなに?
たけまな
で、ものを捨てて後悔するのは、3パーセントなんですって。
3パーセントは
「捨てるんじゃなかった」って思うかもしれない。
それでも取っときます? という話で。
あと、買い換えと買い直しができるものは、
悩むんだったら捨ててもいいと思います。
けど、私は例えば、『あすなろ白書』のDVDは、
テレビで観られないから取っとかなきゃ。
って、そういうものは残してますね。
わたしは「ミニマリスト」ではないので、
いろいろ買いますし(笑)。

黒いエプロンでビシッと決めた
「チームたけまな」。

――
結成された「チームたけまな」
メンバーは3人で、
たけまなさん以外のおふたりは、
ちょっと遠方にお住まいなんですね。
お仕事があるときに、集まって、という感じですか。
たけまな
長野と埼玉と、私が東京なので、近くはないですけど、
週に1回ぐらいは来てるかな。
それはお仕事をいただけているからで。
チームだと、すごい勇気がもらえるんですよ。
おそろいのこのエプロンを着て、
なんか戦闘服を着ている気分で、すごい楽しい。
――
ほぼ日の、飯島奈美さんのエプロンですね。
ご愛用、ありがとうございます。
たけまな
飯島さんのエプロンのおかげなんです。
かっこいいってみんなに言ってもらったり、
印象的みたいで一度見たら覚えてもらえる。
あと、お片付けしてる人たちがエプロンで、
こういう、黒でビシッと行く人って、あまりいないんですよね。
――
たけまなさんが、これにしようって提案したんですか?
たけまな
そうそう。
チーム結成のときに、この制服でいきたいから、
「チームたけまな」はこれでいこうって言って。
全員に私がプレゼントしたんです。
――
それでチーム意識が。
お片付けの活動は、いつも3人?
たけまな
基本は、3人で行ってます。
――
具体的にはどんなことをするんですか?
お家に呼ばれて、行く?
たけまな
時間や人数のバリエーションはありますけど、
例えば3人で、1日7時間かけて、みたいな感じですね。
それだと料金は105,000円とか。
一瞬、「高っ」って思うくらいのお金はかかっちゃうけど、
エアコン掃除なんかをプロに頼むとしたら
一度に数万円かかって、半年とか1年に一度リピートしますよね。
でもお片付けは一度でほんっとに片付くし
コツをつかんでリバウンドしなければ、以降は自分でできます。
1回頼むだけでも暮らしが一気に楽になりますよ。
――
自分1人なり家族で、ああでもない、こうでもないって、
1日かけたけど、
結局移動しただけとか、景色変わらないなー。
とかって、誰しも経験ありますよね。
たけまな
始めたときより、余計ひどくなったりすることも。
――
お金かけてでも、1日で本当にスカッときれいになると、
やっぱり気分が違うでしょうね。
それをキープしたくもなりそうですし。
たけまな
そうそう。
1回気持ちよくなれば、本当に楽だと思う。
掃除もしやすいし、散らかりにくくなる。
で、好きなものが見えてくるというのが大事ですね。
自分が今好きなインテリアのイメージをね。
――
こんな部屋にしたい、みたいな?
たけまな
それが分かってれば、そこに向かって行けるので。
インテリア迷子とか片付け迷子の人はたくさんいて、
どうしたらいいんだろう、みたいな人がいっぱい。
でも、整理収納や片付けをしていくうちに
好きなイメージが、だんだん見えてくるんですよ。
そういうお手伝いをしてる感じですね。
――
へぇ、おもしろいですねー。
たけまな
お片付けオンラインもやっていて
(3時間、1人での対応で13,500円)とか。
ほかにも、引っ越しを手伝ったり、
リノベーションの間取りや収納相談、
インテリア相談とか。
企業のセミナーに呼んでいただいたり、
もうわたし編集者じゃないじゃん、って(笑)。
――
でも、お片付けや整理って、
ある意味、編集ではあるじゃないですか。
要るものと要らないものを選り分けて。
たけまな
そうなんです!
使う頭が、一緒なんです。
――
たけまなさんからみると、
「あー片付けたい!」って思うような部屋でも、
気にしてない人っていますよね。
たけまな
います(笑)。
けっこうすごいことになってるのにね。
――
気にしてないから、そうなっちゃうんでしょうしね。
別に困ってないし、って。
たけまな
そう、困ってないの。そこなんですよ。
お片付けにお金払うってちょっと‥‥って。
「片付け? 自分でやります」と言いながら、
いつまでも散らかったまま。
――
そういう人でも、意識は変わるものですか?
たけまな
うちの親はね、きれい好きだし収納はできてるけど、
ものがわりと多かったんですよ。
「家族でやらないほうがいい」、
「喧嘩になっちゃうから」って言われてたんだけど、
ついつい手を出しちゃったんです。
案の定、言い合いになりましたけどね。
――
やっぱり(笑)。
たけまな
だけど、片付けて、部屋のスタイリングしてあげたら、
あ、こんな効果あるんだって気付いて喜んでくれて。
――
マインドが変わったんですね。
たけまな
そうなんです。
お片付けして、インテリアが素敵になってくると、
人を呼びたくなったりして、楽しくなる。
本気で人生が変わる。
余裕ができて、余白ができて、
なんかこう、新しいことをやろうって気にもなるし。
私は今48歳だけど、
新しくできた友達がいっぱいいるんです。
ラジオで知り合ったり、
Zoomでのお片付け会議で仲良くなったり、
いろいろな出会いがあって。
新しい人生が始まった感じがあるんですよ。
編集の仕事をやりながらも、
こういう、暮らし系の仕事と両方ができる、
これからの人生の理想形なのかなと思ってます。
――
余白、余裕があるからこそ、なんですね。
勉強になります。

ではいよいよ、たけまなさんおすすめの
暮らしに取り入れたいグッズを教えていただきましょう。

(つづきます)