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河村 |
食料自給率を、
いかに上げるかということは
非常に大きな問題ですし、
例えば「自給率をあげよう」となると、
大量供給をできるかどうかという話に
なりがちですが、しかし、
量ではなく質として見ることが必要です。
日本のトマトやりんごは海外では珍重がられて、
ほんとうにおいしいですから。
質のいいものを自給できるというのが理想です。 |
糸井 |
日本の環境って、
ほんとうに豊かですから……。
農業の大ブランド品、ですよね。 |
河村 |
企業が農業に乗りだすと、
「農地がうまくいかなくなったときに、
転売してしまい、他の土地になる」
と言われています。
それで今、農地は保護されているんです。
私も一時、
山口県農業会議のメンバーだったのですが、
会議のたびに、
「これだけ農地の転用の申請がありました」
という話が、ずいぶん沢山出てくるんです。
核家族になって、
どんどん家を作るものだから、
農地が宅地に変わっていく。
毎年、農地は、減りつつあるんです。 |
糸井 |
それで、不便なところは
休耕地になってるんですよね。
東京都の7倍の大きさの土地が、
休耕地になっているんだと聞きました。 |
河村 |
農業はもうかるし、
農地はよろこばれるものなんだ、
ということになると、可能性が拡がりますね。 |
糸井 |
農業の指導者がいないことと、
もうからないんじゃないかということで、
企業が、なかなか、
乗り出せない状態にあるんですよね。
観光としての耕す農地だって、
もっとたくさんできてもいいのですが。 |
河村 |
グリーンツーリズムと言われて、
市民農園も、じわじわ、定着しはじめました。
ビオトープと言って、
「動物、植物、いろいろな生きものが
自分の力で生きている環境」を
学校教育に生かす動きも、盛んになってますし。
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糸井 |
文部科学省って、ほんとに
やることが多いから大変でしょうけど、
河村さんが、教育について、子どもに、
「これだけは、やっておけよ」
と思っていることは、どういうものですか? |
河村 |
人間力向上というのは、
単に学校のテストでいい点を取った、
というものではないでしょう。
社会性や、規範意識や、
やりたいことを見つけて挑戦すること。
社会に出てみると、そういうことの方が、
よほど重要になってくるんですよね。
例を出すと、北海道では、
一流高校から北海道大学に行って、
北海道拓殖銀行に入るという
エリートコースが、
完全に壊れたわけでしょう?
もちろん、ちゃんと学んでいれば、
ひっくりかえっても次の道があるけど、
「それだけが幸せではない」
ということが言えますよね。
早く自分のやりたいことを見つけなさい、
好奇心を持って、挑戦しなさい、と、
ぼくが言えるのは、それだけですね。
今は、やりたいことがないまま、
手に職を持たないで
フリーターになっている人が多くて、
これは、ほんとうに大きな問題です。
自由時間はたくさんあるけど、
給料が少ないからスネかじりで、
自活能力がないから、結婚をしない。
結婚をしないから、少子化につながる。
……ひとつの国の先行きとしては、
これは、心配になってしまうことですから。 |
糸井 |
河村さん自身は、
ちいさい頃は、どういう子どもでしたか? |
河村 |
親が県会議員をしていたものだから、
政治評論家になったらいいかとも思いましたし、
マスコミだとかに、関心を持っていましたね。
ただ、やっぱり長男ですから、
サラリーマンになっても、いずれ
地元に帰れるように、地元企業を選びました。
ただ、新聞社やNHKに行くということも、
就職のときには、考えていたんです。
政治家になってから
実際に見ていると、新聞記者っていうのは
夜昼ひっくりかえっているから、
ほんとに、大変だなぁと思いますけど。
私のいまの生き方は……目指しているのは、
あそこに書いてあるような、
「至誠通天」ということなんです。
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郷土の萩の松下村塾の吉田松陰先生は、
「至誠にして動かざる者、
未だ是あらざるなり」
とおっしゃいました。
真心は、かならず通じるんだ、と。
だから、いまの国会の答弁などでも、
本心にいつわらないようにして、
できるだけ本音を出して議論をしています。
「大臣が言ってしまうと責任が生じる」
ということで、
役所は、ハラハラしているんですけど。
例えば、学校現場に
常勤と非常勤の先生がどれだけいるか、
というデータを、文部科学省は持っていません。
「地方の教育委員会がやっていることですから」
というのが、
官僚の、精一杯の答弁になるわけです。
ところが、私はそのときに、
「あとで調べて返事をします」
と言ってしまいました。そういうことはあります。
教職員の実態を掴んでいないのは、よくない。
やはり、調べなければいかんと考えましたから。
「余計なことを言った。仕事が増えた」
と思われているかもしれませんけれど。
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※河村文部科学大臣との対談は、いったんおわります。
昨日も、とてもたくさんのメールを
ほんとうにどうもありがとうございました。
どれも、「食」についてのリアルな感想ばかりでして、
近い将来、こちらのページでご紹介するかもしれません。
あなたは、「食」と「育」についてどう思っていますか?
家で、こんな食事をしたいんだと想像していることや、
家庭の食の現場について心配していることなどを、
postman@1101.com
こちらまで、件名を「食と育」として
お送りくださるとさいわいです。 |
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