/
ほぼ日手帳

糸井重里

・クルマというのは、走る個室である。
 ここで、どんなひとりごとを言おうが、
 外にいる他人には聞こえない。
 好きな音楽を鳴らしながら歌を歌っていたら、
 もう個室カラオケである。
 マイクがないという分だけ大きな声で歌えばいい。
 横に並んだクルマの人に、
 真剣に歌っている姿を見られるかもしれないが、まぁ、
 口をぱくぱくやっているだけのことだ、しょうがない。
 しかし、これが、クルマの窓が開いていた場合、
 それはもう、ちっとも個室じゃない。
 なんというか、部屋ですらない。
 街頭である、道路である。公衆の面前である。
 スピーカーから流れる大音量の演奏も、
 それよりなにより「おれの大声」も、
 そのまま夜の街にガオーと鳴り響いていくのである。
 きみは、そういう恥ずかしいことをやったことあるか? 
 おれは、ある、二度か三度かある。
 窓が全開だったか半開だったかのちがいはあるので、
 二度半くらいにカウントしておくことにする。
 軽く口ずさむような曲であったらまだ助かるが、
 ぼかぁ、そんなヤワなカラオケはやらないっすよ。
 どうせ一人で運転しているだけなんだから、
 同じビートルズだったとしても「イエスタデイ」じゃない。
 「アイ・ソウ・ハー・スタンディング・ゼア」のほうだ。
 玉置浩二だの矢沢永吉だのの、
 サビで声を張りまくる曲を選んで歌っているのだ。
 走りながらね、窓全開で、ご通行中の皆さんに向けてね。
 どうせ、一瞬すれちがうだけの聴衆ではある。
 でも、やっぱし、ほんとはけっこう恥ずかしいことだった。

 それでも、こうして言える程度の恥ずかしさなのだから、
 まぁまぁ、たいしたことはないような気もする。
 耳にイヤホンをしているために、周囲の音が聞こえず、
 歩きながらしたじぶんのへにも気づかない人と、
 ぼくはすれちがったことがある。
 赤の他人だし、からかってあげることもできなかった。
 以て他山の石としたいと思います。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
クルマのなかでの疑似カラオケは、選曲も自由で無料です。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

読むもの・観るもの

一覧ページへ

お買いもの

お買いものへ

ほぼ日の人気コンテンツ

ほぼ日手帳

ほぼ日手帳へ

動画・配信

イベント

ほぼ日が企画・運営する、リアルな場所でのイベントやショップ情報はこちらから!
ほぼ日が企画・運営する、リアルな場所でのイベントやショップ情報はこちらから!
  • ほぼ日曜日

    渋谷PARCO8階にあるイベントスペースです。絵、写真、音楽、食、お笑いなど、様々なテーマの「ライブ」をほぼ日主催でお届けします。
    公式ページへ
  • TOBICHI東京

    ほぼ日グッズを販売する「店舗」であり、展示やイベントを開催する「ギャラリー」です。
    公式ページへ
  • TOBICHI京都

    ちいさな空間をフルに使って、ほぼ日グッズの販売や、イベントを開催しています。
    公式ページへ

毎日更新!

ただいま募集中!

ほぼ日のサービス