| 都築 |
あの頃の歌は
「ほんとうの女」じゃなくて、
男が「理想の女」を
描いてる話が多いですからね。
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| 糸井 |
そうですね。
そういう女性に対して
「男として、ごめんな」という内容の歌が
多いです。
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| 都築 |
そうそう。
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| 糸井 |
「ごめんな」のことをしてる男らしい人が
女の気持ちを歌うから、
前川さんをはじめ
歌謡曲の人の態度、そうなってます。
黒い服着て、バッと立って、
「ごめんな！」って言ってる。
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| みうら |
ジーパンじゃなくて、
ちゃんと正装してね。
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| 糸井 |
そう。義父や義母が見ても、大丈夫。
だって、考えてみてくださいよ、
パーカーかなんか着て、
「あなたを思って、わたしはいつも
待っていました」
という歌を歌っても、それは
ほんとにふがいないじゃないですか。
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| 都築 |
そうですね（笑）。
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| 糸井 |
俺は俺でやるときはやる、
そこは、パシッと頭なでつけて
「ごめんな！」と。
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| みうら |
コーラスで
友達も集めてあるし。
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| 一同 |
（笑）
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| みうら |
「こいつ、謝ってますから」
って、後ろで仲間が
言ってくれてますからね。
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| 糸井 |
わわわわーっとね、
ほんまにねぇ。
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| 都築 |
そうか‥‥もしかしたら、
それがフォークとの違いなのかも。
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| 田島 |
あ、フォークは違いますね。
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| 糸井 |
フォークは、例えば、
きしむベッドの上で子猫のようになったりする。
ベッドをきしませてから子猫と言う、
その感じが‥‥。
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| みうら |
ちょっとうらやましさが入りますね。
しかも、“盗んだバイク”ってよく歌うけど、
盗まれたほうの気持ちだって、ね？
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| 一同 |
（笑）
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| みうら |
俺だって、どっちかといえば盗まれたほうです。
まだローンがあるのに盗まれました。
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| 糸井 |
バイクは盗むし
学校のガラスも割っちゃうし。
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| 都築 |
用務員さんをどうする、という問題が
ありますもんね。
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| みうら |
もうそれは、人生幸朗さんの頃から
「責任者出てこい！」
というのがありましたけど。
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| 一同 |
（笑）
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| 糸井 |
このように責任の取り方が
「なし崩し」なのが、
フォークの魅力です。
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| 田島 |
若さというか、
子どもっぽさが入るんですね。
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| 糸井 |
しかし、それが
「義父と義母に会う」というテーマだったら。
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| みうら |
それはきちんとしないと。
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| 田島 |
でも、そういう劇画タッチの世界というのは、
いまはあんまりないですね。
ジュリーが歌っていたような、あの世界。
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| 糸井 |
ないです。
ジュリーの歌は
阿久（悠）さんが書いた最後の夢、
「しょうがなくモテちゃう男の話」でしょう。
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| みうら |
しかも、ジュリーの場合、
二度三度、女の頬を叩いたりします。
それに俺はちょっと
カチンときましてね。
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| 一同 |
（笑）
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| 糸井 |
そりゃあ、みうらさんも、
しょうがなくモテたことは
「ない」ことになっています。
ほんとはあるんでしょうけども、
ないことになってる。
だけど、ジュリーが言うと、
叩けるんですよ。
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| みうら |
「さまになる」ってことですよね。
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| 田島 |
ぼくは小学生時代に
石原裕次郎さん、松田優作さんの
「太陽にほえろ！」に
影響を受けた世代です。
ああいう劇画タッチの幻想が、
ほんとうに実在するもんだと思ってました。
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| 糸井 |
田島くん‥‥東京の子でしょ？
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| 田島 |
そうです。
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| 糸井 |
それは、間違いすぎじゃない？
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| 一同 |
（笑）
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| 田島 |
いやぁ、男の子はけっこう
強く記憶してるんじゃないかなぁ。
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| 都築 |
憧れちゃいますよ。
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| 糸井 |
うーん‥‥そうか。
そういう意味じゃ、
だんだん「絵」が描きにくい時代に
なってるのかもしれない。
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| 都築 |
そうでしょうね。
いまは日本の建物描いても、
どれも同じようになるし、
石畳コツコツ歩く、みたいな歌詞も、
外国映画だってバレちゃいますね。
そんなもの、ほんとはないからね。
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| 田島 |
石畳‥‥コツコツ、
何の歌でしたっけ？
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| 糸井 |
ジュリーの「LOVE 抱きしめたい」ですよ。
ヒールの音だけコツコツひびく、です。 |
| 都築 |
糸井さん、もしかして
それ、持ち歌ですか？
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| 糸井 |
わりと。
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| 都築 |
いいですねぇ。
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| 田島 |
糸井さんは、沢田研二さんでは
例えば「TOKIO」を作詞なさいましたが、
あそこで描く「絵」については
どう思ってらっしゃったんですか？
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| 糸井 |
ああいう時代ですから、
あんがい何も
思ってなかったような気がするけど‥‥
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| みうら |
いいや、ぼくは憶えてますよ。
原稿用紙にTOKIOって書いてあって、
糸井さんが
「いいだろ！」
と見せてくれました。
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| 糸井 |
そうだったかもしれない。
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| みうら |
だって、主人公は東京ですよ。
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| 都築 |
はははは。そうだ。
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| みうら |
人物じゃないです。
デカ過ぎます。
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| 田島 |
阿久さんの描いた沢田研二像と
どうずらすか、狙ったりは？
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| 糸井 |
うーん‥‥、
それまでの人たちが何をやってたかは、
建前としては研究したふりをしますけど、
ほんとうはしないです。
したら負けです。
みんな事情があるし、
それぞれ考え抜いています。
そういう場合、おんなじ場所にいたら、
誰かの島になってしまうでしょう。
ですから、それは見ないです。
それはもう、わりに断言していいです。
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| 都築 |
そうなんですか。
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| 糸井 |
はい。
うちの社員にも、言います。
何か調べてると「やめろ」って言う。
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| 田島 |
それ、よくわかります。
（つづきます） |
